Speak emo

2019.01.09
加納エミリ

新しいアイドルの可能性を私が作りたいな、って

2/5ページ
隙がある方が興味をそそられるじゃないですか

――Spotifyでプレイリストを作られていますが、それを見ると非常にヤバいですよね(笑)。

加納:どういう意味ですか?良い意味で?悪い意味で?

――もちろん良い意味でです。「本当に23歳なんですか?」みたいなリストじゃないですか(笑)。こういう音楽を聴いて育ったんですか?

加納:高校生の頃からそういう電子音楽が好きで、最初はEDMとかメジャーなものが好きだったんですが、色々と掘っていたら、「こういうのも好きかも」っていう風にどんどんハマっていって、いつの間にかニュー・ウエーブとかテクノとかインディーロックとかオルタナティブとかに行き着いたって感じですね。

――もろに親世代というか、まあいえば僕世代でもあるんですが…(笑)。ニュー・オーダーの『Bortherhood』とかは多感な時期にもうずっと聴いてました。やはりお父様の影響ですか?

加納:いえ、父からはあまり影響は受けていないですね。

――えぇええ! 完全にお父様の影響かなと思ってたんですけど…。

加納:父もすごく好きだったんですけど、でも影響はあまり受けてないですね。私が勝手に好きになったって感じです。「何かいい曲ある?」って父に聞いて教えてもらったことはありますけど、こういうものにハマる“きっかけ”ではないですね。

――お父様のCD棚から拝借してきた、とかありました?

加納:そういうのはないです。

――ご自身で掘った、と。CDを買っていましたか?

加納:CD…そうですね。YouTubeで一回聴いて良いなと思ったらCDを買うっていう…。

――でもプレイリスト見ると、もうマニアというかコレクターの感覚じゃないですか。例えば、若い方に好きな音楽の話とか聞くと、「YouTubeで見て、名前とかちょっと分かんないんですけど、ヒップホップとか好きです」みたいなことを言う人が多いんですけど、加納さんの場合はちょっとそういう聴き方じゃないじゃないですよね?

加納:あぁ、そうですね。まあでも、かなり偏ってるんですけどね。

――では、もっと遡ると、一番最初にハマった音楽って何ですか?

加納:一番最初ですか? 何だろう? 高校生の時にハマったのは、今ではすごい有名なんですけど、ブルーノ・マーズとか。

――あぁ、そんなところから!

加納:あとリアーナとか、超メジャーなものからまず入って。高校生の頃にはすごくEDMが海外で流行ってて、日本ではあまり知名度はなかったんですけど、ゴリゴリの、ちょっと耳がザワザワするぐらいのやつを聴いてました。で、一時期ダフト・パンクが好きになって、ダフト・パンクのことをもっと知りたいなと思った時に、ダフト・パンクのメンバーが昔やっていたバンドに現フェニックスのメンバーがいたとか、ダフト・パンクがザ・ストロークスから影響を受けてるといったことを知って、フェニックスとかザ・ストロークスを聴くようになると、そこからニューウェイヴに行き着いて、最初はニュー・オーダーとかデペッシュ・モードとかデュラン・デュランとかヒューマン・リーグなどを聴くようになって、さらにはノーランズとかカイリー・ミノーグとかマドンナとかその辺が好きになって…。で、こういう音楽がやりたい、それを今の時代にやりたいなって思ったんですよね。それが今の音楽活動の軸になっています。

――面白いですね。でも、こういう音楽をやるとなると、加納さんのような若い人は新鮮な音楽として捉えているかもしれないですけど、もしかしたら昨今の80年代90年代ブームに乗っかって、“戦略”としてやっているような人もいるような気がしますが、加納さんの場合はいかがですか? 新しい音楽を聴きながらどんどん掘っていったら、自分にピタッとハマる音楽を見つけたってい感じですか? 戦略ではなく、自分の本質とピッタリ合致するものですか?

加納:そうですね。一番自分が作りやすい音楽です。スムーズにやるには自分が作りやすくて、作りたい音楽をするのが一番だなって思って。それがモロに出ているのが「ごめんね」っていう曲ですね。

――あぁ、なるほど。ああいうサウンドがピタッとハマったってのは、どういう点にビビッと来たんですか?

加納:私、音数が多い音楽が好きじゃなくて、ちょっとスカスカな感じのチープな音楽にすごく興味があるんですよ。隙がある感じがすごく好きで。最近の日本の音楽ってかなり洋楽っぽくなってきてるので、質は上がってるんですけど、隙がなくて、聴いててちょっと距離を感じてしまうんですよね。

――なるほど。

加納:完成度の高いサウンドがどんどん出てきてる中、流行と逆に行ったほうが、もしかしたら面白がってくれるんじゃないかな、っていうか…。そうした“隙”があった方が親近感を抱いてくれるんじゃないか、と。例えて言うなら、完璧なオシャレをしてて、スタイルも良くて、顔も綺麗で、っていうパーフェクトなモデルさんよりも、可愛いけどちょっと変な色味の服を着てるとか、そういう隙がある方が興味をそそられるじゃないですか。「なんでそんな格好してるの?」みたいな…。そういう感じですね。

――あぁ、その方が引っ掛かりがありますよね。敢えて“突っ込みどころ”を作ってるっていうか。

加納:そう、“突っ込みどころ”! そういうアイコンとなるような存在でいたいです。

――なるほどなるほど。今いろんなことが腑に落ちた感がありました。

加納:良かった。

――そういう意味では、“アイドル”にもそういうところがありますよね。

加納:そう。アイドルになろうと思ったのは、それが一番大きいですね。

――では、加納さんが定義する“アイドル”ってどんなものですか? 今アイドルの定義って難しいじゃないですか?本当に多様化して。

加納:そうですね、かなり飽和もしていますし。

――でも、“アイドル”って名乗っていますよね。それもある種の“戦略”なのかもしれないですけど、加納さんが定義する“アイドル”ってのはどんなものですか?

加納:そうですね~、難しいな。定義かぁ…。私のやってることは、世間一般の人がイメージするようなアイドル像とは少し違うかもしれないですけど…。今私は「NEOエレポップガール」っていうキャッチフレーズで活動してるんですが、そういったアイドルの新しい可能性を少しでも多くの人に認識して欲しいなって思っていて…。「こんなアイドルがいるんだ、面白いな」ってちょっとでも思ってもらえるきっかけになりたいんですよね。“アイドルの定義”って分かんないですけど、すごくざっくり言うと、新しいアイドルの可能性を私が作りたいなって。かなり大きな話になっちゃったんですけど…。

――加納エミリが“可能”性を作れるように(笑)。

加納:恥ずかしい、すいません。あんまり熱い話は苦手で。めっちゃ恥ずかしいですね。ごめんなさい。

――いいじゃないですか(笑)。

加納:笑ってるじゃないですか(笑)。

――ちょっと見出しに使っちゃおうかなと思って。

加納:いやー、恥ずかしい。見出しは恥ずかしいです。

――(笑)なるほど。アイドルの可能性ですね。それは僕も考えてたところではあって。今のライブアイドルって、僕も一時期ホントに深いところまで観ていた時期があったんですが、人が見てないことをいいことに何でもやってる、って感じでしたからね。ホントになんでもありって感じで。

加納:分かります。かなりアウトローな人もいますよね。

――実際に体感したわけじゃないですけど、どこか70年代終わりのパンク勃興期みたいな、そんな空気感さえ感じるみたいなところもあって、本当に可能性がいろいろあると思いました。そして加納さんは、さらに新たな可能性を開くわけですね。

加納:そうなりたいですね。

――で、加納さんはそれを自分で作っているわけですが、作曲はどれぐらいから始めたんですか?

加納:ちょっとDTMをいじりだしたのは18歳の頃からで、それまでは全然曲を作ったことがなかったんです。本格的に始めたのは19歳の頃からですね。そこからDTMを勉強しました。

――時系列を確認しますと、まずはニューウェイヴやエレポップやテクノにハマって、そこからDTMを始めたって流れですか?

加納:そうですね。最初は「音楽やりたいな」ってだけの漠然とした気持ちで、なんとなく東京に来たっていう感じだったんですけど…。

――あ、DTMを始めたのは東京に出てきてからなんですね。

加納:そうです。

――音楽をやりたいなと思ったのはいつ頃からですか?

加納:中学校の頃から歌手になりたいなって憧れはあったんですけど…。

――その頃は誰に憧れてたんですか?

加納:その時は宇多田ヒカルさんが大好きで、今私がやっているものとは程遠いですけど…。宇多田ヒカルさんみたいな世界観がいいなって漠然と思っていて。高校時代もそんな感じで過して、でも音楽やりたいなってのはどこかにありました。

――楽器は何かやってましたか?

加納:いえ、楽器は未だに何も弾けなくて。もうパソコンだけです。

――では、宇多田ヒカルさんに憧れて、漠然と音楽活動がやりたいと思って、で、東京に出てきてからニューウェイヴとかエレポップにハマって、そこからDTMを始めた、と。

加納:そうですね。同世代の中ではちょっとだけ詳しいかなっていう状態だけで東京に出て来ました。

――でも、東京に出て来るって結構勇気が要ったんじゃないですか?

加納:地元の札幌にずっと居続けるのが嫌だったんですよ。別に地元が嫌いなわけじゃないんですけど、世間の狭さとかがあって、ちょっと居心地が悪いなと思っていたので…。誰も知らないところに行きたいなって思ってて、ずっと東京に出たいって気持ちはあったんです。東京で何かしたいみたいなって。それも最初は漠然とだったんですが、勢いで来たって感じですね。

――性格的には、あんまり考えずに勢いでいっちゃうみたいな感じですか?

加納:性格的には、う~ん…。かなり考えるんですけど、一度決めた事は曲げないですね。

――そう聞くと慎重な性格のように思えますが、漠然と東京に出てくるのはかなり大胆ですよね?

加納:確かに、言われてみれば。慎重にはなるけど自分のやりたいと思ったことには素直に行動するタイプなので、思わず大胆になってしまったのかもしれないですね。

――なるほどね。で、東京に出て来られて、DTMを始めて…。どんなものから作り始めたんですか?

加納:最初は色んなものを作ってました。自分は楽器ができないので、楽器を使わずにパソコンだけでできる音楽ってのを大前提として、いろいろ挑戦してましたね。色んな曲調のものを。

――それって誰かに教わったりとか、そういう学校に行ったりとかは?

加納:学校で教えてもらったことはあまりなくて、ほとんど独学ですね。Logicを入れて、ノートパソコンで作ってるんですけど…。

――始めた時からそんな感じですか?

加納:そうですね。同じソフトで同じMacで作ってます。

――なるほど。では、初めて人前で歌ったのはいつですか?

加納:人前で…。学生時代は中途半端に音楽やりたいという気持ちだったので、高校の文化祭で一度人前で歌ったことはあったんですけど…。

――何を歌ったんですか?

加納:aikoさんの「カブトムシ」(笑)。今でもカラオケの十八番なんですよ。でも、本格的なライブ経験とかはなくて、東京に出て2年目ぐらいの時に初めて本格的に人前で歌いましたね。最初はもう全然しょうもない感じでした。

――例えばバンド作ろうとか、そういう思惑はなかったんですか?

加納:そうですね。バンドやってみたいなとは思ったんですけど、でも本気で探そうっていう気持ちにはならなかったですね。

――あまり友達はいないんですか?(笑)

加納:友達いないですね…。

取材・文
石川真男

加納エミリ ライブ情報

2019年2月13日(水)加納エミリ大生誕andリリースパーティ

会場:新宿Motion
OPEN 18:30 START 19:00
前売:2500円 当日 2800円(+各D代)
出演:加納エミリ、脇田もなり、KOTO、SAKA-SAMA

加納エミリ 商品情報

発売中
『EP1』

EP1

加納エミリ公式オンラインショップ、ディスクユニオンにて発売中。
また大阪ではハワイレコードでも取り扱い決定!


2月13日リリース

「ごめんね/Been With You」7inch盤
NRSP-755

No image

加納エミリ公式通販のほか、HMV、タワーレコード、各レコードショップにて発売予定。
リリースイベントも開催決定!

 

 

PROFILE

PROFILE
加納エミリ

1995年生まれ。北海道出身。2018年5月にデビュー。
19歳から楽曲制作を始め、作詞・作曲・編曲などを全て自らで手がける。80年代ニューウェイヴ・テクノ・インディーロックなどをルーツとした楽曲を完全セルフ・プロデュースで制作。2019年1stアルバム「GREENPOP」、2020年アルバムからのカットで12インチ・シングル「恋せよ乙女」をリリース。