Speak emo

2019.11.20
加納エミリ

プロデュースする時の私と、ステージで歌っている時の私と、作曲している時の私で違う気がします

5/5ページ
早く友だちがいっぱいできるように(笑)

 

――「二人のフィロソフィー」。これはちょっと昔の曲ですよね?

 

加納:そうですね。二十歳の頃に作った曲ですかね。

 

――これにはダンス・クラシックのフレーズが引用されていますよね。

 

加納:えぇっと…。

 

ーーヴァン・マッコイの「The Hustle」ですよね?

 

加納:あぁ、それは入れました。あと、あれも入ってますね。何だっけ…えーっと、シンディ・ローパーとか入ってます。

 

――80年代感満載ですね。で、「ホントのことはどうでもよくて解釈次第」っていう一節は、現代のメディアへ向けられた批判的な…

 

加納:またそっちに持ってこうとしますけど(笑)、全然関係ないです。

 

――そうですか。SNSで虚言が渦巻く現代社会への…

 

加納:すごいですね。社会風刺でもなんでもないです。「二人のフィロソフィー」っていうタイトルは後付けなんですけど、自然とそんな感じの歌詞になって、で、主役の女の子が恋愛に対して抱く想いを哲学的な切り口で曲にまとめればいいかな、って感じで作ったんですよね。

 

――深読みするのがある種の仕事みたいなものですからそうしちゃいますけど、例えば「恋愛経験ゼロの君がニーチェを語った」っていう一節。まさに現代のネット社会って、実体験していない人がウィキペディアかなんかだけを見て「これこれこうだからこう」みたいなこと言うじゃないですか。

 

加納:知ってるふりしてみたいな。

 

――そう。そんな違和感がありますよね。そうした違和感を見事に詞で語ってくれた、と思う人もいるかもしれません。

 

加納:そうなんですか? 何も考えてないですよ。でも、逆にそこまで考えてくださるのはめっちゃうれしい。

 

-ーだからある意味、加納さんは天才的に今の時代の違和感みたいなのを汲み取って自然に言葉にできてるんですよ。

 

加納:できてるんですかね?

 

――天才ですよ。

 

加納:天才じゃないですよ。すいません。ありがとうございます。

 

――そういう意味でも加納さんは、唐突に言いますが、すごくアイドルっぽいなって感じがしたんです。

 

加納:私がですか?

 

――というのも、こうした言葉が――もちろんサウンドも――すごく天才的にスルッと出てくるんですが、ご自身はあんまり考えてない、みたいなことおっしゃるわけじゃないですか。例えば加納さんが今後世界へと進出することになって、海外に音を持っていったとすると、「この人がホントに作ってるの?」って思う人もいるかな、と。いや、日本でも今まだいるかもしれません。加納さん自体はアイドル=アイコンであって、実際は大人がサウンドや詞やコンセプトを裏で緻密に作ってるんじゃないか、って疑う人が。まあ、こうやって何度かお話する機会があると分かるんですが……いや、でもまだ僕自身も“騙されてる”ような気もしますし…。

 

加納:ホントに作ってますよ(笑)。

 

――今の言い方もちょっと怪しい気がします(笑)。そういうのもアイドルっぽい、アイコンっぽい感じがします。

 

加納:確かに、演者の時と曲を作ってる時の自分を使い分けてるような気がします。感覚的に。だからそういうのが出るのかな、と。

 

――存在的には“きゃりーぱみゅぱみゅ”みたいな――言えてないですけど(笑)―-アイコン的存在でありアイドル的存在であり、でも実際には、それらを演じながら全てを自ら作っている、という二重構造というか…。

 

加納:今の段階では自分自身のことをプロデュースする立場でもあるので、プロデュースする時の私と、ステージで歌っている時の私と、作曲している時の私で違う気がします。分かれてるような気がしますね。人格が違うというか…。

 

――それぞれの視点で客観的に見ることができるんでしょうね。

 

加納:コンポーザーの方がアイドルさんに楽曲を提供する時、「この子の声はこういう声だからこういう音にしたら合うかな」とか考えながら作るじゃないですか。私も同じような感覚で、「加納エミリさんはこういうの多分好きだし、このへんの声が一番自信を持って歌ってるからこういう曲を作ろう」ってなるというか、ちょっと他人事みたいな感じで作ってるところはありますかね。

 

――なるほど。例えば、コンポーザーあるいはプロデューサーから見たパフォーマー加納エミリってどんな人ですか?

 

加納:なんだろう…うまく言葉にできないですけど…。お仕事では色んな方とお話しするし仲良くさせていただいてるのですが、やはりライバルとして見ちゃうので、割と孤独な子だな、孤立してるなって。友だちいないんだろうな、みたいな感じで見てます。

 

――ハハハハ(笑)。そういう子が報われるような曲を作ってる、と?

 

加納:そうですね。早く友だちがいっぱいできるように(笑)。

 

――では、そろそろ締めに入ります。今後の目標などをお聞きしたいんですが、以前に「武道館でやりたい」っておっしゃってました。もう見えてきましたよね???

 

加納:まだ全然。

 

――そうですか?

 

加納:途方に暮れてますよ。

 

――相対性理論っていうユニットがあるじゃないですか。

 

加納:あ、はい。

 

――やくしまるえつこさんが一人でやってるユニットですが、彼女が2016年7月に武道館でライブをやったんですよね。その時「レコード会社にもプロダクションにも所属しないアーティストとして初の武道館公演」だったようで。

 

加納:すごい。

 

――実際は個人マネージャーが付いていて、個人事務所のような形でやってらっしゃるんですよね。なので、加納さん。今のうちにやっちゃいましょう!

 

加納:いや、ちょっと。フリーも限界があると思うんですよ。

 

――完全なフリーランスで、たった一人で武道館公演を成功させる最初の人になると思うんですよ。それやりましょう!

 

加納:いやいや~。長いものに巻かれたいですね。そのうち。来年あたりには。

 

――そうですか。やはりゆくゆくはメジャーで?

 

加納:ゆくゆくはですけどね。でも、もう少し時間を掛けたいなって思いはあります。

 

――どうですか? 今の目標というと。

 

加納:とりあえずこのアルバムをたくさん売って、次のステップアップにつながるような道を作っていくっていうのが、まず目の前にある課題ですね。あとは、12月14日に月見ル君想フでワンマンライブをやるんですが、来年にはその倍ぐらいのキャパでワンマンライブをやりたいですし、その次にはさらに箱を大きくして、って思っていますね。今はそんなところですかね。

 

――今のはどの加納エミリさんが言ったんですか?

 

加納:わかんないです。

 

――プロデューサーの加納エミリさん?

 

加納:誰だろう…。演者さんの加納エミリですかね…。

取材・文
石川真男

加納エミリ ライブ情報


加納エミリ「GREENPOP」レコ発ワンマンライブ(BANDSET)
2019/12/14(土)
青山 月見ル君想フ
開場18:00 開演18:30
前売¥3,000 当日¥3,500 (+1D¥600)
https://t.livepocket.jp/e/greenpop

加納エミリ 商品情報

 

greenpop

11月20日 1stALBUM「GREENPOP」 全国発売

《通常盤》
1.恋せよ乙女 2.ごめんね 3.Next Town 4.ハートブレイク 5.恋愛クレーマー 6.Just a feeling 7.フライデーナイト 8.1988 9.二人のフィロソフィー 10.Moonlight 11.ごめんね(Extended Ver.) ¥2,500+TAX (HYCA-3093)

※初回限定盤[DISC2]
「GREENPOP REMIX」
1.恋せよ乙女 -テンテンコ MIX-
2.ごめんね -TETTOはNEO NEW MUSIC MIX-(吉田哲人)
3.Just a feeling -ミカヅキBIGWAVE MIX-
4.フライデーナイト -佐藤優介 MIX-
5.フライデーナイト -HF International MIX-
¥3,000+TAX (HYCA-9004)


12インチアナログ盤、カセットは12月18日発売
LP: ¥3,000+TAX (NRSP-1270) CT:¥2,500+TAX (NRCT-2501)

レーベル:なりすコンパクト・ディスク
発売元:ハヤブサランディングス
流通:スペースシャワーミュージック

 

 

 

 

 

PROFILE

PROFILE
加納エミリ

1995年生まれ。北海道出身。2018年5月にデビュー。
19歳から楽曲制作を始め、作詞・作曲・編曲などを全て自らで手がける。80年代ニューウェイヴ・テクノ・インディーロックなどをルーツとした楽曲を完全セルフ・プロデュースで制作。2019年1stアルバム「GREENPOP」、2020年アルバムからのカットで12インチ・シングル「恋せよ乙女」をリリース。