Speak emo

2020.07.22
ごいちー

ごいちー|「今若い女の子が歌う渋谷系ってめちゃくちゃいいな」って思ったんですよね

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「アイドルのくせに」とか「アイドルはこうあるべきだ」とか言われるのがすごく嫌なんですよ

 

 

ーー続いて「正しい関係性」ですが、これも歌詞に抽象的な部分が多いように感じます。

 

ごいちー:フフフ。SAWAさんは「尖りすぎた曲を作っちゃいました」っておっしゃってて、「大丈夫かしら」みたいな感じだったんですよ(笑)。歌詞もそうですが曲調的にも。

 

ーーごいちーさん的にはどういうところが尖ってるように思いましたか?

 

ごいちー:イントロとか確かに「おお!」と思いました。歌が始まればSAWAさん節なので違和感はないんですけど…。あと、英語の歌詞が日本語に混ざってて面白いな、と。

 

ーー「Everytime I 進化する」ですもんね。ユニークですよね。これも全体的に表現者としてのスタンスを描いているようにも感じます。

 

ごいちー:そうですね。そういう気持ちで歌ってるかもしれないです。

 

ーー「自己犠牲の日々はやだ 感動を作りたい 使い捨てじゃ意味ないから 内側を見せてよ」という一節は、表現者と考えたら最初の3行はわかるんですが、最後は「内側を見せるよ」じゃなくて「見せてよ」になっています。これも不思議ですね。

 

ごいちー:私、結構オタクの方々と昔からネットで喧嘩したりとかしてて(笑)。最近はもうないんですけど(笑)。その関係性のことだと捉えています。アイドルが理由でできないことがあるのが嫌で一度アイドルを辞めたりもしてるので、「アイドルのくせに」とか「アイドルはこうあるべきだ」とか言われるのがすごく嫌なんですよ。この歌詞にはそういうものを感じますが、最後の1行はどうなんですかね。オタクの人と私、どちらにも言ってる感じですかね。自分と相手と。

 

ーーおぉ、なるほど。ここは捻りを効かせてるんだと思うんですが、おっしゃったように“送り手”と“受け手”の両方のことを言ってるのかもしれないですね。あるいは“受け手”に対して「表現したものをどう捉えたのよ?」っていうような、ある種の挑発とも取れるかもしれないですし。そういう意味では、例えば「進化」をしていって「最終形まで生まれ変わる」わけじゃないですか。そこで「初めまして 正しい関係性」というと、ごいちーさんご自身がソロという新たな表現のフェイズに入って、そこから完成されて「最終形」になると、そこに自分とオタクとの新しい関係性が生まれ、それが「正しい関係性」になる、と。つまり、今ソロとしての活動を本格的に始めたわけですが、それが正しい方向に向かうんじゃないか、というある種の“未来”あるいは“希望”を示している、とも捉えられるような気がします。

 

ごいちー:フレーズの最後の「貫け」とか「見せてよ」とか「言葉だけじゃわからないおしえて」とか、相手に向けての言葉ですけど、自分に向けてでもあると感じながら歌ってます。「潔さを死ぬ気で貫け」って自分に言い聞かせている感じというか。そういう気持ちで歌ってました。

 

ーーそうとも捉えられますね。コントラストという意味では、つのだゆみこさんが書かれてる詞はとても明快で、イメージが湧きやすいですよね。

 

ごいちー:物語っぽいですもんね。

 

ーーそれはある種、先ほどおっしゃいましたが、ごいちーさんにはなかったもので、それを演じる面白さがある、と。で、SAWAさんの場合はもっと抽象的で、言葉を断片的に繋いだような部分もあり、様々な解釈ができるように書かれていると思うんですが、そこにはごいちーさんの本音というか本質が潜んでいる、と。面白いですよね。SAWAさんの歌詞って、歌ってると色々変わってきますか? 解釈とかフィーリングとか。

 

ごいちー:歌う時の自分の気持ちで確かに変わるかもしれないですね。

 

ーーそれはご自身としては珍しい体験ですか?

 

ごいちー:どうだろう…? ステージで歌うとなると、感情を入れすぎちゃうとそれが出ちゃうので…。グループでアイドルやってる頃からなんですが、歌詞が良すぎて歌えなくなっちゃうこととかもあるので、ステージ上だとあまり中身のこと考えずに歌うんですよね。でも、練習してる時に歌詞の意味に気付いたりすることはあります。ステージ上だとあまりないですけど。

 

ーー歌手にもいろんなタイプの方がいて、曲に入り込みすぎない人とか、敢えて意味を考えない人もいたりします。確かに自分があまりに没入して、表現する側じゃなくなっちゃったらまずいですよね。そういう意味では、ごいちーさんの場合は、ステージに上がれば、あまり考えずに“流れ”に任せて、っていう感じですかね。

 

ごいちー:そうかもしれません。

 

ーー続いて「Shining Wonderland」。これがSAWAさん節全開という感じなんですが、ごいちーさんは領収書でなんでも切れるんですか???(笑)

 

ごいちー:私は切れないですけど、SAWAさんはたぶん(笑)。そこはほんとにSAWAさんらしいなと思うところです。SAWAさん自身が演者であり経営者なので。SAWAさんの曲で「業務提携」って曲があるじゃないですか。「御社」「弊社」とか歌う曲。そういうのに通じるSAWAさんの感覚だなとすごい思います。

 

ーーなるほど。この歌詞でひとつ気になるのが、「次の世代に 残したい景色は君の存在」ってあるじゃないですか。これはどう捉えていますか?

 

ごいちー:どうだろう…? 確かに、SAWAさんにちゃんと意味を訊いてみたくなりました。

 

ーー何かイメージはしてますか? それともここもあまり考えずに?

 

ごいちー:私はあまり…。ライブで既にやってるんですが、「君」っていう歌詞があるとだいたいオタクの方を指さしたりしていて…。ファンの方ってかなり入れ替わるので、そのくらいの気持ちで歌ってました。まぁ「世代」というほどではないですけど。

 

ーー「次の世代に 残したい景色は君の存在」というのは、ちょっと“DJ”の役割を示唆しているようにも思えます。良いものを掘っていって、それを次の世代に残すという、DJごいちーの“音楽を継承する作業”のことを歌ってるのかな、とも。

 

ごいちー:SAWAさんが書いてくださる歌詞を歌う時、いつもSAWAさんから私へのメッセージとして受け取ってるかもしれないですね。私から自分自身へのメッセージとして歌う時もありますし、SAWAさんから、SAWAさんが思う私へのメッセージ、みたいな感じで受け取る時もあります。そう考えると、確かにDJとしての自分のことなのかもしれないですね。

 

ーー「奪い奪われ 生き延びるの今日は 君のために」という一節ですが、とても明るい感じの曲調で、「Shining Wonderland」というタイトルもものすごいポジティブな響きじゃないですか。そうしたポップなトーンは維持されながらも、歌詞には生きづらい世界が描かれています。

 

ごいちー:表ではアイドルというかキラキラな感じで活動してるんですが、普段生きていると思うところがたくさんあって、そういうのをSAWAさんに結構相談したりしてるので、そういうのも感じ取っていただいているのかなって、この曲でも感じました。

 

ーー「奪い奪われる」というのは?

 

ごいちー:オタクを奪われたりとか?(笑) 推し変というのがあったりするので、SAWAさんにそういう話もしたなと思います。それだけのことを言ってるのではないとは思うんですが、そういうことに重ねたりしますね。

 

ーー生々しく言えばオタクを「奪い奪われ」ということでもあると思いますし、世の中のこと全般的にそうですよね。ある種の「マウントの取り合い」のような…。

 

ごいちー:何に関してもそうですね。確かに。

 

ーー続きまして「あなたにあげる」。これは笹川真生さんの作詞作曲です。cana÷bissでも書かれている方ですよね。

 

ごいちー:かなり書いていただいてます。「あなたにあげる」に関しては、最初にソロ曲として書いていただいた曲なんですが、この曲はcana÷bissでも歌った方がいいんじゃないかと運営が判断して、cana÷bissの方でも音源化されてます。『カルマ!カルマ!カルマ!』に収録されてますね。先にソロ用でいただいてたんですが、cana÷bissの方が先にリリースになりました。

 

ーーこれは、このミニアルバムの中でもちょっと異質な感じですよね。

 

ごいちー:かなり笹川真生さんワールドですね。

 

ーーバンドっぽさみたいなものが感じられます。この歌詞も難しいですね。

 

ごいちー:笹川真生さんの詞はほんとにいつも難しくて、cana÷bissの時にも感じるんですけど、難しくて闇があって、という感じですね。

 

ーーこの歌詞の「君」と「私」の関係性がどうも見出せないというか、色んな風に捉えられると感じていて。単純に男女の関係とも捉えられると思いますし、「君に貰った命」という一節から、もしかしたら親との関係?とか思ったり。まぁ、親を「君」とは言わないですけど、“自分を生み出してくれる人たち”を指しているのかな、とか。例えば制作陣とか、例えばファンの方々とか。でも正解は全然見えないですけど。

 

ごいちー:「君」はそうですね。“自分を生み出してくれる”という意味では、一番私たちを生かしてくれてるのはお客さんなので、そう捉えていますかね。笹川真生さんがそういう気持ちで書いてるかと言われると分からないですけど、歌詞をいただいた側としてはそういうふうに捉えています。

 

ーー具体的な説明はなかったわけですね。歌い手に委ねているというか…。それにしても、ごいちーさん、かつては「オタクと喧嘩してた」とおっしゃいましたが、結構オタクのことを考えてらっしゃいますね。

 

ごいちー:昔から結構好きですよ。オタクのことが。あまり口に出して言わないですけど。

 

ーーあんまり言わないんですね。

 

ごいちー:言わないです。あまり媚びを売りたくないというか。フフフ。あまり言わないですけど、大事な時には言いますね。生誕とか周年とか。「君たちあっての私たちだよ」ってほんとに思った時に言う感じです。私たちが歌う歌ってそういった方たちに向けての歌なので、そう解釈して歌うのが一番歌いやすいかなとは思います。

 

 

取材・文
石川真男

ごいちー イベント情報

7/24(金祝)「Shinig Wonderland RELEASE PARTY」

会場 GOLDEN PIGS RED STAGE
OPEN/START 17:00/18:00
料金 ¥3,000(別途ドリンク¥500)
※地域限定販売 限定50人 
出演 ごいちー/cana÷biss/オモテカホ/雷都少女

ごいちー 商品情報

 

ジャケット写真

ミニアルバム『Shining Wonderland』
レーベル:doles U(ディスクユニオン)
発売日:2020/7/22
品番:DOLU30
価格:税抜2,273円(税込2,500円)

≪収録曲≫
1.le Sagittaire (作詞 つのだゆみこ・作曲 クマロボ・編曲 クマロボ) 
2.限界リズム (作詞作曲編曲 SAWA) 
3.正しい関係性 (作詞作曲編曲 SAWA) 
4.Shining Wonderland (作詞作曲編曲 SAWA) 
5.あなたにあげる (作詞作曲編曲 笹川真生) 
6.シャララ (作詞 つのだゆみこ・作曲 クマロボ・編曲 クマロボ) 
7.上の空モード (作詞作曲編曲 SAWA) 

PROFILE

PROFILE
ごいちー

アイドルグループcana÷bissのDJ担当として活動する傍らソロDJの他モデルなど多岐に渡り活動中。

2019年12月にシングル「上の空モード/あなたにあげる」を発売。

2020年7月22日、待望のミニアルバム『Shining Wonderland』リリース。