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RYUTist|今メンバーができる最大限が最高に詰まったアルバムだなって思います
新潟は古町を拠点に活動するRYUTistがこれまでに残してきた3枚のアルバム『RYUTist HOME LIVE』『日本海夕日ライン』『柳都芸妓』は、いずれ劣らぬ名盤である。
本拠地・古町で行われる“HOME LIVE”の再現をコンセプトとした『RYUTist HOME LIVE』。新潟の海岸線を走る“日本海夕日ライン”の日の出から日没までを描いた『日本海夕日ライン』。花街として栄えたいにしえの古町へとタイムスリップするかのような感覚で今に伝わる伝統や情緒を再発見し、そこに宿る普遍的な情感を瑞々しいサウンドで描き出した『柳都芸妓』。3枚とも確固たるコンセプトのもとに制作され、しかも、それらはいずれも新潟にまつわるものだった。
そして、約3年ぶりとなる4枚目のフルアルバム『ファルセット』。収録曲は「青空シグナル」(沖井礼二作曲)、「無重力ファンタジア」(ikkubaru作曲)、「黄昏のダイアリー」(北川勝利・沖井礼二作曲)、「センシティブサイン」(シンリズム作曲)、「きっと、はじまりの季節」(弓木英梨乃作曲)といった2018年以降にリリースされたシングル曲に加え、蓮沼執太、柴田聡子、北川勝利、Kan Sano、パソコン音楽クラブといった先鋭的な作家陣の作品が並ぶ。加えて、これまで多くのRYUTist作品を手掛けてきたNOBE/KOJI obaのコンビによる楽曲も。ジャケットには、珍しく大写しになった笑顔の4人。各楽曲の詞や曲調、そしてタイトルやジャケット写真などを考え合わせてみても、とくに明確なコンセプトは浮かび上がってこない。近年のシングル「黄昏のダイアリー」「センシティブサイン」「きっと、はじまりの季節」は、特定のジャンルへとオマージュするようなものではなく、どこか「RYUTist流王道ポップを作り上げよう」としているかのような気概が感じられるものだった。そういう意味では、今作ではコンセプトを廃し、より普遍的な、ある意味匿名的なアルバムを目指したのだろうか…。
話を聞いてみると、『ファルセット』のコンセプトは「自分たち自身」であるとのことだ。これまでは「新潟を全国へとアピールすべく、新潟らしさを打ち出した」作品を世に問うてきたRYUTist。だが今作では「私たち自身」にスポットが当てられているとのこと。そういう意味では、4人の感性や思考や情動が多様な音楽を通して描き出された作品と言えるかもしれない。もちろんそこには“新潟”という要素も含まれている。そう考えれば、日常風景をバックに4人が大写しになったジャケットも、本作の“コンセプト”に見事に合致している。もちろんバックに写る“日常風景”は、古町のそれである。
現代は多様性の時代である。人種や文化的背景、地域や信条といった属性によってカテゴライズされる以前に、個というものが尊重されるべき時代である。だがその一方で、そうした個が多様性を帯びるには、各々の有する属性が重要な要素となるだろう。それらが各々の割合で配合されることにより、個が形成されるのだ。彼女たち4人を「新潟の女性」という属性だけで語ることはもはやできないが、各々にはそれぞれに“新潟”という要素が配合されているのもまた事実である。
蓮沼執太が作曲した本作を象徴する楽曲「ALIVE」は、アコースティックギターに導かれる牧歌的なイントロ、スティーヴ・ライヒを連想するようなクラッピングやマレット楽器が配された現代音楽的要素、マスロック的なギターが施されたポエトリーリーディング・パートなど、まさに多様性が共存している。そこで歌われるのは、抑制されたヴォーカルが綴る日常の営みや自然の風景。それらは決して“新潟”ではなく、どこでもないどこか。だが、聴く者それぞれの心にはそれぞれの心象風景が描き出されるだろう。「バラバラのリズムが動き出すのさ」という一節が示すのは、多様な日常風景であると同時に、個々の中に生じる多様な反応のことも示しているのかもしれない。
そういう意味でも、本作は極めて同時代的な作品であり、同時に普遍的な作品とも言えるだろう。もちろんコンセプトを設けたこれまでのアルバムも素晴らしいが、本作には大きく進化したRYUTistの姿を見出すことができる。そして、相変わらずの豪華作家陣が名を連ねるが、この4つの個はそれらに決して負けていない——そんなことを感じさせる強力な作品である。新たな名盤の誕生だ。
RYUTistの4人、佐藤乃々子、宇野友恵、五十嵐夢羽、横山実郁に、アルバム『ファルセット』についてたっぷりと伺った。
ちょっと背伸びしつつステップアップしている作品かなって思います(五十嵐)
ーー7月14日に約3年振りとなるフルアルバム『ファルセット』がリリースされます。まずはひと言で、どんなアルバムとなったのでしょうか?
五十嵐夢羽(以下:五十嵐):『ファルセット』は、RYUTistが段階を一段上るっていうか、ちょっと背伸びしつつステップアップしている作品かなって思います。
ーーなるほど。「ファルセット」って裏声で一段高い声を出すわけですからね。友さんはいかがですか?
宇野友恵(以下:宇野):今の私たち4人の持ってるものを全部吐き出したアルバムだと思います。
ーー全て吐き出したわけですね。
宇野: 出しました!
ーーでは実郁さん。
横山実郁(以下:横山):はい。等身大の私たちと、2020年、前に進むぞっていう決意を表したアルバムだと思います。
ーーでは、続きまして乃々子さん。
佐藤乃々子(以下:佐藤):はい。今回のアルバムはまた豪華作家陣さんに作っていただいて、楽曲の難しさもさらにレベルアップしていると思うので、むうたんも言ってましたが、少し背伸びをして挑戦したアルバムになったと思います。
ーージャケットに関してお訊きしたいのですが、昨年10月リリースのシングル「きっと、はじまりの季節」で、とうとう皆さんがジャケットに写らなくなりました。
一同:笑
宇野: そうでしたね。
ーーそのジャケットがツイッターでめっちゃバズりましたよね。
横山:バズりましたね。
ーー皆さんが出なくなってバズったわけです(笑)。
一同:(笑)。
横山:すごい悪い言い方しますね(笑)。
ーーツッコミがすごいですね。なんか怖いですね(笑)。
宇野: 石川さんも“RYUTist邪魔派”ですか?
ーーいえいえ、そんなことないですよ。僕はただ“世間で起こった現象”について言っただけなので(笑)。
一同:(笑)。
ーーそれが今回ガラッと変わったじゃないですか。
一同:はい。
ーー皆さんとしてはいかがですか?
横山:びっくり。
宇野: こんなに「ドーン!」ってメンバーの顔が写っているのが…。
佐藤:今までは「嵐は日曜日」ぐらいじゃない?
五十嵐:懐かしい~。
佐藤:「ドーン」っていう感じはね。6カ月連続でシングルをリリースした時の一枚です。
宇野: 本当に初期の頃。2013年ぐらい。
ーーシングル2枚リリースした後に連続で出したやつですよね?
佐藤:はい。そうです。
横山:それ以来じゃないかっていうぐらい今回は前面に出てますよね。
ーーやはり皆さんはアイドルなので、自分たちが前に出た方がいいですよね?
宇野: いやー、そんなことはないですね。
横山:やっぱりジャケットに私たちがいない方が手に取りやすいと思うんですよ。
ーーということは、今のアルバムジャケットに不満であると。
横山:いやいやいや(笑)。不満ではないですよ。うれしいんですけど、やっぱりいい曲を聴いていただきたいから、お洒落な、綺麗なジャケットの方がいいのかな、って思ったんですけど…。でも、今回のアルバムは「私たち自身」をコンセプトにしていただいたみたいで、それであのジャケットになったので、うれしいなと思いました。
五十嵐:ファンの方はね、うれしいって思ってくださってるかもしれないよね。
ーーやはり皆さんのことをフィーチャーしたアルバムであるから、皆さんのお姿が出てくるわけですよね。
一同:はい。
ーー撮影されたのは古町で、2014年のシングル「Wind Chime!~街のトンネル~」のジャケットと同じロケーションですよね?
一同:そうですね。
ーーその時と比べると皆さん洗練されて綺麗になりましたよね~。
一同:(笑)
佐藤:大人っぽい顔つきにはなりましたよね。
ーー実郁さんなんか顔が全然違いますもんね。
横山:別人ですからね。
ーーすごく冷静にツッコまれた(笑)。ここでひと笑い起る予定だったんですが…。
横山:(笑)。(佐藤乃々子を指差して)理解できてない人もいるみたいで(笑)。
ーーきっと取材とレッスンでお疲れなんですね。
佐藤:全然大丈夫です(笑)。
ーーで、洗練されて大人になったという感じがありますが、「Wind Chime!~街のトンネル~」では皆さん仁王立ち……仁王立ちではないですね。すっと立ってるじゃないですか。
宇野: 確かに。『ファルセット』ではメンバーがすごい笑顔です。笑ってるというのは今まであまりなかったですね。大人しい系が多かったように思います。
佐藤:そうだね。今回は全力で笑ってるもんね。
宇野: 全力で笑ってるんです。あれ、走ってる途中だもんね。
五十嵐:うん。
ーーあれはどんな感じで撮ったんですか? 本当に笑顔で走ってる感じですもんね。
五十嵐:走りながら撮っていただきました。シャッター、パシャパシャって。
ーーあそこは車とか危なくないんですか?
横山:もちろん青信号の時に撮りました。
五十嵐:青信号になる度に渡って、そして赤になれば戻って、また青で「はい、渡って」みたいな。
宇野: それの繰り返しです。5回ぐらい。
ーーロケーション的にちょっとわからないんですが、横断歩道を渡ってる感じなんですか?
横山:そうですね。横断歩道です。
ーーなんか車道を駆けているように見えるんですが…。
横山:古町の柾谷小路っていう大きな通りなんですけど、信号がこう、なんて言うか…。
宇野: 斜め横断みたいになってて。
横山:渋谷のスクランブル交差点みたいな感じです。
ーーなるほどなるほど。
横山:そうなんですよ。横断歩道を横切る感じの写真に見えるんですけど、安全です。
宇野: 歩道の中でやってるんです。
ーーなるほど。そこはもう交通規則を守って。
横山:もちろんですよ!
五十嵐:そりゃそうです!
ーー(笑)。で、駆け出してるわけですよね。
横山:駆け出してます。
ーーどういう意味ですか? それは。
横山:意味ですか??? この日は写真家の南阿沙美さんが新潟まで来て下さって、この場所だけじゃなくて色んな場所で撮ってくださったんですが、メンバーの自然体で元気な感じを撮ってくださいました。
宇野: 素の表情です。
ーー素の表情なんですね。動いたりしてる時のほうが顔を作らないから、素の表情が出るということですね。
横山:メンバーが本当に楽しんでる表情を写真に収めていただきました。
ーーなるほど。実郁さんなんて最近顔作ってますもんね。ツイッターに上げる自撮りとかね。
一同:(笑)。
横山:可愛いって言ってくださいよ~!頑張ってるのに~!
ーー(笑)。
宇野: 絶対自分で可愛いと思ってる。
横山:違う違う。そういうことじゃないから。可愛いと思って欲しいだけだから。
宇野: 可愛いよっ!
五十嵐:可愛い!
ーーそう。だから、可愛いように作ってるわけですよね。
宇野: (笑)そうですそうです。
横山:すごい嫌みっぽい言い方しますよね(笑)。本当に!
ーーそうですか??? いやいや全然そんなことないです(笑)。
五十嵐:石川さん、もっと素敵な感じだったのに~(笑)。
横山:ねぇ。
ーーえっ?
宇野: 好きな子にちょっかい出すっていうじゃないですか。
ーーえ(笑)。何を?(笑)
横山:ほらほら(笑)。
ーー今、仕事中なんですから(笑)。今そんなわちゃわちゃ雑談してる場合じゃなくて、仕事してるんですよ!(笑)
一同:(笑)
ーーまぁでも、作らなくても可愛い、ということですよね。
宇野: あ。
横山:(笑)。
ーーいいですか? これで(笑)。
横山:はいはい。可愛いく撮ってもらいました。はい。可愛く撮っていただきました。
ーー(笑)。でもジャケットを見ると、皆さん駆け出しています。まるで古町から逃げだそうとしているかのような(笑)。
佐藤:そう思いました?
ーーというか、飛び出そうとしてる感じですかね?
横山:はい。
宇野: 確かに。
佐藤:そんな感じもしますね。こうして見てみると。
ーー古町から全国へ、世界へと。
五十嵐:駆け出そうとしている!
佐藤:その第一歩にも見えなくもない。
横山:さっき私は「これからの決意も入ったアルバムです」って言ったんですが、これから前に進むためには、新潟はもちろんですけど、新潟の外に出ていかなきゃいけない時もあると思うんです。なので、石川さんの言うように、新潟を飛び出して色んなところに行くよ、っていうメッセージにもなりますよね。全国でRYUTistを待ってくださってる方がいれば、その方のところに行きたいという気持ちがあるので、そういう解釈もありだと思います。
ーーなるほど。
横山:以上!(笑)
ーーありがとうございます(笑)。ちょっとようやく取材っぽい雰囲気になってきましたね(笑)。これでいきたいと思います。で、衣装をたくさん着られたとのことですが…。
横山:はい。
五十嵐:何種類もありました。
宇野: 山盛り! 二日間かけて選んでいただいたんですよ。メンバーのバランスとかを考えながら。
横山:メンバーに合う合わないとかも考えて。「きっと、はじまりの季節」のMVの衣装や、今のアーティスト写真のピンクの衣装を用意してくださった水戸悠夏子さんにお願いして。
横山:すごい量を持ってきてくださって。しかも最後のほうは水戸さんの私服も持ってきてもらったんだよね。
佐藤:そうだね(笑)。
横山:何がベストかというのを吟味して。
佐藤:全然違う系統の服とかもあったもんね。みんなね。最終的にこれになったけど。実郁ちゃんのこの赤のお洋服……あんまり赤着ることないよね?
横山:着ない着ない。
佐藤:これ、新鮮ですごいいいなって思いました。
横山:ありがとう!
佐藤:う~ん、ど~いたしまして~。
宇野: なんか、赤が『ファルセット』の色みたいな感じです。
佐藤:上の部分にある赤だね。何色って言えばいいんだろうね。
横山:ねー。
佐藤:絶妙なカラー。
五十嵐:赤ピンクみたいな。
ーーでも、本当に実郁さんの服に呼応してますよね。同じ系統の赤っていう。
横山:そうですね。
ーー全然違う服っていうのは、例えばアルバムの中に写ってたりするんですか? それとも大量の服の中から選んで、これだけを着たんですか?
五十嵐:この衣装で全部撮ってます。
ーー贅沢ですね。
横山:本当に。こんなにお洋服着れて幸せでした。
宇野: 同時に自分たちのセンスのなさに気づいて。
横山:いや、本当にそうだよね。これとこれ合わせるんだ!って。
佐藤:「えー!」みたいな(笑)。
ーー自分では考えつかないような組み合わせをされたりして。じゃあ、皆さんセンスが磨かれたわけですね。
横山:磨かれてないです…。センスないのを肌で感じました。
RYUTist ライブ情報
■公演名『RYUTist HOME LIVE #307 9th Anniversary』
■配信日時
7月24日(金祝)
OPEN/13:50
START/14:00
■ライヴ配信視聴チケット
2,800円(税込)
ZAIKOにて電子チケット受付中
↓チケット受付はこちらのイベントページにて行っています。
https://ryutist.zaiko.io/e/homelive307
電子チケットは7月27日(月)14:00まで購入可能
配信終了後、チケット購入者は7月27日(月)16:30までアーカイヴで視聴可能
RYUTist 商品情報
■RYUTist 4th Full Album『ファルセット』
発売日:2020 年 7 月 14 日(火)
品番:PGDC-0012
価格:¥3,000(税抜価格) +税
《収録内容》
01. GIRLS(作編曲:蓮沼執太)
02. ALIVE(作詞:蓮沼執太/作編曲:蓮沼執太)
03. きっと、はじまりの季節 (作詞・作曲:弓木英梨乃/編曲:sugarbeans )
04. ナイスポーズ (作詞:柴田聡子/作編曲:柴田聡子)
05. 好きだよ・・・ (作詞:NOBE/作編曲:KOJI oba)
06. センシティブサイン (作詞:シンリズム/作編曲:シンリズム )
07. 絶対に絶対に絶対に GO! (作詞:藤村鼓乃美 ・ 北川勝利/作編曲:北川勝利)
08. 青空シグナル (作詞:清浦夏実/作編曲:沖井礼二 )
09. 時間だよ (作詞:Kan Sano/作編曲:Kan Sano)
10. 無重力ファンタジア (作詞:清浦夏実/作編曲:ikkubaru)
11. 春にゆびきり (作詞:パソコン音楽クラブ/作編曲:パソコン音楽クラブ)
12. 黄昏のダイアリー (作詞:清浦夏実/作編曲:北川勝利・沖井礼二 )