Speak emo
ごいちー|「今若い女の子が歌う渋谷系ってめちゃくちゃいいな」って思ったんですよね
ごいちーの初ミニアルバム『Shining Wonderland』が素晴らしい。
まずは先行シングル「上の空モード」に”ひと耳惚れ"してしまった。シンガーソングライターのSAWAが作詞作曲したこの曲。イントロからスウェーディッシュ・ポップを想起させる“渋谷系サウンド”が鳴り響き、ごいちーのどこかアンニュイなヴォーカルが入ってくると、独特の空気感が生まれる。それは決して、かつての渋谷系を懐古的にトレースしたものではなく、当時の渋谷系が提示していた価値観をこの時代に生きる女の子の言葉と視点を通して瑞々しく翻案しているかのような印象だ。
当時の渋谷系には、イケイケの時代の享楽性が満ち満ちていたが、同時にそこには虚無感のようなものも漂っていた。一方ごいちーは、不安と虚無感に覆い尽くされたこの時代に、等身大の感性を投影しながらリアルとファンタジーが交錯する"wonderland"を描くことで、微かな希望を見出そうとしている印象だ。いずれも独自の価値観を提示し、瑞々しいインパクトを与えるものだが、閉塞感に苛まれるこの時代には、曖昧糢糊とした空気の中に見える光の方が、たとえ今はまだ小さくとも、その分より鮮やかな輝きを放つのかもしれない。
SAWAの作詞作曲編曲のナンバーが4曲。作詞つのだゆみこ、作編曲クマロボによるものが2曲。笹川真生の作詞作曲編曲によるものが1曲。“渋谷系モータウン”ともいうべき溌剌としたナンバーから、電波ソング成分も見え隠れするEDM、キラキラとした音色が散りばめられたエレクトロに、音響系の響きをたたえたバンドサウンド、そして哀愁が仄かに漂うシティポップまで。いずれも一つのイメージを類型的に再現するのではなく、明と暗、陰と陽、光と影、あるいは多様な色彩を絶妙に織り混ぜ、重層的で豊潤なイメージを描き出している。特筆すべきは、こうした多様な楽曲に応じて、ごいちーが彩り豊かな声によって歌い分けていることだ。
またその詞も、ごいちーが等身大の女の子を演じている”ものや、比喩や抽象的な表現の中に自身の本音を忍ばせたものもあり、様々な発色を見せるサウンドにさらなる彩りを加えている。
新潟を拠点とする5人組アイドルグループcana÷bissのDJとして活躍しつつ、“DJごいちー”としてDJ活動も行なうごいちー。昨年12月のシングル「上の空モード/あなたにあげる」でソロシンガーとしての活動も開始し、このたびミニアルバム『Shining Wonderland』をリリースした。
そんなごいちーにお話を伺った。さり気なくも奥深く、曖昧ながらも多様な色彩が見え隠れし、掴めそうで掴めないその人物像は、まさにこのミニアルバムに描き出されているような空気感をたたえている。そんな彼女の示唆に富む言葉をご堪能いただきたい。
まさか6年もやってソロデビューまでするなんて、当時はほんとに思ってなかったと思います
ーーprincipal!(プリンシパルエクスクラメーション、略称「プリエク」)の初期メンバーだったんですよね?
ごいちー:そうです。フフフ。
ーープリエクのメンバーとしてデビューしたのが2014年2月21日ですよね。
ごいちー:そんな前になるんですね。
ーーキャリア長いですね。
ごいちー:意外と長く活動してます。
ーーで、昨今の便利なネット時代、デビューライブの映像を発見してしまい…。
ごいちー:見ないでください。フフフフ。
ーーそれはアップされていていいものなのかかわからないんですが(笑)、王道アイドルという感じのグループでした。
ごいちー:そうですね。
ーーその時、どんな気持ちでステージに上がっていたんですか?
ごいちー:当時はAKB48さんが頂点にいて、ももクロさんも絶好調で、でんぱ組.incさんがブレイクした頃だったと思うんですが、私たちも、担当カラーがあって、ちょっと歌うみたいな感じの長めの自己紹介が一人ずつあったりして、完全にそうしたアイドルを意識してやっていました。曲も電波ソングっぽいのもありましたし、高音でてキラキラしてて早口でみたいな感じの、今のcana÷bissとは全く違うイメージでやってました。当時はみんな初めてだったので、何もわからず、ただやってるだけでしたね。何が正解かもわからなくて。
ーーごいちーさんの自己紹介も「お歌の時間ですよー」って。
ごいちー:ちょっと、それほんとに黒歴史なので。ハハハハハ。やだー。
ーーファンの方にはもう知られてることだと思うんですが、「ごいちー」という名前の由来は?
ごいちー:もう普通にバレてるのでいいんですが、本名が五井千賀子っていうんですよ。なので、学生時代からずっと「ごいちー」って呼ばれてて、そのままです。活動を始める際、みんなニックネームっぽい名前でやることになったので、そのままでいきました。
ーー「いちご」の業界用語ではないんですね。
ごいちー:そうなんですけど、初期の自己紹介の時は、覚えやすいかなと思って「いちごのごいちー」とか言ってましたね。いちごに対して特別な感情は全然ないんですけども(笑)。
ーーその当時は、現在のようにDJごいちーになって、今やソロで歌ってる、ということは夢にも描いてなかったですか?
ごいちー:そうですね。元々アイドルが好きで、アイドルを応援しに行った時に女の子のオタクみんなで写真を撮ったのがきっかけで今のプロデューサーに声を掛けていただいたので、自分でやるとは思ってなかったんですよ。声を掛けていただいたのがアイドルを初めてやる事務所で、私もどんな所なのか何もわからなくて「嫌だったらやめればいいかな」ぐらいの気持ちで始めたので、まさか6年もやってソロデビューまでするなんて、当時はほんとに思ってなかったと思います。
ーーちなみに、その応援しに行ってたアイドルって誰だったんですか?
ごいちー:私立恵比寿中学さんが新潟に野外のフリーライブで来ていて、それを観に行ってました。
ーーそこで撮った写真がきっかけで今の事務所musictrace inc.に入った、と。
ごいちー:はい。そうです。
ーー今回はそこからの歴史について詳しくはお伺いいたしませんが、ネットで調べたりすると、割と端折って書かれてる部分も見られます。ごいちーさんは一旦卒業されたんですよね?
ごいちー:そうですね。プリエクを2年ぐらいやって一度卒業してます。
ーーそれが2016年3月と書かれてますが、それは正しいですか?
ごいちー:はい。
ーーで、「プリエクが2017年3月にcana÷bissに改名し、ありさ、ありす、桐亜、DJごいちーの4人で始動」といった形で書かれているものが見られますが、正確を期すならば、ごいちーさんはプリエクが改名する約1年前に一旦卒業されているんですよね?
ごいちー:そうです。かなり端折ってあって…。私は一旦プリエクを抜けて、その間に新メンバーが入ったり抜けたり色々あって、その後まずは「canabiss!」に改名して、そのスタートメンバーとしてはプリエクの初期メンバーが2人残って、そこで「どうしよう」ってなって、musictrace inc.の別のグループにいた桐亜っていうメンバーが加わって、最初は3人で始めたんですよ。私はいなくて。で、「canabiss!」として初ライブを行った一週間後ぐらいに私がDJとして戻って来て、その時に現在の「cana÷biss」に表記が変わったんですよね。当初は3人だったんですが、ライブをMCなしで曲をどんどん繋いでいくっていうスタイルでやることになり、じゃあ「DJを募集しよう」っていうことになって、そこに私が復帰したという感じです。その時は一応musictrace inc.でソロとして所属しながら、東京で会社にも就職していたので…。「たまにソロでDJの活動ができたらいいな」ぐらいのゆるい感じで活動していたんですよ。なので「事務所にDJがいるので入れちゃおう」みたいな。
ーー最初は「イレギュラーメンバー」として「加入未満」という形で復帰されたんですよね?
ごいちー:そうですね。
ーー2016年3月に一旦卒業した際には、普通の会社に就職されたんですか?
ごいちー:musictrace inc.に名前は残したまま、私だけ東京に出てきて、普通に就職しました。
ごいちー イベント情報
7/24(金祝)「Shinig Wonderland RELEASE PARTY」
会場 GOLDEN PIGS RED STAGE
OPEN/START 17:00/18:00
料金 ¥3,000(別途ドリンク¥500)
※地域限定販売 限定50人
出演 ごいちー/cana÷biss/オモテカホ/雷都少女
ごいちー 商品情報
ミニアルバム『Shining Wonderland』
レーベル:doles U(ディスクユニオン)
発売日:2020/7/22
品番:DOLU30
価格:税抜2,273円(税込2,500円)
≪収録曲≫
1.le Sagittaire (作詞 つのだゆみこ・作曲 クマロボ・編曲 クマロボ)
2.限界リズム (作詞作曲編曲 SAWA)
3.正しい関係性 (作詞作曲編曲 SAWA)
4.Shining Wonderland (作詞作曲編曲 SAWA)
5.あなたにあげる (作詞作曲編曲 笹川真生)
6.シャララ (作詞 つのだゆみこ・作曲 クマロボ・編曲 クマロボ)
7.上の空モード (作詞作曲編曲 SAWA)