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2022.06.22
水花

彼女たちは、「世界はまだ私たちに適応してくれない」と歌っていた。でも、ここにいる人たちは。配信を通して見ていた人たちは、間違いなく水花の世界に適応し、共に歩調を合わせながら、未来へ向かって歩いていた。 水花ワンマン公演レポート。

 『多面的個性の集結』、完全セルフプロデュースのガールズユニットとして活動中の水花。彼女たちが6月19日(日)に青山月見ル君想フを舞台に2ndワンマン公演「水花2ndワンマンライブ『第二章・夜明ノ花』」を行った。

 1stワンマン公演と同じ会場を、選択。そこには、水花お披露目前の準備期間中にメンバーとして活動予定だった九重りつが事故に巻き込まれ、他界。九重りつの本名に月が含まれていることや、「月はその者にまつわる象徴であること」から、彼女の意志も受け継ぐようにと、月見ル君想フを今回もワンマン公演の場に選んでいる。この日は、新衣装のお披露目や新曲の発表。さらに、4カ月連続主催公演の開催なども告げられた。


 背景に巨大な月が輝く舞台の上へ、訪れた人たちを熱く煽るようにメンバーらが姿を現した。彼女たちは、「この場所から また始めよう」という思いを詰め込んだ『DAYBREAK』を冒頭に歌唱。「どこまでも突き抜けろ明日へ」と凛々しく歌う声が、胸を熱く貫いた。激しく躍動する楽曲に3人も沸き立つ思いを重ね合わせ、ここから新たな物語の扉を開けようと高らかに声を上げてゆく。メンバーみんな笑顔だ。ここに立って、自分たちが生きている証を届けることを素直に楽しんでいる。さぁ、ここからキミらと一緒に、素敵な物語を描きだそうか。
 続く『Precious Days』は、互いに異なる色を持つメンバーたちの運命の出会いも示唆した、胸に心地好いポップチューン。凛々しく攻めた姿も気持ちを熱くさせるが、親しみを持ったポップな歌も心を嬉しくとろけさせる。メンバーらも、異なる3人の色を重ね合うことで輝きを生み出せることを、この曲でも楽しんでいた。ライブは、触れた人の心を解き放ち、笑顔にしてゆく場。その笑顔が生まれるのも、演者たちが舞台の上から楽しさを降り注いでいるからだ。この日の水花のように…。青春模様満載の歌からも、いろんな眩しい心模様が見えていた。
                          
 次は、3人のソロ歌唱のブロックへ。トップを飾ったのんは、水花の『ルールブルーの空』を歌唱。閉じ込められた環境の中から自由を求める思いを歌にした、とてもシリアスな内容だ。でも、自体は、自由を手にしようと強い意志を示すような、明るく開放的なファンキーチューン。のんは、譜面台に用意した歌詞へ時々目配せながら、気持ち弾むまま、自分の心も大きな空間へ解き放つように歌っていた。弾む歌声が、見ている人たちの心を閉鎖されたライブハウスという空間から解き放ち、青空のもとへ連れ出してゆく。なんて素敵な音楽のマジックだ。その魔法の効力が発揮されたのも、のんの無邪気な歌唱パフォーマンス姿があったから。この歌は、作詩をしたサツキが、入院したときに窓から見える青空を見ながら書いた歌詞だと、のん歌唱後のMCで語っていた。
  次に長尾千尋が歌ったのが、作家でありサウンドプロデューサーのむらさきひろふみが、サツキの誕生日プレゼント用に書いた歌。それをこの日は、長尾千尋がサツキへプレゼントする形で歌唱。歌った『サツキ育ち』の歌詞の内容が、とてもぶっ飛んでいる。あえて言葉にするなら、サツキというヒーローのための主題歌のような内容。長尾千尋も、物語のオープニングを飾るような勢いで凛々しく歌唱。身体を心地好く揺らす歌謡ロックテイストの楽曲なのも、親しみを覚えた嬉しい要素。この曲はライブ会場でCD販売中なので、歌詞の内容が気になる方は手にしてチェックしてもらいたい。ライブでは、長尾千尋の煽りに合わせ、フロアでも数多くの拳が天高く突き上がっていた。
ソロコーナーの最後を飾ったのが、水花の1stワンマン公演で歌唱。その後、当時、歌っていたメンバーが卒業したことからずっと閉まってきた『CODA』を、久しぶりに封印を解き放ち披露してくれた。胸に秘めた切ないながらも強い想いを、サツキは詰め込んだたくさんの言葉に変え、一気に吐き出すように歌っていた。一人、歌の世界へ感情を没入。ときに舞い踊りながら、サツキは「流した涙さえも歌にして 再びキミへと 想いを届けよう」と、心の声を力強く響かせていった。

  流れだしたのが、SE曲の『Shelter』。その音色へ導かれるように、メンバーカラーを取り入れた新しい衣装を身にまとった3人がふたたび舞台に姿を現した。歌ったのが『as it is』。1stワンマン公演を行ったときの始まりと同じ景色(構成)が。あのときの光景が、新しい装いと、新しい形になった水花として甦る。歌った『as it is』も、「好き」という感情を枠で縛ることは出来ないという生き方を伝えた内容。力強く躍動する四つ打ちのエレクトロなダンスビートの上で、メンバーたちが、強い信念を突き出すようにライムしてゆく。確かな意志を持った言葉たちだ。気持ちを熱く掻き立てるパフォーマンスだ。これは、水花が示した「人として大切にしたい生き方」。「LGBTQ」をテーマに書いた楽曲のように、「気づいたら好きだった 好きになる事に理由はないから」の意味を、ぜひ、楽曲に触れながら感じてもらいたい。
  スリリングでジャジーな音かフロア中を包み込む。妖艶な動きを示しながら、メンバーたちは妖しい色気をまき散らすように『Super Alien』を歌っていた。魔性な姿を見せながら、3人は、見ている人たちを、現実の世界を消し去る魔宮へ誘い込む。このまま彼女たちに誘われるまま、魅惑の世界へ落ちてしまいたい。その後の結末がどうなろうとも、今は、3人へ誘われるまま魔性な魅力の虜になってしまいたい。

 次に披露したのが、水花の活動を始める前の時期、事故により他界した九重りつの歌声も中に反映した『サマーシャワーの約束』。サツキの新衣装には、九重りつのメンバーカラーも縫製。彼女の意志も背負ったうえで活動する意志も示している。
  披露した『サマーシャワーの約束』は、夏をこの場へ連れ出すような、爽やかでスタイリッシュなアーバンポップチューン。メンバーたちも、これから胸踊る素敵な物語が生まれることを期待するように、アバンチュールな気分も交えながら心弾ませ歌っていた。サツキが気持ち馳せるように語るセリフも魅力的だ。これからライブで『サマーシャワーの約束』を歌ったときには、落ちサビで強く響き渡る九重りつの歌声にもぜひ注目していただきたい。
 幻想ファンタジックな音色が、観客たちを幽玄な世界へと誘いだす。闇が支配する世界へ落とし、心へ痛い刺激を与えるように、水花は『Amaryllis』を歌いだした。混沌した感情渦巻く中から、彼女たちは真実という輝きをつかもうと歌っていた。闇の中から輝く光を放つように歌い踊るメンバーたち。そこにどんな意味や想いが隠されているのか、ぜひ彼女たちの本心を探ってもらいたい。
   長尾千尋が初めて作詩をした和ロックナンバーの『導〜しるべ〜』では、「わたしは暗闇を照らす⽉になる」と、荒々しい音に乗せ、自分たちの生きる道標となる想いを3人は浪々と歌い上げてゆく。終始、オラオラと攻めるように歌声を響かせる彼女たち。熱を抱いた逞しいライブ姿に触れ、会場中の人たちも一緒に気持ちを荒ぶらせていた。

  ここで、7月23日より「4カ月連続で主催公演」を行うことを発表。7月23日が、会場及び配信リリースによるシングル盤の発売も兼ねた主催公演。8月7日が、水花の2周年主催公演。9月4日には、サツキの生誕祭。10月には長尾千尋の生誕祭を、それぞれ主催公演という形で行うことを発表してくれた。

  ライブも終盤へ。次に届けたのが「不登校だったり居場所がないと悩む⼈へ逃げる選択を与えたい」「水花がみなさんの心の逃げ場になりますように」と想いを胸に誕生した『⼼の地下室』。エレクトロで鋭利なダンスビートが、身体を突き刺す。水花は痛みを音として具現化。心騒ぐサウンドを抱きしめるように、3人は温かい歌声で痛い音の刺激を優しく包み込んでいた。曲が進むごとに歌声やパフォーマンスにも強さが増していくのは、守るだけではなく、そこへ勇気を与えてゆくからからだ。「逃げる事は負けじゃない」、その言葉が嬉しい励みになる。
  会場中に鳴り響いたエレクトロでラウドなサウンド。水花は、『サヴァイヴ』を突きつけ、観客たちの理性の留め金を一気に壊した。フロア中から多く突き上がる拳やカラフルなペンライトの光。その輝きをもっともっと大きく揺らしてやると言わんばかりに、3人は自信に満ちた声で高らかに「新しい世界を創りだそう」と歌っていた。3人のパフォーマンスもパワフルだ。気持ちを奮い立たせろとせまる彼女たちの姿が、心の扉を開ける合図になったのか、フロア中の人たちも気持ち高ぶる戦士となり、熱く沸き立つ想いを舞台の上へぶつけていた。
  最後に水花は、このグループのコンセプトを歌にした『世界はまだ私たちに適応してくれない』を届けてくれた。エレクトロな和ダンスロック曲の上で、彼女たちは言葉のひと言仁ひと言を、見ている人たちの心へ刻むように歌っていた。華やかに躍動する楽曲に載せ、フロア中の人たちを煽るメンバーたち。3人の感情に心をシンクロした大勢の人たちが大きく身体を揺らしだす。彼女たちは、「世界はまだ私たちに適応してくれない」と歌っていた。でも、ここにいる人たちは。配信を通して見ていた人たちは、間違いなく水花の世界に適応し、共に歩調を合わせながら、未来へ向かって歩いていた。


 アンコールで届けたのが、九重りつの歌声も組み入れた『最果ての雨』、そして、『最果ての雨』の続きを成す新曲の『After Rain』。
 雨音の上で、メンバー一人一人が言葉を紡ぐように始まった『最果ての雨』。「⽔たまりは世界を逆さにしてくれる」の歌詞通り、水たまりでコケることの多いサツキにぴったりの歌だ。楽曲自体は、とてもシリアスな内容。「私が私であるため 今は信じていける」と歌っているように、どんな逆境の中でも気持ちを未来へ向けてゆく水花らしい楽曲だ。ただ前向きに想いをぶつけるのではなく、みずからの弱さも認め、前を向くまでは雨(弱さ)に濡れてもいいと、うつむいた気持ちも肯定してくれるのが嬉しい。だからこそ、続く『After Rain』を通して心に光が差してきたとき、いつも以上に眩しさを覚えれば、 巨大な月の前に現れた温かな虹に手を伸ばしたい気持ちでいた。


  水花は、7月23日より、吉祥寺 STAR PINE'S CAFE で4カ月連続で主催公演を行えば、7月23日の公演では、『DAYBREAK』『After Rain』『Eternal Moon』と3曲の新曲を収録したシングル盤を会場販売し、同時に配信リリースも行う。これからも、九重りつの意志も含んだ水花の姿を追いかけてもらいたい。


PHOTO:太田貴之
TEXT:長澤智典



LIVE


セットリスト
『DAYBREAK』
『Precious Days』
『ルールブルーの空』(のんソロ)
『サツキ育ち』(長尾千尋ソロ)
『CODA』(サツキソロ)
『Shelter』(SE)
『as it is』
『Super Alien』
『サマーシャワーの約束』
『Amaryllis』
『導〜しるべ〜』
『⼼の地下室』
『サヴァイヴ』
『世界はまだ私たちに適応してくれない』
-ENCORE-
『最果ての雨』
『After Rain』

<インフォメーション>


▼配信※6/25(土)までアーカイブ視聴可能
https://eplus.jp/sf/detail/3603950001


【News!!】

7/23(土)吉祥寺STAR PINE'S CAFE
New CDリリース主催イベント開催決定

『暁月』
全作詞:SisA 全作編曲Tatsh 
@Tatsh_Shimizu
1.Eternal Moon
2.After Rain
3.DAYBREAK
4.Eternal Moon(Off Vocal)
5.After Rain (Off Vocal)
6.DAYBREAK (Off Vocal)


【四ヶ月連続主催イベント開催!】

7/23(土)昼 レコ発主催イベント『暁月』
吉祥寺STAR PINE’S CAFÉ
10:30開場 11:00開演
¥3,500+1ドリンク
予約開始 6/24(金)23:00
https://tiget.net/events/189639

8/7(日)昼 水花2周年主催イベント
赤坂naveyfloor
9/4(日)昼 サツキバースデー主催
赤坂naveyfloor
10/2(日)昼 長尾千尋バースデー主催
新宿SAMURAI


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