Speak emo
辛いこともあるとは思うんですが、辛くなったらWHY@DOLLに来て!
“楽曲派アイドル”の至宝である。筆者がおよそ3年前に“楽曲派アイドル”に魅了され、数多の音源を聴き漁った際に最も愛聴していたアルバムの一つが、『Gemini』だった。
1stアルバム『Gemini』では、洋楽要素満載のフュージョンやファンクをオーガニックなバンド・サウンドで再現。2ndアルバム『WHY@DOLL』では、ONIGAWARA、give me wallets、及川創介(CICADA)、仮谷せいら、長谷泰宏(ユメトコスメ)、吉田哲人ら多彩な作家陣を迎え、ぐっと洗練度を増したグルーヴチューンを展開。その後も、中塚武の作詞作曲によるシングル「Show Me Your Smile」でスイング・ジャズを、atagi/モリシー(Awesome City Club)が手掛けた「Sweet Vinegar」ではオリエンタルなムードも漂う叙情的ポップスを綴るなど、その音楽性をさらに拡大。音楽通からパーティピープルまで、その“楽曲”で多くの人の心を掴んできた。
だが、もちろん彼女たちの魅力は楽曲だけではない。ライブでは、華麗なパフォーマンスで楽曲の魅力を最大限に引き出すのみならず、安易な“沸き曲”に頼ることなく丁寧にグルーヴを紡ぎ出しながら、味わい豊かな音空間を構築。さらには、彼女たち曰く「脱力感溢れる」MCもそこに華を添え、えも言われぬ多幸感を生み出している。
楽曲でもライブパフォーマンスでも大いにその魅力を発揮するWHY@DOLL。そんな中でも最大の武器となるのは、二人のヴォーカルやキャラクターのコントラストではないだろうか。ひたすら愛らしく、柔らかで甘い歌声の青木千春。少しアンニュイな雰囲気も漂わせながら気高く神々しく声を響かせる浦谷はるな。この二つの声が、時に落差をもって並び、時に重なり合い、時に溶け合う。あたかもビターとスウィートの二層立てチョコレートのように…。
そして最新EP『Hey!』。“ライブ映え”を意識した楽曲4曲を収録したこの作品では、ファンクやディスコ、そしてポップやロックと様々なタイプの楽曲が並ぶが、いずれもリズムの立ったノリのいいナンバーだ。優れた楽曲を繊細なヴォーカルと煌びやかなパフォーマンスで描き出す彼女たちのライブに、高揚感と臨場感が増量されるというわけだ。これでWHY@DOLLのライブも盤石となることだろう。
だが、単にパワーとグルーヴが加わったわけではない。むしろ二人の声の対比や、ハーモニーにおける二つの声の絶妙な配合など、さらに緻密なヴォーカルワークが印象的であり、溌剌としたビートの上でその豊潤な“歌”の力が遺憾なく発揮されている印象だ。
そんな新曲群を引っ提げ、2月10日より全国ツアーを行うWHY@DOLL。青木千春、浦谷はるなのお二人にお話を伺った。
アイドルってファンの方々に支えられて成長していくんだなって実感しました(青木)
――昨年7周年を迎えられ、現在8年目ということですが、どうですか?ざっと振り返ってみて。
青木千春(以下:青木):早いです(笑)
浦谷はるな(以下:浦谷):特にここ最近一年一年が早いです。私たち2~3月でツアーを回ることが多くて、昨年一昨年もそうだったんですが、「さっきツアー回ったばっかりだな」と思ったら「もうツアーが来る」みたいな。一年の周期がすごく早くて…。
青木:上京してからももう5年で、札幌にいるより東京で活動してる期間のほうが長くなったんですけど、こちらに来てから本当にたくさんの場所に行けるようになりました。海外でもライブさせていただいたりとか…。毎年毎年リリースもさせていただいて…。そこに辿り着くまでの道のりを振り返ると長いなとは思うんですが、同時に早く過ぎてきてるなとも思います。「あっという間に10年とか迎えるのかな」って…。
――Negiccoさんは昨年15周年を迎えられましたけど、お二人もすぐですよ、15周年(笑)。
浦谷:(笑)。でも、「何年ぐらいやってるの?」って訊かれた時に「7年です」って答えると、「そんなやってるんだ?」ってびっくりされる方もいらっしゃるんですが、逆に「まだ7年なんだ」って思う方もいるみたいで…。私もどちらかと言えば、すごい濃い7年を過ごしてきた気がするので、「まだ7周年だったんだ」って去年の7周年の時に思いました。
――「濃い7年」とおっしゃいましたけど、もっと言えばどんな7年でしたか?いいことばかりでもないですよね?
浦谷:ないですね。でも、最初の1~2年がいろいろ悩んだりとか迷ったりすることが多かったですね。何も分からずに始めたっていうのもありますし、地元での活動がメインだったのでもっと上に行きたいって欲もありつつ、メンバーも今より多かったのですれ違いももちろんありましたし、やはり最初は苦悩した気がします。今は別のことで悩んだりしますけど、メンバー間の悩みはやはり最初の1~2年が多かったかなって。
――青木さんはいかがですか?
青木:最初オーディションを受けて、「受かったらアイドルになれるんだ」って思ってたんですけど、そうではなくて…。私たちには振付師もいなくて先生もいなくて、最初は全部自分たちでやってたんですよ。曲もなくて、アイドルさんのカバー曲を練習してって感じで、想像していたのと全然違っていてので、すごい戸惑いもあったんですが、だんだんファンになってくれる人が増えていって…。最初ミッションのようなものをやっていたんです。「ここまでいくとCD出せます」「ここまで行くと衣装をもらえます」みたいな。ファンの人と一緒に成長していく“劇場型アイドル”だったので…。そういうのも最後まで達成してCDを出せて、やはりアイドルってファンの方々に支えられて成長していくんだなって実感しました。そういうのを最初に経験できて、それが自分の中では大きなものになっているので、最初にそういう経験ができて良かったなって思いました。
――なるほど。ファンの方々のありがたみというか、そういうものが実感できたわけですね。その頃のWHY@DOLLを生で拝見したことはないんですが、当時と今で随分違うのは想像できます。人数もコンセプトも音楽性も違いますし。実際当時のお二人は今のこうした状況を想像していました?
青木:全くしてなかったです。
浦谷:上京したタイミングで、当時の事務所の社長に「メンバーは増やさないんですか?」って尋ねたことがあって。そしたら社長に「これからずっと2人でやっていくつもりだ」「2人からそういう話は聞きたくなかった」って言われて(笑)。私達もずっとアイドルをやってるかは分からないですし、もしかしたら他のアイドルさんみたいに卒業するってことになるかもしれないって考えた時に、2人組だとどちらかが辞める時にグループがなくなっちゃうって思ったんですよね。でも、今こうやって2人で長く活動してみて、2人組で良かったなって思うことがすごく多くて…。当時「2人組でやる」って言われた時は最初すごい戸惑ったんですけど、今は2人組で良かったなって思いますね。
――当時と今ではお二人の関係性は変わりました?
浦谷:私、元々敬語使ってたんですよ。ちはるん(青木千春)が先輩だったんで。
――そうなんですね。
青木:グループに加入した時期は2ヶ月しか変わらないんですけど、結構上下関係が厳しかったんですよ。「先に入ったほうが先輩だから」って。なので、最初2人で上京して来た時は、一緒に暮らしてるんですけど、ずっと敬語を使われてて…。これから2人組でやってくので、なんか壁があるの嫌だなと思って、「敬語は使わないでね」ってめっちゃ言ったんですけど、全然直してくれなくて。で、敬語でなくなってから、何でも言える関係になりました。
――敬語じゃなくなるまでどれぐらいかかったんですか?
青木:半年?1年?
浦谷:いや、1年はかかってないと思う。上京して「サンライズ」(編注:2014年1月21日リリースの4thシングル「サンライズ!~君がくれた希望~」)の時はまだ敬語使ってたような気がする。
青木:「MM」(2014年9月24日リリースのメジャー1stシングル「Magic Motion No.5」)の時は?
浦谷:多分使ってない。でも、半年経たないくらいですかね。
青木:半年ぐらい。
浦谷:徐々に無くしていった感じです。
――時々配信なども拝見することがあるんですが、今のお二人の“ボケとツッコミ”みたいな関係とは随分違っていたんですね(笑)。
浦谷:今や当時の“上下関係”は感じさせないぐらい私がズバズバ言ってます(笑)。
――ですよね(笑)。で、1stアルバム『Gemini』は本当に愛聴しましたし、2ndアルバム『WHY@DOLL』もたくさん聞いたんですけど、やはりこの2枚のアルバムは違いますよね。お二人はどう捉えていますか?
浦谷:『Gemini』は、当時色々な作家事務所さんに作曲や作詞をしていただいたアルバムです。『WHY@DOLL』は、楽曲提供していただいたアーティストさんがみなご自身でも活動していて、それぞれのアーティストさんの色が強い曲をいただいて、それをWHY@DOLLの色に変えてお届けしてるって感じだと思います。そういう意味では『WHY@DOLL』の方がそれぞれのアーティストさんとの“タッグ感”が強いのかなって思いますね。曲を書いていただく前にアーティストさんとお話ししたりしましたし、私たち自身も少し…
青木:関わって…。
浦谷:作詞もするようになりましたし。『Gemini』の時は、曲タイトルをつけたぐらいだったので…。
――ちなみにどれですか?
浦谷:私は「Tactics」。「シグナル」と「GAME」と「CANDY LOVE」はちはるんがつけました。
青木:「CANDY LOVE」は2人じゃなかった?
浦谷:ちはるんだよ。
青木:私?私です(笑)。
――そうなんですね。で、サウンド的には大きく違っている印象ですか?それとも地続きですか?
浦谷:私たちとしては、その時その時で自分たちの等身大のアルバムを出してるって感じなんですが、聴いている方はまた違う捉え方をするんじゃないかなとは思います。でも、考えてみると『Gemini』は、ちょっと背伸びした曲が多かったかもしれないですね。当時の私たちが歌うにはちょっと大人っぽいなと思う曲が多くて。『Gemini』に収録されている「曖昧MOON」など、「今になってようやく等身大っぽくなってきたね」とか、「当時は少し背伸びしてたイメージがあったけど、今の成長した2人にはすごい合ってるね」って言う方もいて…。そう考えると『WHY@DOLL』はより等身大な気がしますね。
青木:楽曲は今の方が多くの人に響くんじゃないかなと思います。シティポップ系が多くなって、どの世代にも聴き馴染みがある曲を歌わせていただいているなって。『Gemini』はコアな音楽、洋楽とかちょっと懐かしんで聴いていただけるような楽曲が多かったんですが、そもそも私自身そういう楽曲を聴いたことがなくて「どう歌ったらいいんだろう?」みたいな感じでした。そういう意味でも、『Gemini』はすごくハードルが高いなって思ったんですけど、でも、そういう歌を歌わせていただいたからこそ、「WHY@DOLLのような今の若い子たちがそういう歌を歌うと逆にいいんだよ」ってすごく言ってもらえたので…。『Gemini』をリリースしてから「楽曲派だね」って言ってもらえるようになって、それもすごくいいことだなって思いましたし、今は今で本当にいろんな世代の人から聴いていただける曲を歌わせていただいていると思うので、そう考えると、WHY@DOLLの音楽はどの世代でも楽しんでいただけるな、って思います。
――『Gemini』が大好きだったんですけど、『WHY@DOLL』が出た時に全然違う印象を受けて…。でも、いろんな可能性が広がった作品だなと思いました。そこからいろんな所にいけるなって。もしかしたら『Gemini2』を作っても良かったのかもしれないですけど、あえてそうしないことで、すごく可能性が広がったかな、と。で、先ほど『Gemini』が「洋楽っぽい」っていう発言がありましたが…。
浦谷:ファンの皆さんが「昔の洋楽っぽい」って言ってくださったんですが、私もその当時の洋楽をあんまり聴いたことがなかったので私自身はそんなに洋楽っぽいって感じてはいないんですけど…。でもすごい言われましたね。
――どういう洋楽って言われたんですか?
青木:「CANDY LOVE」…?
浦谷:そう。「CANDY LOVE」とか、オマージュじゃないですけど、すごく似た楽曲があるって。
――ジェームス・ブラウンですか?
浦谷:あ、よく言われます、ジェームス・ブラウン。
――途中のコール&レスポンスのところとか。
浦谷:そうですね。発表した当時はよく言われました。
――そういった要素が洋楽好きのおじさんたちにすごい響くんすよね。そういう意味では、『WHY@DOLL』には、そういう“訳知り顔”のおじさんたちから脱却しようっていう意図があったんですか???(笑)
浦谷:そういうテーマがあったわけではないです。でも、音楽的にすごく評価の高いアーティストさんたちに提供していただいた曲を歌うことで、新しいWHY@DOLLを見せられたらいいなっていう思いは強くて…。現に今までと違う色の楽曲が詰まったアルバムになったと思うので、意図せず脱却したかもしれないです(笑)。さっき、ちはるんも言ってたとおり、『Gemini』では音楽好きでツウな方、音楽に詳しい方々がたくさんファンになってくれたと思います。
――現場ではそういう方をよく見かけます(笑)。
浦谷:でも『WHY@DOLL』の曲は、パッと聴いていいなって思う曲がいっぱい入ってると思います。なので、ライブをやった時も「そんなに音楽が詳しいわけじゃないけど、ライブ見てこの曲いいなと思いました」って方がすごい多くて、ライブ会場でアルバムを買ってくださる方が多かったですね。
――なるほど。で、いろいろ転機があったと思うんですけが、やっぱり「菫アイオライト」辺りが一つの大きな転機でしたか?
浦谷:そうですね。T-Palette Recordsに移籍した最初の作品で、新たな環境で頑張らないといけないなって思った時に提供して頂いた曲なんですよ。歌詞も前に「曖昧MOON」の歌詞書いてくださったつのだゆみこさんが書いてくださったんですけど、私達をよく見てくださっていて、「これからのWHY@DOLLの道しるべになる曲になって欲しい」って思いで歌詞を書いてくださってたので、歌詞にすごい愛が溢れています。
――曲タイトルがいっぱい入ってますよね。
浦谷:そうなんです。今やライブでは鉄板曲ですし、私たちも大事な時に歌うとすごい気合の入る曲ですね。なので自分たちのスイッチも入れてくれるし、お客さんのスイッチも入れてくれるような大事な曲になっています。
WHY@DOLL ライブ情報
WHY@DOLLワンマンライブツアー2019 WINTER “Lo Que Sera Sera”
2019.2.10 札幌|SPiCE(ex:DUCE SAPPORO)
①FIRST STAGE
13:00開場 13:30開演
前売り3,000円/当日3,400円
②SECOND STAGE
17:30開場 18:00開演
前売り3,000円/当日3,400円
(共にドリンク代別)
2019.2.24 大阪|LIVE SQUARE 2nd LINE
①DANCE LIVE
12:30開場 13:00開演
前売り3,000円/当日3,400円
②BAND LIVE
18:00開場 18:30開演
前売り3,500円/当日3,900円
(サポート:大久達朗(Gt)、越川和磨(Gt)、鳴海克泰(Ba)、PITARI(Key)、神保洋平(Drums))
(共にドリンク代別)
2019.3.17 名古屋|RAD HALL
①DANCE LIVE
12:30開場 13:00開演
前売り3,000円/当日3,400円
②BAND LIVE
18:00開場 18:30開演
前売り3,500円/当日3,900円
(サポート:大久達朗々(Gt)、鳴海克泰(Ba)、PITARI(Key)、神保洋平(Drums)、石井裕太(Sax))
(共にドリンク代別)
2019.3.24 東京|下北沢GARDEN
①DANCE LIVE
12:30開場 13:00開演
前売り3,000円/当日3,500円
②BAND LIVE
18:00開場 18:30開演
前売り4,000円/当日4,500円
(サポート:大久達朗(Gt)、越川和磨(Gt)、鳴海克泰(Ba)、松浦碧(Key)、大菊 勉(Drums)、エトウヒロノリ(Tronbone)、PITARI(Trumpet)、石井裕太(Sax))
(共にドリンク代別)
WHY@DOLL 商品情報
4曲入りE.P「Hey!」2019年2月12日リリース!
TPRC-0219 \1,852+税
1.「ケ・セラ・セラ」
作詞:MEG.ME 作曲:吉田哲人 編曲:吉田哲人、長谷泰宏
2.「ふたりで生きてゆければ」
作詞:青木千春、浦谷はるな 作曲:吉田哲人 編曲:吉田哲人、長谷泰宏
3.「It’s all right!!」
作詞:竹内サティフォ 作曲・編曲:ONIGAWARA
4.「Mr.boyfriend」
作詞:竹内サティフォ 作曲・編曲:ONIGAWARA
5.「ケ・セラ・セラ(Naked)」
作詞:MEG.ME 作曲:吉田哲人 編曲:長谷泰宏、吉田哲人
6.「ふたりで生きてゆければ(Naked)」
作詞:青木千春、浦谷はるな 作曲:吉田哲人 編曲:長谷泰宏、吉田哲人
7.「ケ・セラ・セラ(Instrumental)」
8.「ふたりで生きてゆければ(Instrumental)」
9.「It’s all right!! (Instrumental)」
10.「Mr.boyfriend(Instrumental)」