FEATURE

2024.04.22

囁揺的音楽集団AsMR

「Mashup LIVE -異彩SHOWDOWN-Vol.14 streaming by GALPO LIVE SHOW」囁揺的音楽集団AsMR編

神の鉄槌にも似た、囁揺的音楽集団AsMRの奏でる荘厳シンフォニック/ノイズ&カオスな演奏と嘆く歌声が、この場を浸食してゆく‥。

　Mellowsの2人のギタリスト、GINAとSally。それぞれが異なるギターメーカーのオフィシャルアーティストとなり、特注のギターを制作。２人揃って同じ日にライブでお披露目をすることから、その様を目にしようとライブ会場に足を運んだ。その日が、2月26日(月)に渋谷REXで行われたイベント「Mashup LIVE -異彩SHOWDOWN-Vol.14 streaming by GALPO LIVE SHOW」になる。
この日は、exist†trace/囁揺的音楽集団AsMRも出演。ここでは、囁揺的音楽集団AsMRのライブの模様をお届けしたい。

囁揺的音楽集団AsMR

　舞台の上から響き渡るのは、人の心を妖しく惑わすローレライの歌声??その声に合わせて、Ayakaが物語を語りだす。楽曲は次第に唸りをあげ、モンスターの咆哮のようなカオスな音を響かせる。囁揺的音楽集団AsMRのライブの冒頭を飾ったのが、『ドラゴニア』。これから始まる壮絶な物語を語るに相応しい、とても荘厳かつスペクタクルな幕開けだ。何かが起きる、何かが変わる、何かを変える。この世界を一変するような、神の鉄槌にも似た荘厳シンフォニック/ノイズ&カオスな演奏とMilliの嘆く歌声が、この場を浸食してゆく‥。

　emyu:のヴァイオリンの音色とMilliのピアノの音、そしてGINAとAyakaの奈落へと落とす重厚な音が絡み合う。囁揺的音楽集団AsMRは『艶麗戦歌』を通して、心の内側からフツフツと沸き立つ感情を、言葉と音の礫に変えて投げつける。Ayakaのウィスパーな語りも、嘆き狂う音のシンフォニーへ妖しいスパイスを与えてゆく。GINAのノイジーなギターが聞き手の感情へ痛い爪を立てる。Milliが鍵盤を叩き付ける音が鼓動とシンクロし、気持ちを騒がせる。ノイズのような音が、この空間の中で荒ぶるように騒ぎ続けていた。

　Ayakaの、今にも消え入りそうな優しい語りへ、演奏陣の作り出すASMRな音がそっと寄り添い続ける。「サヨナラヒカリ　オカエリナミダ」。Ayakaの語りが終わるのを合図に，楽曲は儚い美しさへ，次第に黒く歪んだ音を重ねだす。言葉のひと言ひと言を、胸の内から引き出すように歌うMilli。囁揺的音楽集団AsMRは『トレモロ』を通し、振幅激しい嘆きの交狂曲を奏でていた。演奏をする一人一人の音が強い存在感を放ちながらも、乱れ狂うMilliの哀切な歌声へ寄り添い、嘆きのシンフォニアと言うべき世界を作りあげていた。祈りにも似たMilliの歌声が耳から離れない。

　もの悲しいエレピの音色に乗せ、Ayakaがメンバー一人一人を紹介。そして‥。闇をつんざくようなGINAのノイズギターと躍動したエレクトロなダンスビートが重なりあう。囁揺的音楽集団AsMRは、この場へ原始の宴の様を描きだすようにヘヴィダンスロック曲の『PARADOX』を奏で、観客たちの身体を揺らせば、突き上げる拳の景色を描きだす。GINAが、emyu:が、Ayakaが、そしてMilliが、みずから手にした楽器の上で指を躍らせ、弾け飛ぶ音色の数々を創りだす。攻めるように、相手を狩るような攻撃的な歌声を突きつけるMilli。理性の螺子が次々と壊れ、さらに気持ちが騒ぎだす。

　囁揺的音楽集団AsMRは攻撃の手を緩めることはない。この場にいる人たちをさらに熱狂の虜にしようと、4人は荒ぶる感情を音や声へ投影しながら『雷命INFESTER』を歌い奏でていた。滾る、滾る、身体を大きく揺らし、声を張りあげずにいれない。凄まじく濃密な音の嵐を全身に感じながら、大勢の人たちが、まるで司祭の導く儀式へかしずくように、全力で拳を振り上げ、声を荒らげていた。

　最後に囁揺的音楽集団AsMRは、この場にいる人たちへ轟音を推進力に羽ばたく翼を授け、観客たちを異世界へと連れ出した。『Saturated World』、今にも暴発しそうな凄まじい熱を蓄えた楽曲だ。この場にいる大勢の人たちが、『Saturated World』の演奏に合わせて背中の両翼を広げ、囁揺的音楽集団AsMRと共に熱狂の世界へ向けて羽ばたきだした。その先の世界が呼んでいるのは希望や光?それとも嘆きや絶望??その答えを知りたくて、大勢の人たちが翼変わりに拳を突き上げ、4人と共に、その先へ向かって飛び続けていった。

LIVE

PHOTO:鶴田健吾
TEXT:長澤智典