FEATURE

2023.11.28
椎名ひかり

笑顔で暴れ狂う光景がここには広がっていた。人が本当に狂ったときは無邪気な笑顔になる。それが魔壊神・椎名ひかりのライブ。 椎名ひかり「降誕祭2023【Umbilical cord ~掻喰~】」公演レポート!!

 最近は、バンド"KILLT MELT LAND"のメンバーとしても活動中。P-SAMA/ぴ様こと、椎名ひかり。彼女が、11月24日(金)に渋谷DIVEでワンマン公演「降誕祭2023【Umbilical cord ~掻喰~】」を行った。この日は、高嶺ヒナがデザインした装備(衣装)を着て登場。当日の模様を、ここにお伝えしたい。

 


 喧騒の中で響き渡る赤ん坊の鳴き声のSEが、降誕祭らしい。舞台背景には、生まれたばかりの赤子をあやす映像が映し出される。流れだした「HAPPY BIRTH DAY」の音楽が、次第に歪みだす。その音は、どんどんノイズ混じりの濁った音に‥。淀んだその音は、魔界に生まれた椎名ひかりの産声のよう。
  凄まじい絶叫の声とグロウルを合図に、ラウド/スクリーモ/エクストリームな楽曲が轟きだした。『Digパ』に乗せ、絶叫し続ける椎名ひかり。闇に降臨した彼女の姿は、いかがわしくも神々しい。絶叫し続けるその様はまさに、魔界に君臨する狂った女神そのものだ。

 

  ノイズ混じりの音。ふたたびカオスな音を上げて爆走したPay money To my PainのメンバーでLisa、The Ravens、HydeでもおなじみのギタリストPablo作曲の『hate!hate!hate!』に乗せ、椎名ひかりはお立ち台の上から張り裂けんばかりの声を上げ続ける。その様に、観客たちも理性を狂わせるか、圧倒されるがままに視線を張り付けてゆく。絶叫の風が、観客たちの頭や感情を大きく揺らしだす。

 

  『土下座ロード 第一章』が流れたとたん、フロア中の人たちがヘドバンに興じる。モニターに左足を乗せ、椎名ひかりは身体を前のめりに絶叫と歌声の洗礼を浴びせる。さぁ、もっともっと狂ってしまいなさい。今宵の儀式も、ここにいる人々をまともな現実に止めておくわけがないのだから。フロア中から上がる絶叫が、それを示していた。椎名ひかりと観客たちが共に身体を大きく土下座する(折り畳む)様も、魔界らしい光景だ。

 猛々しい音を撒き散らしながら楽曲が駆け出した。椎名ひかりは『魔界のI LOVE YOU』を通し、この空間へ、さらに狂喜乱舞した景色を作りあげる。お立ち台の上から雄々しい姿で観客たちを煽る椎名ひかり。フロアでは数多くの人たちが身体を大きく揺さぶり、ざんばらと頭を振り乱し、熱狂に身を落としていた。狂え、狂え、その狂気を帯びた歌声に乗せて、観客たちよもっと狂ってしまえ!! 

 

 「やっと会えたね」の言葉がアリガタキ。ライブの始まりと同時に魔界に染め上がったこの世界で、椎名ひかりは「その血の気の多さを存分に発揮してください」と叫んでいた。

 

3

 

  『魔界女子☆恋モード』で観客たちは、これまで以上に激しく身体を揺らし、腕を振り上げ、椎名ひかりに愛しい思いをぶつけ続けていた。彼女自身も、クリーンな歌声とグロウルを巧みに使い分け、この場を楽しい宴の場へ染め上げる。さぁ、気持ちが弾むなら、爆裂した演奏と狂気じみた可憐な歌声に乗せて踊り騒げばいい。両手を大きく振りながら、その場で身体を揺らし、跳ね続けるだけで幸せになれる。間奏では、フロアで逆ダイの嵐が巻き起こる。今どき、この手の熱い光景を見ることがないだけに、とても新鮮だ。やはり魔界は、現実とは違って最凶に狂っている。その狂った楽しさに浮かれ騒ぐ気持ち、ここにいたらすごくわかる。そう、もう冷静でなどいれないんだよ。

 

 重厚な音が炸裂した『魔界行進曲』の演奏と椎名ひかりの華憐な歌声に乗せ、フロア中の人たちが土下座し続ければ、右手を大きく突き上げ、その場で飛び跳ねる。フロア中の人たちが一斉に身体を力強く折り畳む波打つ景色も、とても華やかだ。間奏以降は、椎名ひかりもフロアへダイブしそうな勢いで、観客たちと高ぶる感情と感情をぶつけあっていた。

 

 超キュートでサイコな刺激を持って飛びだしたのが、『バババーババウムクーヘン』。可愛い衝撃ならぬ,、可愛いく狂撃した楽曲の上で、椎名ひかりが血なま臭くもキュートな歌声を次々と撃ち放つ。巧みにグロウルも加え、可愛い狂気の宴を催し、この場にいる人たちを熱狂で蒸していった。甘い狂乱は最高に美味じゃないか!!

 

  「ここにいる全員で神に祈りを捧げられますか!!本気でかかってこいよ!!」。KISAKIが椎名ひかりに与えた、Phantasmagoriaのカバー曲『神歌』の登場だ。演奏にあわせてフロア中から飛び交う「ぴかりん!!」の絶叫。誰もが舞台へ降臨した魔壊神(椎名ひかり)に向かって、思いと祈りを捧げる。これは儀式だ。激しく身体を折り畳み、「神々の~下々の」の言葉にあわせて心を乱れ狂わせ、我を忘れて激しく祈りを捧げる、最凶で最狂で最高の儀式だ。「ぴ様に祈りを」の声も嬉しい。我を忘れて祈りを捧げ続けるこの瞬間に感じる興奮と高揚が、本当にたまらない。何度も何度も繰り返される神との戯れ、ずっとずっと続いてほしい。

 

  「こんな人間界に生まれちゃったみなさん、幸せですか?」。飛び出したのが、キュートでポップな『確認事項:しあわせとかについて』。フロアからは、椎名ひかりに向けて「お前が一番」の声も飛び交う。甘ロリな姿も、彼女を形成する一場面‥と書きつつも、途中から激烈で黒い表情に染め上げるところも、魔界のお茶目な姫らしさ。甘く、愛らしい椎名ひかりに向かって、この曲では大勢の野郎どもが「お前が一番」と叫び続けていた。終盤に生まれたバーストした光景も、破壊衝動という風が吹きすさぶ魔界らしい。これこそが、魔界に落ちている幸せなのかも知れない。

 MCでは、今の心境をスマホに記した手紙を読む形で届けていた。好きなことをズーッと発信し続けてきた、椎名ひかり。何があっても自分の意志を貫いてきたことで、今の自分を世の中が認めだしたこと。好きなことをこれからもずっと貫く意志を、ここでは伝えていた。

 

 この空間を統一するように、椎名ひかりがぶつけたのが『愛=哀ヲクダサイ』。「愛を愛を愛を愛を愛を 愛をください」と歌う声を受け、フロア中の人たちが熱いクラップをしながら、舞台の上の椎名ひかりに向かって愛しき思いを捧げ続ける。少し甘めの声で彼女は、心の叫びを、熱情した歌の風に乗せてフロア中に届けてきた。その愛を、大勢の人たちが大きく手を広げて受け止める。椎名ひかりが降りそそぐ愛が、とても温かく胸に中へ注ぎ込まれる。でも、もっともっと愛がほしいと思う気持ちは贅沢だろうか?!

 

   重厚な音がフロア中に響き渡る。飛びだした『MITSU TO BATSU』の演奏にあわせて椎名ひかりが腕を振り上げれば、フロア中の人たちも腕を振り上げ、熱情した声をぶつけだす。椎名ひかりは、とても感情的な歌声を届けていた。その愛しき歌声の熱をつかみ取りたくて、大勢の人たちが舞台に向かって手を伸ばす。互いに思いを求めあい、分かち合う。そのひとときが、本当にアリガタキ幸せだ。

 

  荘厳でシンフォニックな音が場内中を包み込む。ドラムカウントと椎名ひかりのスクリームを合図に、『キミガノゾムナラ』が飛び出した。椎名ひかりの「君が望むなら」と、哀切さを持って胸に響く声が、胸を痛く刺激する。心のままに歌い叫ぶ椎名ひかり自身の感情的な心の叫びが、触れた一人一人の心を痛く揺さぶる。間奏での狂気に満ちた黒い宴の様。この曲で彼女が伝えた思いや心の声が、ずっとずっと胸の中で黒く切なく渦巻いていた。何があっても、絶対に椎名ひかりの側へ寄り添い、ずっと愛し続けたい。

 

3

 

 ダークファンタジックで刹那ロマンチックな音色の始まり。やがて楽曲は、深く痛い音を渦巻かせ、奈落へ向かって駆けだした。『盲愛症候群』では、観客たちがヘドバンをしながら、舞台の上から降りそそぐ痛い思いを受け止め、この空間中へ撒き散らしていた。椎名ひかり自身も、感情の奥底にある心模様を、この曲を通して次々と吐き出す。ときに嘆くように歌う様も含め、その姿や歌声、叫びをずっとつかみ取り、ギュッと胸の奥で抱きしめて痛い‥いたい。

 

   狂気を帯びたソリッドな音が唸りを上げて暴走しだす。ミオヤマザキのサウンドプロデュース曲の『模範解答少女』に乗せ、フロア中の人たちが頭を振り乱し、手バンをしながら、狂気渦巻く魔界の楽園の中で暴れ騒ぐ。鮮やかに狂い咲いたこの痛い景色こそが、快楽だ。黒い言葉の弾丸を、歌声に乗せて次々と撃ち続ける椎名ひかり。歌詞に綴られたひと言ひと言が理性をぶっ壊し、観客たちを狂気と狂乱の民に染め上げる。落ちサビで囁くように歌う椎名ひかりに向け、フロア中の人たちが思いと伸ばした手を捧げる。その後に生まれた手バンの景色。さぁ強欲をむさぼる民たちよ、もっともっと狂ってしまいなさい。

 

 『土下座ロード 第二章』では、椎名ひかりと観客たちが手でピースサインを作りながら、右へ左にモッシュしてゆく。彼女の熱情した歌声をつかもうと、大勢の人たちが大きく手を伸ばし、その場で跳ね続けていた。気持ちが求めるなら、思うがままに飛び跳ね続ければいい。その感情こそが、ここで人生を楽しむうえでの正解なのだから。ずっとずっと飛び跳ね続けるその景色、とても鮮やかだ。

 

  MCでは、2024年もKILLT MELT LANDと平行し、ソロ活動も積極的に行っていくことを伝えていた。


     
  ライブも終盤戦へ。重厚かつ破壊力満載の音が炸裂。でも、歌が始まったとたんに甘くメロディアスな表情を描き出す。サビ歌ではポップでアゲアゲな様を見せながらも、それ以外は狂い騒ぐ様を導き続けるのが『魔界狂操曲』。途中には、観客たちがスクワットを行う様も誕生。後半にはダンスロックに変貌するなど、1曲の中で頭を掻き乱す狂気とチャーミングな世界を椎名ひかりは描きだしていった。

 

 『魔界心中』では、椎名ひかりと観客たちが腕を振り上げて一つになる。この曲でも、硬軟巧みに曲の表情を塗りかえ、狂わせたり、一緒にはしゃいだりと、気持ちを忙しくさせながら、椎名ひかりだからこその宴の中へグイグイと引きずり込み、共に笑顔ではしゃぎ、戯れ続けていた。お立ち台の上で歌いあげる椎名ひかりへ向け、たくさんの手が伸びる様も、素敵な光景だ。

 

  さぁ、ここからもっともっと暴れ尽くせと言わんばかりに、椎名ひかりはデスボを繰り出し、『下僕 GEBO GEBO!!』を熱唱。甘い表情と攻める様を巧みに織りまぜつつ。でも、ずっと気持ちを明るく解き放つ曲調を魅力にしながら、彼女は、この空間をヘドバンに狂喜乱舞する様へと染め上げていった。 明るく開放的なのに、意識を奪い去るくらいに激しく攻める。まるで笑顔で暴れ狂う光景が、ここには広がっていた。人が本当に狂ったときは、無邪気な笑顔になる。そう、この曲の。いや、このブロックのときのように。

 

  「ラストの曲です」の声に、フロアから飛び交う「今きたばっかり」の嘘の声。椎名ひかりは最後に大森靖子のセルフカバーアルバムでもお馴染みの『°*。:° (*'∀`*) °:。*ぴかりんFUTURE °*。:° (*'∀`*) °:。*』を歌い、この場にいる人たちを満面の笑顔に染め上げ、気持ちを騒がせる華やかな祭りビートに乗せ、フロア中の人たちの心を無邪気な少年少女に塗り変えていった。楽しい、この場には、ただただ楽しい気持ちだけが駆けめぐっていた。だからみんな椎名ひかりと一緒にクラップをし、突き上げた腕を左右に大きく振りながら、彼女と一緒に(心の中で)シンガロングしていた。共に振りを交わしながら、まるで童心に帰った気持ちで戯れあう。それって最高に楽しい行為じゃない!!本当に、アリガタキ気持ちだ。

2


  先にMVを上映した新曲の『ピカニバリズム』を、2人の魔界ダンサーズを従えて歌唱。この曲は椎名ひかり流のマジカルでファンタジックな、プチ血塗られたパーティーチューン。ハロウィンの時期が似合いそうな楽曲であり、「おジャ魔女どれみ~魔界版~」があったら、テーマ曲としても絶対に似合いそう。魔界に迷い込んだら、こんなにも楽しい狂気?と恐怖?の宴が繰り広げられる。この曲を崇めながら、ずっとずっと気持ちがはしゃぎ続けていた。曲が進むにつれ可愛いさと高揚感が増してゆくのも楽しい。椎名ひかりが言っていたように、まさにサイコディナーパーティーソングだ。

 

  「リア充はみんな」「死ね」の言葉を交わし、歌ったのが『リアルリア充(仮)』。とてもメルヘンでチャーミングかつファンタジックな、どこか電波ソングのような楽しい楽曲だ。サビではフロアに巨大なサークルが生まれ、みんな笑顔でくるくると周り続ける。この曲では、アイドル椎名ひかりの魅力を投影。みんなが無邪気な童心に戻り、手にしたペンライトをくるくる振り回しながら、大勢で巨大なサークルを描き続ければ、落ちサビでは、みんなが椎名ひかりの元へ駆け寄り、ケチャする場面も登場。ずっとずっと胸がわちゃわちゃとはしゃぎ続ける、この時間が本当に最高でアリガタキだ。

 

  「共に朽ち果てましょう」。最後の最後に、椎名ひかりは『ドゲザナイ~お前をひざまづかせてやろうか~』をバンドと魔界ダンサーズのみんなと一緒に歌唱。超重厚な音にあわせ、魔界ダンサーズとフロア中の人たちが思いきり前かがみに土下座する。サビ歌で大きく手の華を咲かせつつ、間奏では力の限り土下座し続ける。椎名ひかりも、 厚底のブーツを脱ぎ、フロアに降りて、亀たちの甲羅乾しのように並んだ観客たちの背中の上を次々と渡りだす。途中からフロアの真ん中で、観客たちに固まれて熱唱。椎名ひかりに向ってみんなで土下座する景色が最高に胸を熱くする。この狂った様こそが魔界の宴。椎名ひかりだからこそ作りあげられる土下座@ワールドだ。

 

1

 

 とち狂ったこの楽しさ、また早く味わいたい。

 


TEXT:長澤智典


椎名ひかり「ピカニバリズム」Official MV
https://www.youtube.com/watch?v=EY0DxZsX76A


セットリスト
『Digパ』
『hate!hate!hate!』
『土下座ロード 第一章』
『魔界のI LOVE YOU』
『魔界女子☆恋モード』
『魔界行進曲』
『バババーババウムクーヘン』
『神歌』
『確認事項:しあわせとかについて』
『愛=哀ヲクダサイ』
『MITSU TO BATSU』
『キミガノゾムナラ』
『盲愛症候群』
『模範解答少女』
『土下座ロード 第二章』
『魔界狂操曲』
『魔界心中』
『下僕 GEBO GEBO!!』
『°*。:° (*'∀`*) °:。*ぴかりんFUTURE °*。:° (*'∀`*) °:。*』
-ENCORE-
『ピカニバリズム』
『リアルリア充(仮)』
『ドゲザナイ~お前をひざまづかせてやろうか~』


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椎名ひかり 
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