Speak emo

2018.05.28
callme

(大きく手を広げて)今ではもうここからここまでぐらいに大きく広がったのがこの3年間の成長だな、と

1/5ページ

この精巧かつスタイリッシュなサウンドを奏でる表現者たちを形容するに相応しい言葉ではないかもしれないが、callmeは“スルメ”アーティストである。その多彩な楽曲には様々な工夫が凝らされており、そこには、一撃で聴く者の心を射抜くものもあれば、耳馴染むまでに少々時間を要するものもあるが(筆者の印象としては、後者の方が多いように感じる)、いずれにせよ彼女たちの作品は、繰り返しの鑑賞に堪えうる、いや、聴けば聴くほどさらに味わい深くなるものであることは間違いない。すなわち、噛めば噛むほど味が出る楽曲を自ら作り、それらを歌い踊って表現する“スルメ”アーティストなのだ。

以前に取材をさせていただいた際、彼女たちの中には「ポップの軸」とでも称すべき“基準”があり、「キャッチー」と「コア」の間でその軸をしなやかに動かしながら「どこに合わせるか」によって様々な表現を試みている、といった趣旨のことを述べていた。そして、「この一線を越えてポップになりすぎるとcallmeらしくない」あるいは「これ以上踏み込みすぎてコアになってはいけない」といった“バランス調整”も行なっており、こだわり抜いた上で“callmeのポップ”を構築しているようなのだ。ともかくも、大衆の耳目を奪うためだけの奇を衒った表現がすぐに飽きられることを知っており、その一方で、聴き手を置いてきぼりにする自己満足のための表現に意味がないことも認識しているのは確かだ。裏を返せば、大衆に寄り添おうが、自己の表現をとことん追求しようが、そこにブレない軸があれば、聴き手の心を長く深く揺さぶり続けることが可能であることも…。

“しなやかに動き”ながらも“ブレない“軸。この矛盾こそ、callmeサウンドの“スルメ要素”なのではないだろうか。それはあたかも、揺れに合わせて柔らかにしなりながら震動を吸収する、耐震性に優れた高層ビルのようだ。「ポップ」から「マニアック」までその“軸”を微細に動かすからこそ、“ブレない”callmeサウンドが確立されるのだ。

そして、「callmeサウンドが確立された」2ndアルバム『This is callme』後にリリースされたEP群では、その“振り幅”がさらに広がっている印象だ。「ポップの軸」がさらに多彩な位置に設定されているのだ。だが、その軸はあくまでブレていないがゆえに、いずれのサウンドにおいても「callmeらしさ」は失われていない。

KOUMI、RUUNA、MIMORIから成るセルフプロデュース型ユニット。それぞれの得意分野でその手腕を発揮しながら、自ら楽曲を制作し、それらを歌とダンスで表現してきた。ダンスと英語が得意なKOUMIは、振り付けを担当し、しばしばその流暢な英語でラップも披露する。リーダーのRUUNAはヴォーカルの要となり、同時にマーケターとしてトレンドを意識しながらcallmeサウンドにバランスをもたらす。そして、MIMORIはこれまで全楽曲を作曲し、多くの曲で作詞も担当する。2014年12月30日結成。翌2015年3月に「To shine」でシングルデビュー。同年3人の高校卒業を期に仙台より上京し、活動を本格化。現在に至る。

これまでリリースされた2枚のアルバム『Who is callme?』『This is callme』、そしてその後にリリースされたEP『Bring you happiness』『One time』、そして最新EP『Hello No Buddy』について伺いながら、これまでcallmeが歩んできた道のりを辿り、そのサウンドの“噛みごたえ”の秘密を探った。

callme__member

今まではあんまり“気持ちを新たにする”感覚はなかったんですけど、今回はやっと少し立ち止まって振り返ることができたんですよね(RUUNA)

――先日(4月22日)のヤマハ銀座スタジオでのライブの際にMCで、ライヴのリハを行なった2週間で、これまでのことを色々と振り返られた、といったことをおっしゃっていました。どんなことを振り返られたんですか?

RUUNA:そうですね。いつもは結構ギリギリのスケジュールの中でやってるんですけど、久しぶりにライブまでの時間が多めに取れたんですよ。振り付けもライブの3日前とかから始めて、みたいなことが多かったんですが、今回は『Hello No Buddy』をリリースして、ひと段落した状態で単独ライブに臨めたので、毎日入念にリハをやって、(3人で暮らしている)家でもリビングで集まってライブの打ち合わせとかも結構念入りにやったりして。そうしているうちに、なんか新しい気持ちになったというか…。4月って新しく始まる新年度のイメージがあるじゃないですか。でも、私たちは学校とかに行っているわけでもなく、皆これ一本でやってきているので、今まではあんまり“気持ちを新たにする”感覚はなかったんですけど、今回はやっと少し立ち止まって振り返ることができたんですよね。それで「ああ、こういうのあったよね」って感じで…。

KOUMI:スタジオ以外でもお家に帰って、リハ動画を見て「ここもうちょっと詰めた方がいいね」とか「直した方がいいね」とか。そういうことは今まではスタジオでしかやってこなかったんですけど、ちゃんとお家帰っても皆忘れないようにして、より精度を上げられたんじゃないかな、って。今回のライブは、特に何かの節目とかではなかったんですけど、今までとは違った新しい気持ちでできたかなと思いました。

――先程もおっしゃいましたけど、お家でそういう“残業”をすることはあまりなかったんですか?

RUUNA:そうですね。3人とも割と仕事とプライベートとは分けるタイプで、お家に帰るとそれぞれの部屋で自分の時間を過ごすんですよ。なので、これまではできるかぎり仕事は家には持ち込みたくないって思っていました。でも、3周年を迎えて、自分たちの中ではやっと土台ができたと思っていて。なので、今年は外に飛び出す1年にしたいな、思ってるんです。3年間頑張ってきたんですけど、これまでチャンスが来なかったのはきっと「自分たちにまだ何かが足りないからだ」って思っていて…。そういったことを今回色々と話して「いろんなことをやってみよう」という結論に至ったんです。今まではやっぱり「それはcallmeらしくない」とか、自分たちの中でも選んでいた部分があったんですけど、もう今年は提案や意見を聞いたら「とりあえず全部やってみて、それで吸収していこう」って。3人はもう10年ぐらい一緒にいるので、関係性が変わらないことはすごく居心地がいいんですけど、それがマイナスポイントでもあるのかなって…。なので、今年は全部変える気持ちで何かやろうと思っていて、自分たちの中でも意識が変わったというか。関係性は変わらないんですけど、そういうまた違った気持ちになったんですよね。

――その気持ちになったのが2週間のリハの時ですか?それとも今年になってから?

RUUNA:そうですね。今年入ってから「そういうタイミングではあるよね」って思ってたんですけど、実際にそれをしっかりと実践できたのがその2週間だったかなって。皆で同じ気持ちになって、皆で一緒にご飯を食べて、そのご飯を食べている時もずっと仕事の話をして。「なんかこういうのがちょっと足りないよね」とか意見交換をして…。例えば、ちょっと逃げちゃう場面っていうのもあるじゃないですか。あまりSNSが得意じゃないメンバーがいれば、「じゃあ、いいよ」って他のメンバーが更新したり…。でも、これからはちゃんとやろう、と。まあMIMORIさんのことなんですけど。

KOUMI:なので、今年からは決まったんですよ。

RUUNA:言ったんです。「もうそういう甘えは聞かない」って。

――おぉ。

MIMORI:だから「1日2回はツイートしよう」ってことで、今日も朝入れてきました(笑)。

RUUNA:そうやってくれてすごく嬉しくて(笑)。まあ、本当に些細なことなんですけど。

――なるほど(笑)。そうやって振り返られたとのことなので、ではここで、これまでの軌跡を作品ごとに簡単に辿ってみたいのですが…。それぞれの作品が皆さんの中でどういう位置付けなのか、どういう意味を持つのか、といったことを皆さんの口からお聞きしたいんですが、まずは1stアルバム『Who is callme?』。これは皆さんにとってどういう作品でしょうか。

RUUNA:もう無我夢中で作った作品ですね。“セルフプロデュース”っていうものがまだ何もわかってない状態でやっていたので、アルバムのバランスとかもそんなに考えず、沢山作って良かったものを選ぼう、ぐらいな気持ちで曲を作っていた印象です。でも今聴くと「それも良かったな」って思うんですよね。私もずっと作詞をやってきてある程度書き方とか分かってきましたし、各メンバーも自分のやりやすいものを見つけて結構書けるようになってきています。でも、この頃の無我夢中で絞り出していた作品もいいなって。今ではもうできなくなってしまった感覚ですよね。そういう意味では、最近callmeのことを好きになってくれた方も、『Who is callme?』を聴いていただければ、私たちがどんな歩みをしてきたのかが分かっていただけると思います。

――自分たちで音楽を作るっていう“初期衝動”みたいなものが溢れてるんでしょうね。

KOUMI:やっぱり1stアルバムなので、本当にやりたいことだけを詰め込んで、歌詞も本当に初々しい私たちの一面がそのまま出ているかなって思っているので、そんな1stと今の作品を聴き比べてみてると面白いんじゃないかなって思います。

――ある意味、今じゃ書けないような詞ですか???

KOUMI:そうですね、はい(笑)。

MIMORI:恋愛の歌詞とかは結構ベッタベタだと思います。高校生の妄想って感じです。

RUUNA:もう本当に“ザ・少女漫画”。自分たちの空想の中でこういうのに憧れていたみたいな、学生のときに憧れていたみたいなものが詰まっているので、全然共感できないような歌詞だったと思うんですよね。だけどあの時の自分たちにとってはそれが“恋愛曲”だったんですよね。最近の作品は等身大というか、自分たちのリアルを描くようにしているんですけど、なんかあの時は“夢がいっぱい詰まっている”じゃないですけど…。

KOUMI:キラキラしてる。

RUUNA:いっぱい詰め込まれている感じですよ。

MIMORI:未知の世界への輝きが詰まってますね。自分たちもまだよく分からないけど、とりあえず自分たちのやりたいことをやり始めて、「こういうのやってみました。皆さん、どうぞよろしくお願いします」っていう挨拶代りの1枚だと思います。

――まさに名刺代わりの1枚。「callmeと申します」という感じですよね。では、続いて『This is callme』。

RUUNA:『This is callme』は「これがcallmeです」っていうのが明確に出たアルバムだと思っています。1枚目の『Who is callme?』が「callmeを知ってもらおう」っていうものですが、そこから活動してきて、ちょっと見つけた「自分たちらしさ」みたいなものが詰まっている作品じゃないかと。結構そこが基盤になって、そこから今も広がってるんじゃないかと思います。ダンスが踊れるリズムで曲を作るんですけど、歌とダンスの基準がここで定まったように思います。それまでは結構模索していたんですが、こういう方向性でやっていこうっていうのが自分たちの中でピシッとハマった1枚ですね。

MIMORI:1枚目で模索して、で、発売して、何曲か「こういうのが自分たちの得意ラインだね」っていうのを見つけたので、得意ラインの方をメインに据えて作ったのが2枚目だと思います。自分たちの好きなものを沢山作って、その中に「callmeらしさ」っていうものを見つけて、その中から「callmeらしいPOP感」を見つけました。

――そういう意味ではcallmeサウンドを確立したと言ってもいいでしょうか?

RUUNA:そうですね。それが『This is callme』ですかね。

――でも、それをリリースした直後ぐらいにインタビューをさせていただきましたが、その時って例えば『Sing along』とか「Cosmic walk」とかって、新機軸というか、それまでにはなかった“新しい試み”みたいな感じだったじゃないですか。

RUUNA:はい。

――でも、今やそれらもcallmeサウンドとなりましたよね。それも含めた“callmeサウンド”って感じです。

RUUNA:そうですね。本当に。MIMORIはポップなメロディを作るのがあまり得意じゃないんですが、自分たちの中でのポップを追求したのが『This is callme』ですね。毎回アルバムを出すたびに反省点はたくさんあるんですけど、でも、ちょっと一歩踏み出せたアルバムかもしれないですね。「Sing along」 とかも、今聞くと「すごいPOP」ってわけではないんですけど、でもあの当時の自分たちからしたら「すごくPOPなのができた」って思っていたんですよ。なので、「挑戦する」っていうことの大切さを感じた1枚でもありますね。それ以来「ずっと挑戦していくこと」がテーマになりました。

――当時聞いた時にすごい思ったんですけど、それまでは緻密に作り上げたカッコいいサウンドで、ある意味“隙がない”印象だったんですが、『This is callme』では、とりわけ「Sing along」なんて、何というか、歌い掛ける、問い掛ける、みたいな部分が出ているように感じました。

KOUMI:ポップな曲でも皆が言うようなポップじゃなくて、ちゃんとcallmeエッセンスも入れたいなと思ったので…。前作では「step by step」がポップソングだったんですけど、『This is callme』では、私たちの色を入れてさらに進化したポップソングが出来たんじゃないかなと思っています。

――そうした「“ポップの軸”をどこに置くか」といったお話を以前のインタヴューでされていたと思うんですけが、やはりそれもその時々で変わってくるんでしょうか?

RUUNA:そうですね。

MIMORI:最近はその振り幅が大きくなりました。振り切りたいものは思い切り振り切るし、逆に本当に追求したいものはとことん追求する、っていう感じです。今までここからここまでだったのが、(大きく手を広げて)今ではもうここからここまでぐらいに大きく広がったのがこの3年間の成長だな、と感じています。

取材・文
石川真男

callme 商品情報

Hello No Buddy

Hello No Buddy
発売日:2018年3月7日

[Type-A](CD+DVD) ¥3,200(税込)
[Type-B](CD+BD) ¥3,900(税込)
[Type-C](CD Only) ¥1,000(税込)

PROFILE

PROFILE
callme
KOUMI、RUUNA、MIMORIの3人によるガールズユニット。 2014年12月30日に結成。それぞれの得意分野を活かし楽曲やパフォーマンスをセルフプロデュースする新しいスタイルのガールズユニットとして活動をスタート。 リーダーのRUUNA、ダンスを得意とするKOUMI、作曲を得意とするMIMORIの3人が一体となったクオリティーの高いダンスと楽曲の創造性溢れるパフォーマンスが魅力。
RUUNA(秋元瑠海)

<p>callmeリーダー・作詞<br />
&lt;なにごとにも真摯に全力で挑み、ステージ上ではパワフルなパフォーマンス力を持つ。&gt;<br />
ニックネーム:るーちゃん<br />
誕生日:1996年9月9日 血液型:O型</p>

MIMORI (富永美杜)

作曲・作詞
<ヴィジュアルのみならず、ピアノで作曲を行う等クリエイティブ力も備える。>
ニックネーム:みも、みもりん、みもちゃん
誕生日:1996年6月14日 血液型:O型

KOUMI(早坂香美)

振付け・作詞
<その高いダンススキルを活かしてcallmeの全てのダンスを監修。またラップも担当する>
ニックネーム:こうみん
誕生日:1996年5月31日 血液型:O型

公式サイト: https://avex.jp/kolme/