Speak emo

2020.10.22
加納エミリ

加納エミリ | 曲が出来るかなり前から「朝になれ この恋を忘れるまで」っていうフレーズだけがずっと頭にあって…

3/6ページ

 

 

 

 

レファレンスの曲もないですし、正直自分でどのジャンルの曲かも分かってないです

 

 

 

ーー復活後初のシングル「朝になれ」ですが、いい意味でリスナーを裏切る曲ですよね。

 

加納:いい意味でですね? 良かった…。

 

ーーはい。もちろんいい意味で。そういえば、この曲のトレーラーを公開された際、ちょっと不安を覗かせるツイートがありましたよね。

 

加納:だって、公開した瞬間にフォロワーが10人ぐらい減ったんですよ。

 

ーーえ? なんでですか?それって(笑)。

 

加納:え?っと思って。新曲を公開して減ることがあるんだ、と思って。

 

ーーなんでですかね。例えば、それが自分の好みとちょっと違ったとしても、フォローを外すことはないですよねぇ。

 

加納:「変わっちゃったんだ」って思ったのか、急にガッと減って…。あの曲を発表した直後、「シティ・ポップに乗り遅れたね」みたいなことを言われたりもしました。私自身は全くシティ・ポップと思って作ってないんですけど…。そういうこと言われたりとか、フォロワーが減ったのもあったし、曲も今までのものと比べるとちょっと地味なので…。自分もこの曲で勝負したいという気持ちはなかったんですけど、それでも出したいと思ったから出したんですけどね。

 

ーーこの曲で勝負したいと思った曲ではなかった、と。

 

加納:うーん。やっぱり地味なので。事前にいろんな関係者の方々に聴いていただいたんですが、やっぱり中には「地味な曲ですね」みたいに言う人もいたんですよね…。

 

ーーでも、それをリリースするってことは何か外部からの要望というか要請があったんですか?

 

加納:いや、単純に自分が好きな曲だったからリリースしました。自分ではいい曲ができたっていう自信があったんですが、かといって、それでバズりたいっていう気持ちは全くなくて、ただ自分が好きな曲を出したいなと思って…。

 

ーーああ、なるほど。「自分の中にパフォーマーとプロデューサーとクリエーターの3つの人格がいる」と以前おっしゃっていましたが、パフォーマーあるいはクリエイターとしては「いい曲ができたから出したい」と思いつつも、プロデューサーとしては「ちょっと地味なんじゃないか」っていう客観的な意見もあって、と。

 

加納:そうですね。それは自覚していました。あともう一つこの曲をリリースした理由があって…。今までは「80年代オマージュ」みたいな曲ばっかり出してたんですけど、やはり“復帰後”っていう一つの区切りで出すので、以前とは違う曲の方がいいなと思ったんですよね。「80年代風の曲しか作れない」みたいに思われるのも嫌だったので、一度こういう曲出して自分の幅を広げたいな、って。「こういう曲も作れますよ」っていうのをアピールしたかったっていうのはあります。

 

ーー一つの方法として、「ごめんね」みたいな路線の、シンセが派手に鳴って、モロに「どの辺をオマージュしてるか分かる」みたいな曲で行くのもアリじゃないですか。でも、それをやらなかったのが加納さんっぽいなっていう感じがすごくしたんですよね。僕も全然シティ・ポップには聞こえなかったんですが、昨年12月のワンマンではいわゆる“NEO・エレポップガール”の加納さんとは違うものを見た気がしたんですよ。で、それがまた別バージョンの加納さんなのかなとも思ってたんですが、今回の曲ってあのワンマンで見たものに通じるものがあって、もしかしたらより本質に近いんじゃないかなって感じもしたんですよね。

 

加納:そうですね。自分もそう思います。

 

ーー例えば声自体も、これは敢えてそうしているんだと思うんですけど、すごく生々しくて剥き出しな感じですよね。

 

加納:あぁ、そうですね。

 

ーーで、ドラムは打ち込みですよね?

 

加納:ドラムは打ち込みです。

 

ーーでも、ベースとギターは生で入ってますよね。なので、やはりバンドっぽい感覚があって…。12月のワンマンってめっちゃバンドだったじゃないですか。しかも“ギターバンド”だったじゃないですか。

 

加納:一応同期していた音源はあったんですけど、後から聴いてみたら、あまり聴こえてなかったですよね。本当はもっと音量上げたかったと当時は思ってたんですけど、今思うと、もう要らなかったんですよね、正直。

 

ーーなるほど。ある種の「第1章」のイメージを作るためにシンセの音が同期されてましたけど、会場で聴いてるとあまり聴こえなかったので、インディーギターバンドみたいな感じだったんですよね。しかもエレポップとはイメージの全く異なる「70年代ウェストコーストロックとかに憧れてるような英国のギターバンド」みたいな感じの音に聴こえたんですよ。

 

加納:USっていうよりかはUKですよね。

 

ーーですよね。それはまあ、音のバランスの問題とかもあったからですけど、図らずもそこに本質が見えたというか、今後の方向性の一つが見えたというか…。そして、この「朝になれ」に通じるものが示されていたかな、って。

 

加納:そうですね。たぶん今後またライブパフォーマンスの仕方とかも変わっていくと思うんですけど、やっぱりバンドが楽しいんですよね、やってて。だから、自分は基本的にバンドで、シンセも同期じゃなくてちゃんと演奏者を加えてやりたいなって思います。結局ロックが好きなんですよね。

 

ーーなるほど。とはいえ、それまで加納さんが積み上げてきたものと地続きな部分も感じたんですよ。例えばメロディーの懐かしさみたいなものとか。今回の曲で、加納さんてメロディーメーカーだなってすごい思いました。

 

加納:ありがとうございます。めっちゃうれしいです。

 

ーーメロディがすごく耳に残るんですよ。もう一発で入ってきました。

 

加納:うれしい。ありがとうございます。頑張ります。

 

ーーギターの渡瀬賢吾さんが「ネオソウルの匂いを感じる曲だった」っておっしゃってました。ネオソウル意識したんですか?

 

加納:いや、してないです(笑)。

 

ーーそこが面白いところですよね。人によって捉え方が違って。

 

加納:ネオソウルというのが意外だったので、うれしかったです。

 

ーーなるほど。で、あまり手の内を言ってしまうのも興醒めするかもしれないですが…

 

加納:全然大丈夫です。

 

ーーこの曲はどんなところから着想してどんなイメージで出てきた曲ですか?

 

加納:例えば、曲を作る時って想定する方向性が何かしらあると思うんですが…。エレポップっぽいものを作りたいとか、アーバンディスコっぽいものを作りたいとか。でも、この曲に関しては全くなくて。だから、最初フレーズから浮かんだんですよね。メロじゃなくて歌詞のフレーズから。そこから作っていきました。だからレファレンスの曲もないですし、正直自分でどのジャンルの曲かも分かってないです。

 

ーーそういう意味では、聴いた人たちがどう捉えるかっていうのもある種楽しみというか、面白いところでもありますよね。でも、そういう作り方というのは、ご自身にとっては自然なものですか? それともイレギュラーな作り方ですか?

 

加納:そうですね。いろんな作り方をするので、こういうパターンもあるというか、特別珍しくはないですね。

 

ーー例えばこの曲って、リズムやメロディやコードを作って、ある程度アレンジも決めて、あとは、ギターパートは渡瀬さんに、ベースパートはKAZUYAさんにお任せみたいな感じだったんですか?

 

加納:ベースラインは、ほとんど私が打ち込んだやつです。

 

ーーなるほど。指定はしてたわけですね。

 

加納:でも、ちょっとニュアンスを変えたいなっていうところはKAZUYAさんにお任せしました。ギターは渡瀬さんに一回弾いてもらって、いいなと思ったものは残して。で、2人でスタジオ入って「ここはこうして欲しい」みたいなことを自分も伝えつつ、渡瀬さんのセンスでそれを咀嚼して弾いてくれたという感じでした。本当に一緒に作った感じです。

 

ーー今回は一部打ち込みがありますが“バンド・サウンド”ですが、今後打ち込みだけのエレポップが出てくる可能性はあるわけですか?

 

加納:どっちも好きなのでどっちもやりたいです。例えばアルバムを作るとしたら、必ずテクノっぽい曲も入れたいですし、逆に生楽器だけのバンド曲も。どっちもやりたいです。

 

ーーということは、今回の「第2章加納エミリ」は、「朝になれ」路線だけではなくて、これも一つの表現というか…。

 

加納:“一つの表現”って感じですね。

 

ーー「NEO・エレポップ・ガールとの決別宣言」ではないわけですね?

 

加納:最近は「NEO・エレポップ・ガール」という枕詞は使ってないんですよね。

 

ーーですよね。前回の取材ぐらいからそんな感じでしたよね。

 

加納:最初は名前を知ってもらうきっかけとして、一つのキャッチにはなるかなとは思ってたんですが、今はもうなくてもいいかなって思ってます。

 

ーー今回は「NEO・エレポップ・ガール」ではなく「ネオソウル」ですもんね。

 

加納:ネオソウルです(笑)。こちら側も楽しいですね。

 

 

取材・文
石川真男

加納エミリ 商品情報

〈配信シングル〉

配信シングル

「朝になれ」
約10ヶ月振りとなる新曲「朝になれ」が9/25にデジタルリリース
iTunes、Apple Music、Spotify等で配信中

 


〈7inchアナログレコード〉

アナログ版

「朝になれ」
価格:1,500円(税抜)
発売元:なりすレコード
品番:NRSP-794
発売日:2020年11月25日

収録曲
A面:朝になれ
B面:Because Of You (2020 MIX)

 

加納エミリ ライブ情報

フライヤー

 

EMIRI KANOU BIRTHDAY PARTY
日時:2021年2月17日(水)
場所:渋谷WWW
開場 18:30 / 開演 19:30
料金:¥3,500 (+1ドリンク別)
配信チケット料金 ¥2,500

Band Member
渡瀬賢吾(Gt) / KAZUYA(Ba) / Manaka(Dr) / Kanna(Syn)
※追加チケット、配信チケットの販売は後日発表

 

PROFILE

PROFILE
加納エミリ

1995年生まれ。北海道出身。2018年5月にデビュー。
19歳から楽曲制作を始め、作詞・作曲・編曲などを全て自らで手がける。80年代ニューウェイヴ・テクノ・インディーロックなどをルーツとした楽曲を完全セルフ・プロデュースで制作。2019年1stアルバム「GREENPOP」、2020年アルバムからのカットで12インチ・シングル「恋せよ乙女」をリリース。