2020.03.31
  • インタビュー
Star☆T|「Woman」は、歌詞に描かれている女性のように自由に聴いてもらいたい曲です。
“楽曲派”を自認する向きには説明不要だとは思うが、愛知県豊田市を拠点に2011年より活動するStar☆T(スタート)は、紛うことなき"楽曲派アイドル"である。 いや、「正規メンバー14名+研究生(「レッスン星」と称するとのこと)2名」という大所帯で、「期生」「チーム制」「選抜制」といったシステムを取り入れつつ、華やかな衣装で歌い踊るという“王道アイドル”の側面もあれば、豊田市駅前GAZAビル南広場での定期ライブ、地元イベントや地元メディアでの活動、地元行政機関や企業との連携などを通して「アイドルによる地方創生」「地域を元気にする」という目標を掲げた“ご当地アイドル“の顔も持つなど、その魅力はいくつもあるが、やはり楽曲が素晴らしいのだ。 その作風は多岐に亘るが、いずれも音楽好きを唸らせるような工夫が施されている。例えば、筆者が最初に気に入った(というより度肝を抜かれた)のは「Viva☆LUVi:ce」という楽曲。2017年3月25日名古屋は大須のDt.BLDに“楽曲派アイドルの最高峰”Especiaのファイナルツアーを目撃すべく“遠征”した際、公演前に同会場の別フロアでイベントが行われていて、そこにStar☆Tが出演していたのだ。颯爽と登場し、高速ビートと流れるようなサビのメロディが印象的な楽曲をキビキビとしたパフォーマンスで披露した。それが「Viva☆LUVi:ce」だった。後に判明したことだが、この曲は「それまで避けてきた“沸き曲”」「それ以前はもっとマニアックな曲をやっていた」とのこと。「あれだけ音楽的な“妙”があるのに、“沸き曲”として作っていたのか!」と驚いたものだが、確かに、遡って『restart』というミニアルバム(映像を先に撮り、そのサウンドトラックという形でリリースされた)を聴いてみると、心地好いメロディや和音を緩やかなディスコ風に味付けした「Restart!」や、ブラスやオルガンやティンバレスなどの音が配された渋いファンクの「エスプレッソをダブルで」(あのSHOGUNをイメージしたとのこと)といったマニアックな楽曲が並んでいた。 ともかくも、“楽曲派アイドルの巨星”Especiaが終焉を迎えようとしていた時、“希望の星”として颯爽と現れ、筆者の喪失感を癒してくれたのがStat☆Tだった。まあ、2017年のことなので、まだまだ新参ファンなのだが…。 その後もStar☆Tは、意欲的な試みに満ちた音楽を発表し続けてきた。 まずは初のフルアルバムとなった2018年の『メロウ』。楽曲単位で聴くことが主流になりつつあるサブスク時代に、なんと人魚を主人公とする物語が展開するコンセプトアルバムを世に問うたのだ。ここにも名曲が詰まっているが、圧巻なのは11分を超える組曲『泡沫の人魚-組曲-』だ。 2019年には、Star☆Tのメンバー10人がソロ曲を歌うプロジェクトアルバム『Star☆TSOLO10』をリリース。豊田ゆかりのアーティスト10組が、アーバン・ファンクからいなたいR&B、トロピカルハウスからヘヴィなロックに爽やかなシティポップまで、色とりどりの優れた楽曲を制作し、メンバーも個性溢れる歌声を披露している。 秀逸なのが、昨年リリースされたシングル「ご当地ソング」だ。タイトルを見れば音頭でも聴こえてきそうだが、シンプルなコードのループをメロディやリズムの変化によって複雑に色付けしていくという、洗練された技法で作られた楽曲。歌詞には、“ご当地の名所や名産”は一切出てこず、地元で過ごす日常が匿名的に綴られる、というように歌詞にも“ひねり”が効いている。 そして新作「Woman」。女性の解放を目指した平塚らいてうやボーボワールの名言を引用しながら、これからの時代を軽やかにしなやかに生きようとする女性を描いたこの曲では、サンバをモチーフにしたサビと、ロドニー・ジャーキンス辺りが作りそうな隙間の多いビートにストリングスが絡まるヴァースとが、滑らかに溶け合っている。カップリングの、目まぐるしくビートやアレンジが変わる「ドッペルゲンガー」や、疾走感に充ちた「私の好きな人には、好きな人がいる」も聴きものだ。 ますますグループとして進化し、音楽的にも充実しているStar☆T。もしも「まだ聴いてない」なんていう“楽曲派”がいるとするならば、まずはこの新曲を今すぐチェックしていただきたい。   Star☆Tのメンバーより、和久田朱里(わくだあかり)、嶋﨑友莉亜(しまさきゆりあ)、牧野凪紗(まきのなぎさ)の3人にお話を伺った。     一番長いので4時間やりました(嶋﨑)   ――皆さんのことは結構前から大好きだったんです。2017年3月25日に名古屋は大須のDt.BLDでたまたま皆さんのライブを見て、その素晴らしいパフォーマンスと楽曲に「うぁ、スゲェ!」となって…。   牧野凪紗(以下:牧野):えぇ~!   嶋﨑友莉亜(以下:嶋﨑):うれしい。   和久田朱里(以下:和久田):ありがとうございます。   ――なので念願のインタビューです。で、まずは皆さん一人一人に「Star☆Tってどんなグループなのか」というのを簡単に言っていただきたいのですが。   牧野:はい、では私から。Star☆Tっていうグループは、名古屋にも沢山アイドルグループがいますが、どのグループよりも温かい家族みたいな、ファミリーみたいな感じがあると思います。グループ内だと、競い合いとか、ちょっとバチバチしたりとか、結構聞くじゃないですか。   ――はい。よく聞きます(笑)。   牧野:でも私たちは、喧嘩とかじゃなくて、思ったことをお互いにしっかり伝え合いながら、ちゃんと分かり合っているファミリーのような雰囲気があります。   ――いい絆があるんですね。   牧野:そう、強い絆が。年齢幅も結構広いんですけど、今一番若い子で小6?   和久田:新しい子が小6だね。   ――小学校の方もいらっしゃるんですね。   牧野:最近入った子です。   和久田:まだレッスン生なんですけど。   ――なるほど。   牧野:で、こちらのリーダーが(笑)。   和久田:25歳、最年長です。   牧野:そう。幅も広いんですけど、それだけ絆も強いグループだなと思います。   ――続きまして和久田さん。   和久田:私が思うStar☆Tの魅力は、やはり地元愛だと思います。豊田市のご当地アイドルとして、今も先ほどやってきたんですが、エフエムとよたでレギュラー番組を持たせていただいたり、ケーブルテレビでもリポーターとしてちょうどこの3人が土曜日の朝に生中継をやったりしています。あと、普通アイドルさんってライブハウスとかでのライブが多いと思うんですが、私たちは地元のイベントとかに出て、“餅投げ”とかやってます。「ふじまつり」といった地元のイベントに…。地域の方々、小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで親しめるようなイベントに出られるのが魅力かなって思っています。   ――餅を投げるわけですか?   和久田:神社などで餅投げとかあるじゃないですか?   ――はい。お正月とかにあるイメージですが、常にライブで餅投げてるわけじゃないですよね???   和久田:いや、そうじゃないです(笑)。   ――ですよね。   和久田:藤岡という藤の花が綺麗なところがあって、「ふじまつり」というのが毎年行われているんですが、そこは「フジオカリーナ」というオカリナが有名だったりして、そのオカリナの演奏とかもライブの前にやったりしました。   ――皆さんがオカリナを演奏する?   和久田:そうです。   嶋﨑:いただいて吹きました。     ――なるほど。じゃあ地元のいい所とかをアピールしたり、地元の企業とコラボしたり、そういったこともやっているわけですね。   和久田:なので、アイドルファン層だけじゃなくて、老若男女を問わず観ていただいています。あと豊田市駅前で第一、第三金曜日にライブをやらせていただいているんですが、野外のフリーライブになるので、学校帰りの中学生高校生とかが観てくれたりして、そういう所もStar☆Tの特徴かなと思います。   ――豊田市駅前は皆さんの縄張りなわけですね?   一同:いやいやいや(笑)。   ――他の人がやろうとしたら「誰の許可取ってそんなところで…」みたいな(笑)って、そんなことはないですよね(笑)。   和久田:(笑)。ゲストも呼んでやったりしてますので。   ――では、嶋﨑さん。「しまさき」さんなんですよね?   嶋﨑:はい、「しまさき」です。Star☆Tはご当地アイドルなんですけど、自分たちのオリジナル曲が現在60曲以上あるんです。あと、私たちの定期ライブとかワンマンライブのウリが、長尺ライブをすることなんです。一番長いので4時間やりました。     ――えっ?4時間…?   嶋﨑:私たちにとっては2時間ぐらいは普通で、MCとかコーナーも挟んだりするんですけど、8曲以上連続で歌ったりとかして。でも4時間でも全曲はやりきれなかったよね?     和久田:うん。全曲はできなかった。   嶋﨑:あとは、去年の夏にStar☆Tのメンバーの内の10人がソロ曲を出すというプロジェクトがありまして。     ――「Star☆TSOLO10」というやつですよね。   嶋﨑:はい。そういうのもあって、楽曲にすごく強いグループだと思っています。しかも曲のジャンルも幅広くて、バラードから盛り上がる曲、可愛い曲から演歌まであったり、すごいバリエーションがあるんです。自分たちで作詞したり振り付けを担当したりしているのもあって…。     ――楽曲いいですよね~。それは後ほどお伺いすることにして、あの~皆さん豊田在住ということすよね?   嶋﨑:はい。     ――今は時々、ご当地アイドルと言いながら全然違う地方から来てるみたいな“エセ地方アイドル”もいますが(笑)、皆さんはもうホントに“純正”なんですね?   和久田:はい。16人いて全員豊田在住です。   ――16人なんですね?   和久田:14人と、今は“レッスン星”(レッスン生)が2人います。   ――で、グループとしては2011年から活動しているとのこと。   和久田:はい。2011年12月から。   ――もう一期生はいらっしゃらないんですよね?   和久田:そうなんです。   ――和久田さんが二期生で。   和久田:はい。二期生です。   ――牧野さんが三期生?   牧野:はい。   ――嶋﨑さんは四期生と。   嶋﨑:はい。      
2020.03.25
  • インタビュー
ヤなことそっとミュート|今までのヤナミュー像、「Afterglow」像を崩さず、豪華にアップデートしたものが出来上がったと思います
3年前に取材した際、メンバーはあまり喋らなかった。こちらの質問に対して沈黙が続くこともしばしば。ようやく捻り出した回答も少ない言葉をやっとのことで繋ぎ合わせたようなものだった。   だが、このインタビュー冒頭にも少し記しているように、発した言葉は興味深いものが多く、“面白発言”も次々と飛び出した。本文では紹介していないが、「ヤなことそっとミュート」(通称;ヤナミュー)という“変わった”名前について問うた際、南一花が「それまでは誰も“ヤなことそっとミュート”って言ったことがなかったじゃないですか。でも“ヤなことそっとミュート”。おぉ~!って感じ」と答えたのも興味深かった。「誰もがそう感じながらも明確な言葉が与えられていなかった概念」と言いたかったのだろう。   思うに、彼女たちは単なる口下手というより、たとえ時間を要しても、自分の本当の気持ちをなんとか掴み取り、それを自分の言葉で正確に表そうと奮闘していたのではないだろうか。相手に合わせて適当に相槌を打ったり、安易な言葉でその場をやり過ごしたりすることを良しとせず、真摯に本当の想いを言葉として紡ぎ出そうとしていたに違いない。   彼女たちのステージパフォーマンスには「何かを掴もうとするかのように前方に手を伸ばす」動きがしばしば見られる。それはまるで、自分の本物の気持ちを直向きに掴み取ろうとする行為を象徴するかのようなアクションであり、そこにヤなことそっとミュートの本質があるのではないだろうか。   あれから3年。彼女たちは随分と喋れるようになった。様々な経験を積んで頼もしくなったようだ。   2016年6月本格的なグランジ/オルタナティヴ・サウンドを引っ提げ颯爽とデビューした彼女たち。2017年3月に1stアルバム『BUBBLE』を、2018年6月には2ndアルバム『MIRRORS』を世に問い、さらには10月より「ユモレスカ」シリーズとして3曲入りEPを3ヶ月連続リリース(のちにこれらEP3枚をまとめてアルバム『ユモレスキ』として発表)し、2019年6月からは「NINE」シリーズと銘打って9枚のシングルを配信リリース。様々なスタイルの楽曲が怒涛のスケジュールで世に送り出されたこのシリーズは、ライブやレコーディングでの彼女たちの表現を大きく進化させたようだ。   昨年8月にはメンバーの脱退を経て3人体制となったヤナミューだが、12月に強力な新メンバー、凛つかさを迎えて再び4人体制となり、3月25日にいよいよメジャーデビューを果たす。その第1弾となるシングルは、既にファンにはお馴染みの「Afterglow」にストリングスを配したニューヴァージョン。これまでのヤナミューにはなかった、少々意外なアプローチでメジャーでの第一歩を踏み出すこととなったのだ。壮大なストリングスの音を纏いながら、静から動へとダイナミックにドラマティックに展開していく。さらには、カップリング「beyond the blue.」と対となって一つのストーリーを紡いでいくという“仕掛け”まである。   今回インタビューをしてみて、彼女たちが随分と巧みに言葉を操り、随分と的確に自分の想いを表現できるようになったことを感じた。しかし、相変わらず言葉に詰まり、しばし熟考する場面も多々あった。テクニックを獲得し、そこに安住するのではなく、初期のヤナミューがやっていたように、今なお“真実の言葉”を求め、それをより一層研ぎ澄まされた表現として提示すべく、真摯な想いを胸に、さらに“その先”へと手を伸ばし続けているのだ。   間宮まに、なでしこ、南一花、凛つかさにお話を伺った。               あの頃は本当に楽しさだけで全てを乗り越えてきたなって思います(まに)     ――もう3年前近くになりますが、1周年イベント「YSM ONE」の時に代官山UNITの楽屋で取材させていただいて…   間宮まに(以下:まに):はい、覚えてます。   ――あの時、取材前に運営の方に散々脅されてたんですよ(笑)。「みんな喋んないっすよ」みたいな(笑)。   一同:ああぁ。   ――「会話成立しないですよ」みたいなことを言われたんですが…。確かにちょっと言葉数は少なかったかもしれないですが、すごく面白いことを言ってましたよね(笑)。   一同:(笑)。   ――例えば、まにさんは「ヤナミューのオーディションは“ネタ”で受けた」っておっしゃってました(笑)。   まに:ネタじゃないですよ!(笑)   ――いや、でも確かに“ネタ”っておっしゃってました(笑)。   まに:違います! ネタじゃないです!   ――「自分がアイドルオーディション受けたらウケる」みたいな(笑)。   まに:「そういう自分を後から振り返ったら面白いだろうな」って感じのことは言いました。“ネタ”なんて言ったら人聞き悪いです(笑)。   ――そうですか(笑)。でも、すごく喋れるようになりましたね。   まに:頑張って成長してます。   ――ラジオとかもやってらっしゃいますもんね。   まに:はい。   ――なでしこさんは、最初は「やらされている感が“いっぱい”あった」っておっしゃってました。「少し」じゃなくて「いっぱい」って(笑)。“グランジ・アイドル”などと言われてましたが、そうしたものに「全然慣れてない」と。   なでしこ:あぁ、話したような気がします。   ――今もありますか?   なでしこ:でも、今はだいぶ染みついてきた感があります。   ――今はグランジ詳しいですか?   なでしこ:いやぁ(笑)。音楽のジャンルに関してはそんな詳しくないです。ライブでのパフォーマンスだったりは、あの時と比べれば板に付いてきた感はあります。   ――なでしこさんも受け答えが頼もしくなりましたね。一花さんは、皆さんんの取材で話している時とステージでの鬼気迫るパフォーマンスとのギャップがすごい、という話になった時に「ステージに立つ時も自分であることには変わりありません」「ちょっと“スン”って感じになりますけど」っておっしゃってました。「スン」って(笑)。   南一花(以下:一花):ハハ(笑)。そこを後々分析した結果、今ステージ上では“イキり”を大事にしていて…。   ――“イキり”ですか???   一花:はい。イキりを。ステージではやはりカッコよく見せたいというか、自信に満ち溢れているように見せたいというか…。見ている人もそのほうがきっと楽しいなと思うので、イキりを大事にしています。   ――イキっているわけですね(笑)。つかささんは初めましてですね。   凛つかさ(以下:つかさ):初めまして。   ――面白い経歴をお持ちのようで、それは後ほどお訊きします。じゃあ、皆さんもう業界には慣れましたよね?   まに:さすがに多少は慣れた感じがあります。   ――この6月で4周年ですよね。振り返ってみてどうですか?   まに:長かったかなぁ…。   ――長かったですか?   まに:はい。そんな感じがあります。   なでしこ:前回取材していただいた時なんてもう遥か昔のように思います。   まに:あの頃は本当に楽しさだけで全てを乗り越えてきたなって思います。その間いろんなことがあったので…。   ――苦しいこともいっぱいあり…。   まに:それを乗り越えて…。   ――それは、例えばメンバーチェンジのことだったり?   なでしこ:それもあります。まぁ、いろいろと。言えないことも(笑)。   ――まぁね。その辺は前向きにいきましょうね。    
2020.02.26
  • インタビュー
ONEPIXCEL|私たちが大切にしてるのは「今」を見せるということなので
ONEPIXCELのライブを観ると、彼女たちが“表現”というものにいかに真摯に取り組んでいるかを実感する。 そのことは、今年2月9日に行われた神田明神ホールでのワンマンライブでも再認識させられた。コンセプトや設定、映像や照明など様々な演出が丁寧に作り込まれてはいるが、それらはあくまでも楽曲を最も効果的に提示するためのものであり、その中心にあるのはやはり彼女たちの歌とダンスである。いや、それさえも“手段”あるいは“演出”であり、中心に据えられているのは楽曲、さらに言えば、そこに込められた感情である。それを伝えるために彼女たちは工夫を凝らし、ただがむしゃらに頑張るだけではなく、力の入れどころを心得ながら的確な表現を試みているのだ。逆に言えば、そうした感情をオーディエンスと共有するために、セットリストから舞台演出、さらにはMCや進行のタイミングに至るまで、とことんこだわっているのではないだろうか。それは、約1年前に行ったインタビューでの様々な発言からも推察され、今回のインタビューではさらに明確に語られている。 インタビューでも明言しているが、彼女たちは「今を大切にしている」という。「今のONEPIXCELを見て欲しい」と。そして、“今”が過去の経験の積み重ねによって出来ていることもしっかりと認識している。ゆえに、一つ一つの作業を、“今”出来うる最善の努力として真摯に取り組み、やがて“過去”あるいは“経験”になるものとして丁寧に積み重ねているのだ。 そんな彼女たちがメジャー初のアルバム『LIBRE』をリリースする。「メジャーデビューしてから約2年間の集大成」と位置付けられたこのアルバムには、2年前にリリースされたメジャーデビューシングル「LAGRIMA」から、その時々で彼女たちの進化を示してきた「Girls Don’t Cry」や「Final Call」といったシングル曲、さらには、最新のONEPIXCELの魅力を余すところなく伝える新曲まで、様々なスタイルの楽曲が収録されている。まさに「過去の積み重ねが“今”を形成する」ことを体現する作品だと言えるだろう。 『LIBRE』というタイトルは、スペイン語で「自由」を意味する。彼女たちによれば「好き勝手にしていいということではなく、自分たちのルールの中での自由」とのこと。 時間芸術である“音楽”には、時間軸上の“今この瞬間”に鳴っている音の次にいかなる音を選択してもいい“自由”がある。12音いずれの音を選択しても音楽理論上の問題はない。だがそこには、人間が経験の蓄積によって得た“心地好い”音階や和音を形成するルールがあり、聴き手の情動を“正しく”揺さぶるためにはそれらを意識することが必要である。そういう意味では、彼女たちが掲げる「LIBRE」とは、極めて“音楽的”な概念ではないだろうか。ゆえに、この作品に、ひいてはONEPIXCELの表現に“音楽的”なものを感じるのだ。 残念ながら鹿沼亜美は体調不良のため欠席。傳彩夏、田辺奈菜美のお二人にお話を聞いた。     2月に入ってからずっとおなかが痛かったです(笑)(傳)   ――先日、神田明神ホールでのワンマンライブを拝見しました。あの会場でやられるのは初めてでした?   傳彩夏(以下:傳):初めてです。   ――どうでした? いいホールでしたよね?   傳:すごくよかったですね。   田辺奈菜美(以下:田辺):音もいいし…   ――音よかったですよね。   田辺:あとステージも広いので、思う存分暴れられました(笑)。めっちゃ楽しめましたね。   ――めちゃくちゃ広いですよね。あんな横に長い会場ってコンサートホールみたいなとこじゃないとなかなかないですよね。   傳:なので曲の構成とかもちょっと変えて、曲によって左側に寄ったり右側で踊ったりとかしました。   ――天井も高いですよね?   傳:高かった。   ――どうですか?空気を掴みづらかったり、作りづらかったり、とかなかったですか?   田辺:いえ、全然、   傳:すごくやりやすかったです。   田辺:やはりライブハウスとは違うので、最初は会場入るまでイメージできなかったんですけど、会場に入ってからはこれまでで一番やりやすいぐらいの、すごくいい環境でした。   ――前日に下見したりとかリハしたりとかは?   田辺:してないです。   傳:当日入ってリハ、みたいな。   ――それでもちゃんと“掴む”わけですね?   田辺:そうです。   傳:結構リハに時間かけるんです。開場が4時半だったんですけど4時までリハしてて…。音響さんや照明さんともじっくり話し合って、“チームONEPIXCEL”で時間をかけてチェックしました。   ――そういう時は結構意見を出したりするんですか?   傳:はい。まず1人ずつ歌うんです。ワンハーフ(編注:ワンコーラスと半分。「ワンコーラス+大サビ」など)を1人で歌って、マイクの音とか反響とかをチェックして、「もうちょっとこうして欲しい」とかを伝えて、1人ずつ3人が終わったら3人で合わせてもう1回他の曲をワンハーフやるんです。それで聴こえ方をさらにチェックして、という感じです。   ――なるほど。自分への音の“返し”とか、会場内にどう回っているか、後ろまでちゃんと届くか、とか。   田辺:あと、曲によって「オケを少し大きくして欲しい」とか、「マイクのリバーブをもっと欲しい」とか、「リバーブもうちょっと減らして欲しい」とか、そういうところもリハーサルでちゃんとチェックして、最初の出番のタイミングとかも細かくチェックして、本番に臨みました。リハーサルがすごく充実していたので、不安もなくホントにやりやすい環境でしたね。   ――ライブを拝見して思ったんですが、「余裕でやられてるな」って感じがしました。   傳:余裕じゃないですよ~。   田辺:ないですよ~。   ――余裕なかったですか? でも、リハも上手くいって、やりやすい環境でのびのびとやられていた感じがしたんですが…。   田辺:ライブ中はのびのびとやってるんですけど、本番前はすっごい不安です。   傳:2月に入ってからずっとおなかが痛かったです(笑)。もう2月9日まで「あと何日だ」みたいな。「あとここ確認して、ここの振り付けは変わって、ここの立ち位置は何番」みたいなのもずっと頭でイメージして…。もうイメトレしかしてない2月だったので、9日の本番が終わるまでずっとおなかが痛かったです。   ――いつもそうなんですか?   田辺:今回は「be with you」っていう曲の振り付けがライブ当日の2日前ぐらいに変わったり、とかそういうのもあったので…。   傳:1曲丸々振りを変えたんです。   ――なんで変えたんですか?   傳:結構前にやってた曲なので、私たちもやってくうちに成長していったから、というか…。   田辺:振りがちょっと可愛いすぎちゃって、今の私たちがやったら「なんか違うな」って3人とも思っていたので、「振りを変えてもらおう」ってなったんです。   傳:今の自分たちにしかできないライブをやるんだから、それに合うように振りも変えようということになって、振付師さんに頼んで、2日前に変えていただいて、バタバタバタバタってしながら合わせて当日を迎えました。   ――確かに、約1年前に取材させていただいた時に比べると、やはり大人になられたなという感じはします。   傳:なってますかね?   ――思いました。ライブを観てもそう思いましたし。   田辺:おぉ、ありがとうございます。   ――それに合わせて表現も少しずつ変えていくというわけですね。   傳:曲調も初期の頃に比べてだいぶ変わってきているので。   ――ですよね。   傳:みんな十九、二十歳になって、二十歳と(デビュー当時の)中学生ってだいぶ違うので、そういう変化も見せていきたいですし、私たちが大事にしてるのは「今」を見せるということなので。   ――おぉ。   傳:「今のONEPIXCEL」を見て欲しいですし、「今しかできないことをやろう」っていうのを大事にしていて…。なので、振りは変えるし、曲調もどんどん変わってきてるし…。   ――なるほど。当日は新曲も披露しましたよね。   傳:はい。1曲やりました。   田辺:「DO IT, DO IT」を初披露しました。   ――じゃあ、それもちょっと緊張した要因ですか?   田辺:そうです。   傳:でも、なんであんなに緊張したんだろう? 久しぶりのワンマンってこともあるのかなぁ。新曲っていえば、「Summer Genic」の振りも変わってるんですよ。   ――そうなんですね。   傳:「Summer Genic」もワンマン前日の対バンで一度やっただけだったんですけど…   ――一度やっただけで振り付け変えたんですか?   田辺:そうですね。   傳:ちょこちょこ変わってるんです。「Final call」のイントロを変えてみたりとか。   田辺:他にもいろいろ変わってます。   傳:半分くらいあるのかな?   田辺:会場が広いからっていうのもあって、メンバーの立ち位置もそうですし…   傳:タイミングとかも変えたりしました。   ――やっぱりそれも「今」ってことなんですかね?   田辺:そうですね。   ――その会場に合わせた表現をやる、そこでできる今を表現する、ってことですよね。なんかカッコいいですね。即興でやるジャズのミュージシャンみたいな。   傳:即興はできないです(笑)。ちゃんと練習を重ねてやります!    
2020.02.26
  • インタビュー
寺嶋由芙|外の世界にどんどん行けるようにしたいです
今、最も“外を向いている”アイドルではないだろうか。 数多くのゆるキャラと交友関係を結び、全国各地のイベントに参加していることはよく知られているが、ここへ来てその勢いをさらに加速させ、むしろ“アイドル”というものを全国津々浦々へとPRしているかのような印象だ。また、サンリオとコラボレーションを行ったり、地元千葉愛を様々な形で表現したり、パンケーキ好きやカフェラテ好きをアピールしたり…。いずれも、小賢しい戦略などではなく、好きが高じて“宣伝活動”に勤しみ、それが仕事へと繋がっているというのが、このソロアイドルの信頼できるところだ。 最近では、三重県二見輿玉神社の節分祭で福娘を務めたり、名門クイズ番組『パネルクイズ アタック25』へ出演したり(一般枠で予選を勝ち抜いての出場とのこと!)…。そういえば昨年はあの浅草マルベル堂の7月度ブロマイド売り上げランキングで1位を獲得している。現行のアイドルにはおよそ縁がなさそうな領域へと果敢に足を踏み入れているのだ。 また、現在行っている2本のツアー『寺嶋由芙のクチコミ☆3.8以上余裕超えツアー』『寺嶋由芙のお近づき2マン~友達何人できるかな~』では、普段アイドルがやらないであろう会場を選んだり、あまりアイドルと共演しないようなアーティスト(いや、見かけはそうだが意外と対バンしてるけども…)と相見えたり…。 「まじめなアイドル、まじめにアイドル」と自ら称するように、紛うことなき“正統派アイドル”ながら、限られたアイドルシーンの中だけで快適に過ごす“ガラパゴス”と化すのでは決してなく、自らのため、アイドル界のため、そして彼女自身の“ヲタク”のために、積極的に“外の世界”へと打って出ようとしているのだ。 そんな寺嶋由芙の新曲は、なんと6年前にリリースしたソロデビュー曲「#ゆーふらいと」の続編となる、その名も「#ゆーふらいとII」。作詞に夢眠ねむ、作曲にrionosというデビュー曲と同じ布陣を揃え、当時の面影を仄かに残しながらも、現在の、そして未來の寺嶋由芙を感じさせるヴィヴィッドなナンバーへと仕上げている。そしてカップリングは、これまでソロデビュー曲のカップリングであった人気曲「ぜんぜん」(作詞作曲:ヤマモトショウ)の新ヴァージョン「ぜんぜん 2020 ver.」だ。 6年の時を経て、今一度告げられた“離陸”のアナウンス。それは、新たな世界へのさらなる飛翔を示すものなのか。 寺嶋由芙にお話を伺った。     自分で自信を持ってやっている人が最後には評価されていくのを周りですごく見るので     ――最近また、ゆるキャラ仕事が多いですよね。   寺嶋:おかげさまで。   ――今年の1月12日には四日市ドームで「ご当地キャラクター感謝祭」に出演されました。今をときめくFoorinと…   寺嶋:そうです。日本レコード大賞ですよ。   ――そして”昭和のビッグアイドル”あべ静江さんと共に。そこに寺嶋由芙さんが並ぶのもすごいです。   寺嶋:ありがたいです。もう本当に。   ――どんな感じだったんですか?   寺嶋:四日市市の”こにゅうどうくん”っていうゆるキャラがずっと仲良くしてくれてまして、そのご縁で呼んでいただきました。こにゅうどうくんは東海ラジオさんに番組を持ってるんですよ。レギュラー出演してて。   ――ゆるキャラが番組を持ってるんですね!   寺嶋:はい。「よん」とかしか言わないですけど(笑)、一言二言しゃべる番組を持っていて、そのラジオの公開収録を兼ねたイベントだったので、トークとライブとやらせていただきました。   ――寺嶋さんはゆるキャラの“通訳”としても有名ですが…   寺嶋:はい(笑)。   ――今回は通訳は?   寺嶋:今回はこにゅうどうちゃんが自分でしゃべってました。一言二言ですけど「ありがとう」とかは言えるみたいで。   ――なるほど。今回はおしゃべりのお相手だったと。ゆるキャラ通訳のコツってありますか?   寺嶋:う~ん。でも、“訳”が合ってるかどうかわかんないですから(笑)。なので、なんとなくジェスチャーから読み取って、「あ、こういうこと言いたいのかな?」って感じで身振り手振りを見るっていう感じです。でも、事前にその町の特産品とか、そのキャラクターがPRしたいものをある程度知っておく必要はありますね、例えば「こにゅうどうくんの町は何が有名なのか」とか「こにゅうどうくんが何モチーフでできているのか」を知っておいてあげないと、ただ「可愛いですね」で終わっちゃうので…。ゆるキャラたちは地元をPRするのが仕事なので、それを手助けするようなセリフは頭に入れておくように常に心掛けています。   ――さすがです。「これ言ってください」「あれ言ってください」といった指示が事前にあるんですか?   寺嶋:いえ、基本はないです。こちから訊いたりします。「絶対言いたいことありますか?」とか、事前にスタッフさんに訊いておいて、こにゅうどうくんにも「これ言うからね」って確認しておいたり…。割とでも、台本もゆるいことが多くて「以下フリートーク」とか「以下和やかに語る」みたいな(笑)。なのでその場で対応したりしてます。   ――やはり、ゆるキャラに相当通じてないとできないですよね。   寺嶋:好きだからこそやらせていただける仕事だと思いますね。全く興味がない方がいきなりやるとなると、結構覚えることの多い大変な仕事だと思います。好きで知識が自然に入っているから全然苦じゃなくできるっていう…。逆に私が今「サッカーの試合の解説をしてください」って言われたら無理ですけど、ゆるキャラは本当に好きだからできてるんだと思います。   ――昨今はSNSを通して人々が厳しい目を光らせていますから、愛のない人が仕事でポッと入ってきても、なかなか認めてもらえないですよね。   寺嶋:その点、ゆるキャラに関してはすごくありがたい環境でやらせていただいていると思います。   ――そういう意味では、「アイドルというゆるキャラのストーリー性について」という卒論を書かれた寺嶋さんから見ると、ゆるキャラの世界もすごいブームがありながらも、その後ちょっといろいろあったりして、やはり栄枯盛衰というか…。ゆるキャラの世界も簡単じゃないですよね。   寺嶋:ホントにアイドルと似ていて、かわいい子たちがいっぱいいるから、かわいいだけじゃなかなか難しくて…。で、ちょっと奇抜なことをするキャラクターが出てきたりして、でも、やっぱりそういう子たちって続かなくて…。キャラクター事業への愛があってこそで、話題先行みたいなことばかりだと続かなかったり、ファンの気持ちもついて来なかったりしますし。あとやはり、ご当地をPRすることが一番の彼らの仕事なので、そこからブレたことをしちゃってると難しいんだろうな、というのは見ててずっと思ってました。アイドルもやはりお客さんに喜んでもらうとか、かわいく楽しく歌を届けるみたいな基本が大事だと思うので、そこは忘れずに、でも驚いてもらえることとか、面白がってもらえることも探さなきゃいけない、っていうのをすごく思います。   ――それもゆるキャラとの活動で学んだことというか。   寺嶋:そうです。やはり残っているのは真面目な子です。ゆるキャラを見ててホントそう思います。   ――ゆるキャラにも真面目と不真面目ってあるんですか?   寺嶋:みんな真面目ですよ、基本的には。ゆるキャラたちも別にブームがあるからやってるっていうよりは、純粋に自分の地域をPRするために活動してる子たちなので、一番やらなきゃいけない地元のPRを地道にやってる子たちがやはりファンを増やしてますし、今でも支持されて活躍していると思います。   ――SNSの世界ではいろんな言葉が飛び交っていて、辛辣な言葉も少なくないですが、大衆の厳しい目がそこにあると、変なごまかしやまやかしはできなくて、結局は「真面目が一番強い」ってことになりますよね。   寺嶋:そうです。何言われてもやっていることがブレていない人とか、自分で自信を持ってやっている人が最後には評価されていくのを周りですごく見るので、そういう風にやっていくべきなんだなって。    
2020.02.21
  • インタビュー
謎ファイルとやま観光|変わった歌とか面白い歌を歌っています
「アイスクリームパラダイス」は衝撃だった。ローファイながらも叙情性を帯びるヒップホップトラックの上で、幼い女声の“ラップ”(時に無邪気な呟きのようにも聴こえるが、ラップのマナーに則った“フロウ”に果敢に挑んでいる)が繰り広げられている。そして、「何だっつーの ハーゲンダッツーの」という挑発的なリリックと、シンセのアルベジオのリフレインが不思議な呪術性を醸し出しているのだ。 「謎ファイルとやま観光」というそれ自体が謎に満ちた名前。他の曲を聴いてみれば、シンプルなファンクビートの上で「グーチョキパー 」やら「わんわん」「にゃんにゃん」と言いまくるだけのナンバー「グーチョキパー 」、ストレートな音頭に乗せて富山の海の名産を紹介する「とやま海鮮音頭」、どこかで聴いたような80s風エレポップに乗って富山から宇宙へとワープする「ハイパースペースでGO!!」など、次々とクセ球が飛んで来る。昨年7月にリリースされたEPでは、『サージェント・ペパーズ・ホタルイカ・ハーツ・トヤマ・ガールズ』というタイトルと、ドラムヘッドと草花を配したジャケットによって、ユルすぎる“オマージュ”と洒落込んでいる。 制作陣に名を連ねるのはドクター・ポーなる人物。また「アイスクリームパラダイス」を作詞作曲した富山出身のMC LASが、これまた素通りできない逸材である(「Open the door」という曲のMVを観ると、木霊のようなエコーや深山にそよぐ風のようなストリングスが紡ぎ出すサウンドと、大自然のど真ん中で撮影された映像とが相まって、“富山版ミナスサウンド”のような風情が漂っている。もちろん朴訥としたラップから匂い立つグルーヴのヤバさも最高)。 そして、謎ファイルとやま観光の公式HPには「現代アートの伝説アンディ・ウォーホルが行ったポップアートを今の時代に!今のやり方で!」とある。“斜め上を行く”どころか、“異次元にふわふわと浮かんでいる”かのような謎すぎるコンセプトだ。 謎は深まるばかり。写真で見るかぎりは、純朴で育ちが良さそうな美少女3人組なのだが、いかにも裏で抜け目ない大人が暗躍しているような印象である。いささか悪ノリが過ぎるかのような…。 だが、実際にライブを観て、彼女たちと話をしてみると、さらに驚いた。まずはメンバーのSA-NA、RUNA、MIYABIが“美しい”のだ。地方アイドルにありがちな“素朴な可愛いアイドル”ではなく、まるでジョン・エヴァレット・ミレイのファンシーピクチャーに描かれている美少女のような造形美を誇っており、さらに言うならば、ご当地アイドルならではの純朴を小賢しくアピールポイントとするのではなく、ローティーンの純朴さそのものがその美しい造形をさらに際立たせているといった印象。インタビューにもあるとおり、女たちの美意識の高さは東京の少女モデルたちにも引けを取らない。 そしてその存在感。大人があれこれと策略をめぐらせるが、それらに踊らされているのでは決してなく、むしろ大人が知らず知らずのうちに操られているかのよう。全てが彼女たちを中心に回っているかのようなのだ。 そもそもポップアートとは「漫画やポスターや工業製品などに使用される大衆的イメージを取り入れた現代美術の傾向」であるが、そこには大衆文化の持つ非人間性や陳腐さ、空虚さへの批評性が表現される一方、そうしたものが現代の新たな“風景”であるとしてそこに魅力を見出す向きもあった。いずれにせよ、“芸術”という高級文化に大衆文化というオルタナティヴを放り込むことによって、そこに新たな意味性を帯びさせることが本質なのではないだろうか。 そして、この謎ファイルとやま観光にも、そうした“化学反応”が見られるように思えるのだ。もっとも、このユニットの場合は、ポップアートのように「高級文化にそのオルタナティヴとして大衆文化を交配させる」のではなく、「今や行き詰まりを見せつつある“オルタナティヴ・アイドル”の手法の中心に、純粋培養された圧倒的な“美”や“輝き”という概念を据える」という、ある種の“逆パターン”に挑んでいるかのようだ。何ものにも代えがたい“美”や“輝き”を中心に据えることで、そこにまつわる、いかにも大人が考えそうな“マーケティング”や“エンターテインメント”がまた別の意味を帯びていき、そうした表層的かつ享楽的な“装飾”にある種の魅力が芽生え、それらによって中央に鎮座する“美”がより一層際立つのだ。 富山県の魅力を全国、全世界に発信すべく2018年7月に結成された富山PRガール(仮)。地元にある専用劇場“富山PR劇場”を拠点に様々な活動を行っているが、謎ファイルとやま観光は、その派生ユニットとして2018年10月にスタートした3人組。その“ヤバさ”は好事家の間でじわじわと広がっていき、前述のラップ・ナンバー「アイスクリームパラダイス」でさらに多くの耳目を集めることとなった。 Speak emoは早速この“謎多き”3人組に取材を敢行。その結果は、Speak emo史上“最も音楽的な話をしない”ものとなった。だが、それこそが「自分の作品の表面だけを見てくれ、裏側にはないもない」と嘯いたウォーホルの思想に合致するものではないだろうか。富山のPRに勤しみ、嬉々としてファッションやコスメの話に興じる3人の姿はまさにありのままであり、その裏には何も潜んではいない。だが、そこに“起点”を置かれてしまうことで、受け手は自ずと“そこから先”に想像を巡らせ、その裏に潜んでいるかもしれない“謎”を解き明かそうとしてしまうものだ。ましてや、あんなにクセのある楽曲を歌い踊っているのだから…。 SA-NA、RUNA、MIYABIの3人にお話を伺った。       富山の魅力を全国、全世界に発信していくガールズグループです(RUNA)     ――まずは自己紹介をしていただけますか?   SA-NA:小学5年生11歳のSA-NAです。   ――「サナ」ではなく「サーナ」さんですね?   SA-NA:「サーナ」です。富山のおすすめのスポットは、“世界一きれい”って言われているスターバックスがある環水公園です。   ――あ、“いつもの自己紹介”があるんですね。では続いて、RUNAさん。   RUNA:中学1年生のRUNAです。富山のおすすめはチューリップがきれいなところです。   ――はい。ではMIYABIさん。   MIYABI:小学4年生10歳のMIYABIです。富山のおすすめは立山連峰がきれいなところです。   ――みなさんは“謎ファイルとやま観光”というグループですが、富山PRガール(仮)の派生ユニットになるわけですよね?   一同:はい。   ――ということは、みなさんも富山PRガール(仮)のメンバーでもあるわけですね?   一同:はい。   ――富山PRガール(仮)は、どんなことをされているんですか?   RUNA:富山の魅力を全国、全世界に発信していくガールズグループです。   ――具体的な活動としてはどんなことを?   MIYABI:歌って踊ったり…。   ――どんなところで歌って踊ってるんですか?   RUNA:劇場にも出演してるし、他のお呼ばれしたイベントだったり、お祭りだったり。あと東京や名古屋のイベントにも出演させてもらってます。   ――あ、名古屋にも。   SA-NA:あと、石川とか。   ――劇場って専用の劇場があるんですか?   RUNA:はい。富山市の街中にある富山PR劇場っていうところです。   ――皆さん専用の劇場なんですね。すごいですね!   SA-NA:2階建てです。   ――2階建てですか!   RUNA:1階にカフェがあって、その上にライブ会場が…。   ――皆さんすごいですね。富山だともう大スターじゃないですか?   一同:いえ(笑)。   ――そんなことないですか? でも街を歩いてたら声を掛けられるんじゃないですか?   MIYABI:掛けられないです。   ――「謎ファイルの子だ」みたいに言われないですか? 一度もないですか?   一同:ないです。   ――プライベートだから声かけないみたいな感じなんですかね。   SA-NA:そうなんかな???   ――で、富山PRガール(仮)には、オーディションか何かで入ったんですか?   RUNA:オーディション……になるんかな?   マネージャー氏:SA-NAとRUNAは、もともとの前身のグループにいて…。   ――あ、そういうのがあったんですね。   RUNA:はい。   ――ということはMIYABIさんは富山PRガール(仮)から?   MIYABI:はい。   ――SA-NAさん、RUNAさんは芸歴長いんですか?   RUNA:3年ぐらい?   SA-NA:私は3年ぐらい。   RUNA:RUNAは?   マネージャー氏:一緒だよ。3年ぐらいじゃない?   RUNA:3年?   マネージャー氏:3年ぐらいです。   ――MIYABIさんは1年ぐらいですか?   MIYABI:1年半ぐらいです。   ――富山PRガール(仮)自体結成されたのは?   SA-NA:2018年の7月26日?   RUNA:え?28日じゃなかった?   マネージャー氏:28日か。そうか、忘れたけど…。   ――そこから派生ユニットの謎ファイルとやま観光が出来たのは…?   SA-NA:謎ファイルとやま観光は、え~っと…。   マネージャー氏:2018年10月です。7月に富山PRガール(仮)としてデビューして、その3カ月に派生ユニットとして活動をスタートしました。   ――早い展開ですね。