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2020.09.17
sora tob sakana

sora tob sakana last oneman live「untie」@日本⻘年館ホール ライブレポート

2014年の結成から6年。はじめはアイドルだった。しかし、今やアイドルというにはあまりに格好良すぎる、それでいて難解なパフォーマンスに挑む自分たちがいた。格好良いことは得てして難しい。今日、sora tob sakanaというひとつの物語が完結しようとしている。

 


全50曲・4時間30分オーバー全曲フル尺で有終の美
 

 

筆者がsora tob sakanaを初めて観たのは2014年、渋谷Rexでのイベントだった。その頃のオサカナは、現在のような曲調、パフォーマンスとは180度異なり、どちらかといえば王道のアイドル路線といった印象だった。音楽プロデュースを手掛ける照井順政氏が参加したのは翌年の2015年からだ。そこから、音楽性がガラッと変わっていったのを覚えている。

照井氏が参加してからは音楽性が変わり、同時に出演イベントもそれまでのアイドルイベントから、新宿Marzでやっているようないわゆる「楽曲派」イベントにシフトしていった。筆者がとくに印象に残っているのが、まだ完成されていない粗削りの歌声の「子供たち」がポストロック路線の今風の音楽をパフォーマンスしているというギャップ。それは、デビュー当時の東京女子流などとは明らかに異なる違和感だった。

暗転からスネアの音がゆったり、小刻みに鳴り響くキラキラと幻想的なオープニングのSE『whale song』。そして映像、鯨の遊泳がヴィジョンに映し出される。

 

オサカナ

 

2曲目は『ribbon』。薄い幕の向こう側にメンバーとバンドの影が透ける。そのまま姿を現さないという斬新な演出。幻想的な曲調ならではの演出だ。相変わらず光の影の使い方が素敵な舞台演出。

3曲目、『夜空を全部』。ここで幕が上がり、メンバーが初めて姿を現す。この様々なカラーのコラージュ風の衣装は、この日が最初で最後のお披露目となった。とてもオシャレで個人的には大好きな衣装。

4曲目、『knock!knock!』。MVの頃は4人いたメンバーは、現在3人。3人でのパフォーマンスはバックバンドに負けてしまうのではないかなどという、危惧は不要な心配だった。とても力強い歌声。大胆なディレイ、リバーブ、ライトの演出もキラキラと美しい。

そして、5曲目、『夢の盗賊』。バンドの演奏のクオリティの高さにあらためて驚かされる1曲。

6曲目、『Lightpool』。メジャーデビューミニアルバム『alight ep』収録曲で、先行して『鋭角な日常』とともに配信されていた楽曲だ。この日は約6年にわたり携わってきたVJのTONTON氏も気合が入っていて、『Lightpool』の疾走感ある映像がまるでFPMの『CityLights』のような都会的な疾走感のそれだった。

7曲目『FASHION』、8曲目『鋭角な日常』、『鋭角』の途中で観衆にクラップを煽るところでスモークの特効。そして、雪のフレーズのところではスクリーンに舞い上がる雪。炎のフレーズでは火柱の特効。いつもはVJでの演出だったが、この日というこの日は、実際の炎での演出。

9曲目に、名曲『flasn』。ピアノの旋律が美しいラストシングル曲。アニメ『ハイスコアガールⅡ』OP曲だ。アニメから出会ったファンにとっては、彼女たちとの想い出が蘇る1曲だろう。まさか、ここからという絶頂期での解散発表が記憶に新しい。そういう意味でも忘れられない1曲。

10曲目『Brand New Blue』。これまでの曲調とはうって変わり、明るくキュートでアップテンポな曲。振付もかわいらしい。Bメロのエモさ、からのサビに向けての盛り上がり、転調、オサカナ楽曲のなかで最もアイドル曲らしい楽曲といっても過言ではない。アイドル横丁、赤レンガ倉庫でのパフォーマンスを思い出される野外で聴きたい1曲だ。

間のMCはほぼなく、立て続けにパフォーマンス。体力は大丈夫だろうか。そうこうしているうちに、11曲目の『タイムトラベルして』からの12曲目『秘密』。『秘密』は木琴の音がかわいく無邪気で、初々しい。振付もアイドルっぽい。そして、この曲はサビのユニゾンがとてもきれいなのだ。落ちサビ前の転調もエモく、ラスサビへ向かって一気に高まるところが最高だ。

13曲目、『シューティングスター・ランデブー』。照井氏のギターのカッティングがおしゃれでかっこいい曲。

14曲目『魔法の言葉』、15曲目『おやすみ』、16曲目『アルファルド』と続けてパフォーマンス。この曲後にオサカナらしい短めのMCをはさみ、17曲目『乱反射の季節』、18曲目『嘘つき達に暇はない』を披露。途中の5拍子とクラップ、「らーららららーらーら」が印象的。この曲と『発見』『パレードがはじまる』はリズムのとりにくい、複雑で難解な曲。19曲目の『silver』は、途中のギターソロがかっこいい、ファンクっぽさのある曲だ。

20曲目『My notes』、21曲目『ささやかな祝祭』。『祝祭』はこの日用のアレンジバージョン。ここで、バンドメンバーを紹介。ピアノによる楽しく幸せ溢れるメロディが響きわたる。

MCをはさみ、22曲目『発見』、23曲目『パレードがはじまる』。立て続けに変な曲(誉め言葉)が続く。これらの曲は拍がとりにくく、振付を考えるほうも、踊るほうも難しそうだ。

24曲目は『World Fragment』。この曲は、メロディ、歌詞ふくめオサカナらしさのある名曲。この曲と、25曲目『まぶしい』は、ドラムが実にかっこいい。

26曲目『夜間飛行』は、ところどころ煽りが入るフェスでよく披露していた曲。「らーらーら」が盛り上がる。すでに場内、感動的な空気が漂っている。

 

オサカナ

 

「オサカナ」というフィルターを通した照井順政の音楽、それがsora tob sakana

 

15分間の休憩時間をはさみ、27曲目はSE『海に纏わる言葉』でスタート。28曲目は『クラウチングスタート』。あるはずのコールは今回ばかりは、みな心の中で声を出す。

29曲目『Summer Plan』。この曲もドラムがせわしない。ベースも印象的ないい味出している。まさに青春をメロディで表現したような楽曲だ。

30曲目『タイムマシンにさよなら』もベースがとてつもなくかっこいい。そして、31曲目『新しい朝』。かっこいい曲調だが、3人のかわいらしさの声が合わさるとオサカナの曲となって耳に届く。

32曲目『帰り道のワンダー』から、アコースティックパートへ。アコギと幼い歌声が妙に夕焼け感を醸し出している。

33曲目『蜃気楼の国』。透明感あるメロディと汚れのない純粋な歌声、ハモリが最高に美しい。

続いて34曲目、イントロの詩の朗読で始まる『ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン』。歌詞にも出てくる夜空にうかぶ星を眺めながら聴きたいきれいで幻想的な曲。

35曲目『燃えない呪文』、36曲目『透明な怪物』。『透明な怪物』はきれいなコーラスとハモリだが、かと思えば、ギターの「ギュイーン」が印象的な曲。

37曲目『踊り子たち』。この曲も複雑なリズムを刻む曲。スクリーンにはメリーゴーランドが映し出され、3人のダンスもメリーゴーランドのようにくるくると、ゆっくり回る。

38曲目『夏の扉』。最後の夏をしめくくるにふさわしいタイミングといったところか。ギターソロがいつも以上にエモく聴こえる。

39曲目は80年代の懐かしさを踏襲したAOR調の『ありふれた群青』。この渋さは紛れもなくアダルトでオリエンタルなロック。そこにもはやこれまでの幼さはなかった。40曲目『ケサランパサラン』。

41曲目はメンバーの声をサンプリングしたインタールード『暇』。42曲目『Moon Swimming Weekender』、43曲目『tokyo sinewave』。『tokyo sinewave』はクラブで見かけるようなアシッドなVJの映像に、アンビエントでパーカッションが入ったおしゃれな曲。

44曲目『広告の街』、45曲目『流星の行方』。『流星の行方』はエモさが爆発した楽曲。

ここで、これまで携わってきてくれた音楽プロデューサーの照井氏をはじめとするVJ、ボイトレ、振付、レーベル各スタッフへの感謝を述べた後、46曲目は、ラストアルバム『deep blue』のリード曲である『信号』。

47曲目は、オサカナの代表曲『New Stranger』。アニメ『ハイスコアガール』OP曲だ。名実ともにオサカナをメジャーへと押し上げた楽曲といってよいだろう。

続けて48曲目『Lighthousue』へ。こちらはオサカナ象徴的な楽曲。これを定期イベントやフェスで聴けることはもうない。

ここで、メンバーのMC。これまでの活動を振り返る。「sora tob sakanaがこのメンバーでよかったと思った」(寺口)。「ふつうに学生やってたらできないような貴重な体験させてもらいました」(山崎)。「6年間で出会ってくれたすべての人に感謝を伝えたいです」(神﨑)。

49曲目『WALK』。そして、ラスト50曲目は初披露の『untie』。そして曲の途中で暗転。曲が終わると、メンバーはいなくなっていた。映画を観終わった後のような物悲しさと感動に包まれながら、ラストライブは幕を閉じた。


はたして、どこまで当時の彼女たちが、照井氏の紡ぐ音楽性を理解できていたのかはわからない。だが、少なくとも今日のsora tob sakanaを観ていると、そんなことはどうでもいいと思えた。

それにしても、名曲がもう聴かれないというのは寂しい。今後誰かに歌い継がれることを切に願うばかりだ。

 

<セットリスト>

1.    whale song 
2.    ribbon 
3.    夜空を全部 
4.    knock!knock! 
5.    夢の盗賊 
6.    Lightpool 
7.    FASHION 
8.    鋭角な日常
9.    flash
10.    Brand New Blue 
11.    タイムトラベルして
12.    秘密 
13.    シューティングスター・ランデブー 
14.    魔法の言葉 
15.    おやすみ 
16.    アルファルド 
17.    乱反射の季節 
18.    嘘つき達に暇はない 
19.    silver
20.    My notes 
21.    ささやかな祝祭 
22.    発見 
23.    パレードがはじまる 
24.    World Fragment 
25.    まぶしい 
26.    夜間飛行 
27.    海に纏わる言葉 
28.    クラウチングスタート 
29.    Summer Plan 
30.    タイムマシンにさよなら 
31.    新しい朝 
32.    帰り道のワンダー 
33.    蜃気楼の国
34.    ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン 
35.    燃えない呪文 
36.    透明な怪物
37.    踊り子たち
38.    夏の扉
39.    ありふれた群⻘
40.    ケサランパサラン
41.    暇 
42.    Moon Swimming Weekender 
43.    tokyo sinewave
44.    広告の街
45.    流星の行方 
46.    信号
47.    New Stranger 
48.    Lighthouse 
49.    WALK 
50.    untie 

 

<商品情報>

 

CDジャケット

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<インフォメーション>

sora tob sakana

【PROFILE】
2014年に結成。神﨑風花、寺口夏花、山崎愛からなる3人組グループ。通称・オサカナ。音楽プロデュースはハイスイノナサ、siraphの照井順政。『New Stranger』をはじめ数々の楽曲が人気アニメのタイアップを獲得。知名度を一気に高めた。

公式HP
https://soratobsakana.tokyo/

公式Twitter
https://twitter.com/soratobsakana


取材・文:名原広雄
写真:林晋介、東美樹

 

 

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