Speak emo

2019.12.16
NaNoMoRaL

これは正面からやっていこうとする挑戦的なものかもしれないですね

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「ここが大きい方がもうちょっと泣けると思いますよ」って(未來)

 

──ミニアルバム『a zen bou zen』についてお伺いいたします。ジャケットは前作同様すごくシンプルで、情報量も少ないです。

 

パセリちゃん:前作と比べると、今回は色がつきました。僕の気持ちの変化が大きいかなと思います。

 

──気持ちに“色”がついたと。

 

パセリちゃん:以前は、どこか“孤立した人間の歌”という感じだったんですが、未來さんの人柄を見ると、なんかそれでは良くないなと思って。さっきの歌い方の話にも近いものがあるんですが、今まではステージ上で止まっていたものが人に向けるようになった、というのは良かったと思っていて…。そこには色ぐらいついていた方がいいでしょう、という気持ちですかね。今回シンプルにしようとは思っていたんですが、前作みたいな「真っ白に」っていう気持ちにはもうならなかったというのが大きいですね。

 

──ワンマンライブの時にも思ったんですが、あそこってステージが高いじゃないですか。でも、なんかちょっと地続きな感じはしたんですよね。それまでは“白”というか、おそらく“孤立している”イメージでやられたと思うんですが、ちょっと血が通ってきたというか、「歌を届ける」「オーディエンスと通じ合う」というか…。

 

パセリちゃん:あぁ、そうですね。それがつまり「色がついてきた」ということです。

 

──未來さんは、そういう意識で歌ってますか?

 

未來:色がついた、という?

 

──「歌を届ける」とか「オーディエンスと通じ合う」というか。まぁ、CDの場合なら「リスナーと」になりますが。

 

未來:どうだろう…?私は変わらずにやっていると思います。

 

パセリちゃん:昔からそうだと思う。

 

未來:でも、多分届くようになったんですよ。自分は届けるつもりでやっていたんですけど、もしかしたら“つもり”で終わっちゃっていたかもしれません。今はそれが“つもり”ではなくなってきたんだと思います。

 

──で、今回も盤を外すと「an escape」とあります。

 

パセリちゃん:逃げ道。生きていると嫌なことがいっぱいあると思いますが、こんなものが逃げ道にでもなってくれるといいなという思いです。だから、CDの盤にも、ジャケットもそうなのですけど、丸の下に白いラインが入っているじゃないですか。これが逃げ道です。盤の取ったところにもそのラインが入っているんですよ。逃げ道を表現してみました。

 

──NaNoMoRaLの音楽がある種の逃げ道になる、と。

 

パセリちゃん:言い訳にでもしてくださいという感じですかね。救いになればいいなって。

 

──なるほど。「escape」っていうと「逃げる」ですが、「(危険などから)逃れる」「(捕われている状況から)脱出する」というニュアンスがありますので、「救い」になるという感じもありますよね。

 

パセリちゃん:そういう意味での逃げ道ですかね。

 

──ジャケットには「色がついた」とおっしゃいましたが、サウンドを聞くと逆にシンプルになっていますよね。キーボード類や電子音が少なくなりました。

 

パセリちゃん:減りましたね。

 

──基本的にはバンドサウンドじゃないですか。例えば、この作品をバンドで再現したい、とか思ったりしますか?

 

パセリちゃん:あんまりないですね。

 

未來:思ったことない。

 

パセリちゃん:思ったとしてもやりたくないというか…。

 

──やりたくない、ですか。普通の流れだと、アイドルがステップアップしていくと、「次はバンドセットで」みたいなのがよくあるパターンじゃないですか。

 

パセリちゃん:でも、それでずっとライブをやって来てないから、というのが”やりたくない理由”ですかね。例えば「バンドでやります」ってなって、そこから毎回のライブをバンドセットでやって、それで切磋琢磨して作り上げて来たものをバンって出す、っていうのはアリですけど、ずっと2人でやってきているのに、大事な日に違うことをやってもしょうがないかな、って思うんですよね。CDも、一番ベストな形で出せるものとして出しているっていう感覚です。バンドやりたい、やりたくないというより、音源をリリースする一番良い手段がこれって感じですね。

 

──あぁ、そういうふうに聞くと、本当に真っ当な考えというか、とても納得します。

 

パセリちゃん:バンドでやることによって良い方向に行く人たちもいると思いますが、僕らはそうならないと思っています。

 

──では、「敢えてバンドっぽいサウンドにした」といういう感じではないんですね。

 

パセリちゃん:どうだろう。一番曲がわかりやすく伝わる方法かなと思ったのが大きいですね。そういう意味では「敢えて」なのかもしれないです。ギターも全部打ち込みなんですが、電子音が減ったのは、単純にギターの打ち込みの技術が上がったからかもしれないです。ごまかさなくて済むようになったというか…。以前はもっと打ち込みっぽかったので…。その技術がなければ電子音でごまかしていたと思います。形にすることが目的なので、形にならないんだったら電子音を被せてでもなんとか成立させていたと思いますが、技術でなんとか補えるようになったんじゃないかなと。

 

──そういう意味では、理想とするサウンドに近づいてきたということですか?

 

パセリちゃん:前よりはそうですね。

 

──伝えるためには、シンプルにコードを鳴らして、ビートを刻んで、未來さんと2人で歌ってというのが一番最善の方法だということ?

 

パセリちゃん:ヴォーカルが違和感なくオケになじんでいる、というのを作れるかどうかというのが一番重要なことで、打ち込みっぽさをあまり出さなくてもできるようになったというか…。それは多分、歌の面も大きいと思います。歌もごまかすことができるじゃないですか。

 

──その必要がなくなってきた、と。

 

パセリちゃん:だと思います。シンプルにやっても全然大丈夫になってきた、と。

 

──それはすなわち、歌自体にいろんな色が出てきたということですか?

 

パセリちゃん:そうです。生楽器が一個増えたような感じ。わざわざ被せなくてよくなりましたね。

 

──未來さん、そういうふうに言われてどうですか?

 

未來:私?

 

──はい。サウンドが変わったというのを感じて歌っていましたか?

 

未來:わかんなかった(笑)。わかんなかったんですよね。減ったとか気づかなかったです。

 

──あ…。「気づかなかった」って書いていいですか?(笑)

 

未來:全然大丈夫です(笑)。私、音楽詳しくないので。

 

パセリちゃん:何も知らずに。

 

未來:そう。ただ、毎回いい曲だなと思って(笑)。

 

──いいですね。その素朴さがいいです(笑)。

 

パセリちゃん:いや、でも、本当に良いか悪いかなんで、未來さんは。それでいいと思うんですよね。僕も最終的な判断基準は良いか悪いかだけ。今でも「これではごまかせないな」と思ったらシンセを被せますし。

 

未來:でも、たまに言いますね。カラオケの音源だけ聴いて一人で練習するんですけど、なんだろう…。

 

パセリちゃん:一個言われた。「ここのこの音はもうちょっと大きい方がいいんじゃないですか?」って。

 

未來:そう、意外とやるんです。

 

──注文つけるわけですね。

 

未來:「ここが大きい方がもうちょっと泣けると思いますよ」って。

 

パセリちゃん:音に関してはその一回だけですかね。

 

未來:なんか作っている人にそんな言っても失礼じゃないですか(笑)。

 

パセリちゃん:いや、ありがたいです。

 

──どんどん言った方がいいですよ(笑)。未來さんが歌うものとして作られた曲ですから。自分の気に入らないところはどんどん言った方がいいです!

 

パセリちゃん:いや、それを言われた時、ほんと痛いところを突かれたと思って…。

 

──ちなみに、もし差し支えなければ、それはどこですか?

 

パセリちゃん:「げろれろる」の「僕にとっても」という歌詞の部分があるんですが、その裏で鳴っているちょっと上の音というか、ちょっとキンキンな音、ベルみたいな音なんですが…。いや、そうなんですよ。そこはやむを得ず入れたところだったので。その時「いや、そうなんだよね」って言ったでしょ?

 

未來:はい。

 

パセリちゃん:「そこ、もうちょっと音を出した方がいいんじゃないですか?」って言われた時に「いや、本当にそうなんだよ」って。

 

未來:「じゃあ、やってください」って(笑)。

 

パセリちゃん:「ただヴォーカルと被るから、そこ出せないんだよ」という話になって…。僕はやむを得ず妥協点を取ったので、「くそー」と思って(笑)。

 

──すごいですね。

 

未來:意外と。たまたま。

 

──プロデューサーが思い悩んでいたところを、言い当てたわけですね。

 

未來:そう。当てちゃいました。

 

パセリちゃん:だから、「僕の技術では変えられないんだよ。CDではどっちを取るかで、ヴォーカルを取ったもんだから」という話をしました。

 

未來:今の書いてくださいね!

 

──書きます(笑)。

 

未來:やった!やった!

 

パセリちゃん:ワンマンではその音を出したんです。

 

未來:出してくれました。

 

──すごいですね。プロデュースに未來さんの名前を入れた方がいいですね(笑)。

 

パセリちゃん:アハハハ。

 

未來:うれしい(笑)。

 

パセリちゃん:たまにそういう鋭いことを言ってくるので、ありがたいです。

 

──先ほど「伝えるのに一番良い形」というのが「ギターを中心としたバンドサウンド」とおっしゃいましたが、前回取材した時には「もっと尖ったもの、過激なものをやりたい」とおっしゃっていました。「〈人間やるのやめた〉とかかなり激しいじゃないですか」って言ったら、「いや、もっと」と。今作を聴いた時には、ちょっとその方向とは違うなと感じました。

 

パセリちゃん:そうですね。考え方が変わったんじゃないですか(笑)。

 

未來:そうですね(笑)。

 

──「伝える」という意味では、ものすごくキャッチーな曲が満載のように感じます。どの曲もCM曲とか主題歌狙えるんじゃないか、みたいな。

 

未來:狙おう!

 

──もしかして狙ったんじゃないですか???

 

パセリちゃん:いや、狙ってないです。

 

──ないですか。

 

パセリちゃん:狙ってないですけど、結局やっていることが“ポップス”だと思っているので、尖ったものに関しても、それをいかにポップスに落とし込むか、という話だと思いますね。J-POPを作ろうとしたら、そうなったという感じです。

 

取材・文
石川真男

 

 

NaNoMoRaL ライブ情報

雨宮未來主催ライブ
『 にこにこどーなつ vol.02 』
■日程:2019年12月26日(木)
■時間:OPEN 18:30(予定) START 19:00
■場所:西永福JAM
■料金:前売2000円 当日2500円 別途1D
■出演:NaNoMoRaL / 爆裂女子 / NECRONOMIDOL / SOZELICA

 

 

NaNoMoRaL 商品情報

ミニアルバム『a zen bou zen』

a zen bou zen

2019年11月11日に渋谷WWWでのワンマンライブを控えた男女ユニットの待望の2nd miniAlbum。 1st miniAlbum nisan ka tansoのテーマ「吐き出す」に加え「逃げ道」を新たにに掲げた全7曲。 NaNoMoRaLは不幸せの裏側にある幸せを歌う。

[収録曲]
コンテニ
エンドレスでした
げろれろる
唖然呆然
春になる
ルミネイション
とうみん

2019年11月20日発売
2000円(税込)

 

 

 

 

NaNoMoRaL PROFILE

雨宮未來
twitter @amamiya_miku

梶原パセリちゃん
twitter @K_PaseliChan

公式サイト: https://www.nanomoral.com/

公式Twitter: https://twitter.com/NaNoMoRaL_info

 

 

PROFILE

PROFILE
NaNoMoRaL

2018年03月に雨宮未來のソロユニットとして結成、ライブデビュー。ソロなのにユニットという特殊な編成で雨宮と梶原の男女Vocalがアイドル業界内で異彩を放っており、活動当初はアイドルイベントへの出演がほとんどであったが、現在ではバンドライブへの出演も多く、ライブデビューから2年で約300本のライブを行った。2019年10月には京都の音楽フェス『ボロフェスタ2019』に出演。その勢いのまま同年11月に渋谷WWWにてワンマンライブを開催。
2020年08月には浅草花やしき花劇場、12月には恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブを開催予定。

 

雨宮未來
twitter @amamiya_miku

梶原パセリちゃん
twitter @K_PaseliChan

公式サイト: https://www.nanomoral.com/

公式Twitter: https://twitter.com/NaNoMoRaL_info