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lyrical school|めちゃくちゃ逆境に強い“アイデア・グループ”なので
自他共に認める「逆境に強い」グループである。
確かに、改名あり、メンバーチェンジあり、そしてメジャーとインディーを行き来し、決して好ましくない条件のもとでも幾度となくライブを行なってきた。そんな中、minan、hime、hinako、yuu、risanoという現在の体制になってから、早くも3年の歳月が過ぎた。これはlyrical school史上最長のラインナップとのことだが、体制は安定させつつも、様々な“新たな試み”を行なうことで一所に留まらず、常に進化を遂げながら着実にその実力も知名度も上げてきた。
“最強”ともいうべき布陣で快進撃を続けてきたlyrical school(略称:リリスク)だが、そんな彼女たちでさえもこの度のコロナ禍という“逆境”はさすがに応えたことだろう。
だが、やはり「逆境に強い」グループである。そんな中でもリリスクは一矢も二矢も報いてくれた。いや、あの閉塞したムードの中、希望の光を示してくれたかのような絶大なインパクトを残したのだ。
7都道府県で緊急事態宣言が発令された直後の4月10日。突如として『REMOTE FREE LIVE vol.1』という映像が公開された。スマホで撮った縦型動画を5人分横に並べたその映像は、メンバーそれぞれのプライベート空間を覗き込むような緊迫感と、離れているそれらが何らかのマジックによって見事にシンクロするかのような不思議なライブ感を帯びたものだった。
撮影の手順はこうだ。まずはセットリストに沿ってライブインスト音源を作成。メンバーはそれをイヤホンで聴きながら自分のパートを歌唱し、その姿をスマホで動画として“自撮り”。その後5本分の動画とインスト音源をミックスしたとのこと。仕上がりのライブ感を重要視した長回しの撮影。メンバーのミスによる撮り直しの時間が少しでも短く済むよう、40分のライブを2パートに分け、20分×2本の“ツーカット“撮影で行なったという。これは、メンバー自身も告白しているが、極めて困難な作業だったようだ。だが、それを感じさせないような見事なシンクロを見せ、あたかも今この場で“生ライブ”が行なわれているかのような臨場感に溢れていた。この『REMOTE FREE LIVE』は、その後も4月17日に『vol.2』が、4月25日に『Tokyo Drift Freestyle』が、そして5月1日には『vol.2アンコール』が立て続けに公開された。
そして、間髪を入れずにEP『OK!!!!!』をリリース。そこには、valknee、ANTIC、Kick a Showといった気鋭のアーティストたちを迎え、一方、ALI-KICK、大久保潤也、高橋コースケ、泉水マサチェリーといった以前よりリリスクを支えてきた面々とも共同作業を行ないながら、多様な最先端サウンドに挑む“最新型のリリスク”の姿が見える。なにより「OK!」という言葉が今のこの状況に、いかに希望をもたらしてくれることか。
メンバーのminanとrisano、そしてプロデューサーのキムヤスヒロ氏も交え、lyrical schoolの“現在地”についてお話を伺った。
100回ぐらい撮り直しました(risano)
ーー新体制となって3年が過ぎました。率直にいかがですか?
risano:3年が倍に感じますね。1年1年がめちゃくちゃ充実し過ぎて「そうか、まだ3年か」って。同じ仕事を3年続けるのは、自分の中では結構長いんですよ。これまでいろんなアルバイトをやってきたんですが、どれもあまり長く続くかなくて(笑)。なので、3年も続けてるんだっていう思いと、でも、あっという間だったなって思いがありますね。
ーーminanさんはいかがですか?
minan:逆にどうですか? 中にいると却ってわからないというか…。なるべく時間の経過を気にしないようにしていたいんですよね。なので、逆に周りから見てどうなのかなっていうのが気になるところです。
ーー僕の中では、皆さんが今なお「“新体制”リリスク」という感覚があって、そんな“新しいリリスク”がもう3年も活動しているのか、という驚きがありますね。あと、minanさんに初めて取材させていただいたのが2016年の5月末。シングル「RUN and RUN」が話題になって、映画『リリカルスクール未知との遭遇』が公開された時で、映画館の控室で取材させていただいたんですが…
minan:懐かしい。meiと2人でしたよね、たしか。
ーーそうですそうです。あれからの1年でめちゃくちゃ動きがあったじゃないですか。
minan:そうか…。
キムヤスヒロ(以下:キム):その1年で活動休止までいったからね。
minan:そうか。2016年5月から17年5月ってことか…。
ーー休止どころか、僕が初めてminanさんにお会いしてから1年後には今の“新体制”が始動してるわけですから。その1年と、新体制始動からの3年。新体制が3倍もやってるんだ、って考えると不思議な感じですね。
minan:確かにそうですね。
キム:実際お客さんがtweetしてるのを見て気付いたんですが、今の体制、つまり今のこのメンバーが、リリスクの歴史の中で一番長く続いているんですよね。
minan:言ってましたね。
キム:今年の10月で結成10年になるんですが、10年間でこのメンバーでの活動が一番長いっていう感覚が僕の中にはなくて。
ーーそうですよね。わかります。こういう言い方がいいのかわからないですが、今のメンバーってまだフレッシュな感じがするんですよ。“新しいリリスク”っていう感じがします。
キム:アハハハ
risano;うれしいです。
minan:私が今の体制での活動が一番長いっていう感覚は全然ないです。前の体制でやってたときの方が倍ぐらいに感じますね。
ーーそれはきっと、現体制で毎回毎回新しいことをやり続けているからなのかもしれないですよね。停滞してる感がなくて。まぁ、今はコロナの影響でいろいろと止まっている部分もありますが、そんな中でも新しいことをやられていますし。
risano:うれしいです。
ーーそんな中、やはり話題になったのが例のREMOTE FREE LIVEです。『REMOTE FREE LIVE vol.1』を4月10日、『vol.2』を4月17日に公開されました。
キム:話題になったんですかね(笑)。お客さんには喜んでいただいたかなとは思いますが…。
ーー制作側とはまた捉え方も違ってくるとは思いますが…。それこそ「RUN and RUN」で縦型のスマホ向けMVを作られた時も話題になりましたが、今回のREMOTE FREE LIVEでもさすが映像表現がすごいなって改めて思いました。その優れたパフォーマンスといい、さらには、東京など7都府県で緊急事態宣言が出された(4月7日)直後の4月10日にああいうものを出すというタイミングといい、すごくインパクトがあったと感じたんですが、演者側としてはいかがですか?
minan:普段のライブより数倍大変でしたね。でも逆にいろいろわかったというか…。今のスタイルだったらこういうふうにリモートでやってもしっくりくるんだなとか。
ーーrisanoさんはいかがですか?
risano:私もこれまでいろんなイベントに出てきましたが……大雨のフェスとか、1年に1回のTIFとか、いっぱい頑張んなきゃいけないところがある中、自分の中で一番苦労したライブが今回のリモートライブでしたね。ほんとにライブが好きなのに、撮ってる間に何回か諦めました。「ライブやりたくない」って思ったぐらい大変でした。100回ぐらい撮り直しました(笑)。めちゃくちゃ撮りましたよ。
ーー100回も撮ったんですか???
risano:実際何回撮ったんだろう? だって「声が枯れてできません」とか言っちゃいましたから。もう逃げ出したくなったというか…。いつも何でも頑張るっていう性格なんですけど、今回はできる気がしなくて。パフォーマンスはできても、音声のトラブルのためもう1回ってなって、夜中に撮り直して、声もこんなんで、顔も眠くてみたいな…。ほんとそれぐらい大変でした。
ーーそもそもこれをやろうと思ったのはどういう経緯で?
キム:もともと緊急事態宣言が出るあたりから、イベントがどんどん中止になっていきましたが、リリスクもちょうど、4月22日発売のEP『OK!!!!!』の予約会とか、大変楽しみにしてたアーティストさんとの対バンライブとか、そういうのが目白押しの時期だったんですよね。発表されてないものも含めて。そこに向けて新曲を披露すべくメンバーと共にスタジオでかなり準備をしていて、着実にパフォーマンスの完成度を上げてる時期だったんですよ。そういった熱がどんどん上がっていく中、ライブができないはちょっともったいないな、と。このまましばらくライブができない、しかも先が見えない時期だったので、これから何にもできないのはちょっとまずいよね、っていう話が運営で出まして、そこから何かしら考えなきゃいけないな、っていうのがきっかけですかね。
ーーそれがREMOTE FREE LIVEという形になったのは、やはり「家から出られない」「県外に出られない」とか「集まって密の状態を作れない」といった制限の中でのことだと思うんですが、メンバーそれぞれの自宅で撮って、その5本の映像を合わせるっていうアイデアはすぐに出てきたんですか?
キム:そうですね。運営の定例会で「ちょっと考えますわ」って言った次の日には企画書を投げてたと思います。これ以外にもアイデアが何個かあったんですが、そっちの方はあまり現実的じゃなくて、「じゃあこれでいきますか」って。
ーーメンバーの皆さんは実際撮影するのにとても苦労されたとのことですが、それも想定されてたんですか?
キム:う~ん。
minan:想定外じゃなかったですか??? メンバーは正直想定外でした。
キム:個人差はあると思うんですが、正直どれぐらい苦労するのかっていうのはわかんなかったですね。まず、ここまで上手くいくって思ってる人と思ってない人が運営内にもいましたし、他のメンバーのラップの入っていないトラックを聴きながら自分のパートだけラップできるのかとか、どんなテンションでマイクリレーできるのかとか、単に5本の映像を合わせるだけで上手く繋がるのか、っていうところもわからなかったですし、それがどれぐらいの作業になるのか、っていうのは想定できなかったですね。ただ、メンバーは大変だろうなとは思ってました。というのは、いつものライブだと演者の役割を負うだけでいいじゃないですか。でも今回は自分自身でカメラを回すので、ある意味“監督”をするわけですよ。演出もしなきゃいけないですし、OKも自分で出さなきゃいけないので、それはいつもよりかなり難しくなるな、とは想像していました。
ーーで、実際撮ってみて想定を大きく超える大変さでしたか?
minan:そうですね。そもそも家の中で大声で歌うのがまず無理で、場所が車の中しかなくて、車の中で撮ったんです。まずカメラを置く場所も車だと限られていて、カメラと自分の距離を考えた時の場所とか、照明の当たり具合とか、車庫の暗さと外の明るさとか、いろいろ考えつつ、「これがベスト」っていうセッティングを見つけるのにまず時間を要して…。で、撮り始めてみたら、先ほどキムさんが言ったみたいに、メンバーの声がない、全くのインスト音源を聴きながらやると、結構わけわかんなくなっちゃうことが多くて。あんなに何百回もライブでやった曲なのに、急に歌詞があやふやになることもあって…。『vol.1』では1本約20分の映像を2本撮って繋げたんですが、例えば18分でミスしたら、また0分から撮り直さなきゃいけないので、だんだん精神が削られていって…。外は暗くなっていくし、充電もなくなってきて、声も枯れてきて、ゴールも見えなくて…。探り探りの状態で何とか1本目はやり終えたっていう感じですかね。2本目になったらたぶんみんな結構慣れてきて、画面で見た時に、それぞれ自分のスパイスを結構いろんな場所に入れてきてるなっていうのは感じられましたけど。
ーーでも、さすがですね。2本目でちょっと余裕が出てくるんですね。
minan:そうですね。1本目に比べれば。
ーーrisanoさんはどうですか?
risano:私はリモートライブが決まる前から、ずっとライブをやりたかったんですよ。何かできないかなっていうのはずっと思っていて、だったらインスタライブで1人で歌うのとかやろうかなと思ってたんでけど、でも私、他の人のパートを覚えていない曲がいっぱいあるので、どうしようって思ってたら、この企画をいただいて…。どんなことをするのか、どんなものになるのか想像できなかったですね。実際完成したものをみんなと一緒に見て「わあ、すごい」って感動しちゃって、「これはお客さんは絶対喜んでくれるでしょ!」って思いました。1曲ぐらいなら、まあなんとかできたと思うんですが、20分×2本を撮るのはほんと辛かったです(笑)。何回も撮り直したんですけど、おかげで怖いものなしになりました。
ーーじゃあ『vol.3』があったら喜んでやれますか?
risano:喜んでやれます! お客さんはすごい喜んでくださるし…。まぁ、もちろん一番は早く生のライブをやることですけどね。
ーーminanさんはいかがですか? 『vol.3』は。
minan:全然喜んでできないです(笑)。これ結構いろんなところで言ってるので書いてもらって大丈夫ですが(笑)。最初に『vol.1』を公開した時も、まさかこんなにお客さんの反応がいいとは思ってなくて、そこにまず驚いて。ただ、こんなに喜んでくださるんだったら、あれだけ大変でも頑張れるなとは思います。なので、『vol.2』も全然頑張れましたし、「喜んでできないです」とか言ってますが、『vol.3』があったとしても、みんなが楽しんでくれるなら、という気持ちでできますね。
ちょっとでも動くとカメラが揺れちゃって、何回もスタンドが倒れちゃって撮り直しっていうこともあって…(minan)
ーーそんな『REMOTE FREE LIVE』ですが、自粛期間に入り、緊急事態宣言も出された直後の、すごい閉塞感というか抑圧感を感じていた時期に、あのライブを拝見してめちゃくちゃ引き込まれました。それぞれが離れたところで撮っていて、しかも「せーの」で合わせたわけではないのに、やはり何度も撮り直してテイクを重ねたからなのでしょうか、縦のリズムがばっちり合っていて、そんじょそこらの配信ライブとはモノが違うなと思いました。
risano:うれしいですね。
minan:ありがとうございます。それはテイクを重ねたというより、たぶん今までやってきたライブの本数かなと思いますね。
risano:3年目だからこそできたものだなって思います。
ーーなるほど。他の人のパートは完成して初めて観たんですか?
minan:そうです。公開するちょっと前ぐらいだったかな、で完成形を見たんですが、びっくりしましたね。こんな完成度の高いものができるとは正直思ってなかったので、たぶんお客さんと同じくらいの驚きだったと思います。まず私が『vol.1』を見た時に驚いたのは、曲間に入れるちょっとした煽りとか、MCのタイミングとかが誰も被ってないな、っていうことで。何となく「ここはこの子が言うかな」みたいなのがメンバーそれぞれの頭の中にあって、「ここは自分かな」っていうのもそれぞれあって、そこを埋めていくみたいな感じになっていたんですよ。そうした感覚が今までやってきたライブで自然に身に付いて、それがリモートライブの撮影で出せたと思うんですが、そういう部分がほんとにいくつもあって…。MCにしろ、曲中の微々たる部分ですけど「Yeah」っていう一言とか、一緒に撮ったわけじゃないのにまるで隣で一緒に撮影してるみたいな感じが出せたのは、自分で言うのも変ですけど「すごいじゃん!」「みんなすごいじゃん!」って思いましたね。
ーーマイクリレーの部分もそうですし、合いの手しかり、MCしかり。イントロなんかでrisanoさんが煽りとかよくやられてましたけど、あの辺なんかほんとに「もしかしてここで生ライブやってる?」ぐらいの感覚を抱きました。。
minan:全く打ち合わせもせず、それぞれが個々に撮ってる状態でしたね。
risano:リリスクの自由なスタイル、ステージ上で何も決めずやってる感が今めちゃくちゃいいものになっていると感じてたんですが、それがここにも出てますね。通常は私がここでいってるけど、ちょっとやめておこうと思ったところとかも、なんでかわかんないんですけど、たまたま違う子が喋ってたりとか、ここいってみようっていうところで他の子のガヤが被ってきて、それが上手く合わさっていたりとか。それにすごい感動して…。普通被ったら、何言ってるかわからないみたいな状態になりますけど、被ってもめちゃくちゃ合ってるんですよ。
ーーぶつかってるわけじゃなくて、調和してる感じになった、と。
risano:そうですね。タイミングもほんとばっちりで。himeが言って、私が聞こえないぐらいのことを英語で後ろで言ってる、みたいな感じのところもあるんですが、そのタイミングとか特に毎回決まってないのに、すごいタイミングでhimeが言って私が言う、みたいな。これ、打ち合わせでもやったっけ?ぐらいのミラクルでしたね。
ーーほんとにそんな風に見えましたよ。ばっちり呼吸が合っていました。まるで、トラックに入っていない他のメンバーの声がどこかで聴こえていたかのような。そうしたものが感覚的に染み込んでいたんでしょうか。
minan:それこそさっきも言いましたが、ほんとにライブを重ねてきたことの成果、場数の成果かなと思いますね。体に染み込んでるんでしょうね。
risano:lyrical schoolって、ステージ上で5人が繋がってるというか、以心伝心というか、ステージでそれが生まれるのをすごく感じることがあって。まさかリモートライブでもそうなるんだなって驚きました。
キム:やはりインストアとか尋常じゃない数をやってるので。例えばもしかしたらアーティストさんがスタジオで練習する数よりもライブをやってると思うんですよね。だから、minanが言うように、risanoが「以心伝心」ってちょっとオカルトめいた感じで言ったのもそうですけど、メンバーにはそれだけ染み付いてるものがあるんでしょうね。”背骨”で覚えてるというか、そういう感覚が。何より今回のリモートライブは、映像的な面白さは際立って評価されるようなものではなくて、そういうメンバーが培ってきた武器みたいなものがきちんと表現できているからこれだけ評価していただいているんだと僕は思っていますし、それを望んで作った部分もありますね。
ーーさらに言えば、縦のリズムがピタッと合って、お互いのパフォーマンスを上手く繋ぐ“技”を見せることができたいう部分ももちろんですが、5人並んだ映像がある意味バラバラじゃないですか。いる場所もそうですし、座って歌ってる人もいれば、フレームアウトを繰り返す人もいれば、動き回る人もいれば、っていう感じで。ある意味、それぞれが“セルフプロデュース”をして個々に映像に収めているわけですよ。特定の“監督”のような存在が一人いて、何かのコンセプトのもとに撮影をして、それらを素材として集めた、というのではなく。なので、個々人が物理的に繋がれない中でも、以心伝心というかそういったもので繋がることができる、ということを可視化した映像のような気がして、それがすごかったなって思いました。
risano:うれしい。
ーーそういうものは他の配信では見られなかったように思います。
risano:バラバラという意味では、私自身も映像を観て、いろんな子に目が行くというか、1回の再生だけじゃ足りないっていうか。私がこれこれこういうことをしていた時、他のメンバーは何してたのかなっていう風に観ると面白かったですね。それこそhimeが頭を打ちつけちゃったりとか、他のメンバーが真剣に歌ってるのにTシャツを自慢してるとか。
ーー鼻かんでたりとかしてましたよね。
risano:そう、鼻かんでたりとか。yuuもフレームアウトしたり、何か手に持ってたりとか。面白かったですね、いろいろ個性が出ていて。
ーーそんな中で、minanさんは車の中だったじゃないですか。あれがすごく良かったんですよ。車内なので動けなかったからだと思うんですが、そこにむしろ貫禄が感じられて。
minan:そういうのは全然出したくなかったんですが…(笑)。そんな感じに見えちゃってましたか。車の中という限られたスペースだったので、しょうがなかったんですよ。ちょっとでも動くとカメラが揺れちゃって、何回もスタンドが倒れちゃって撮り直しっていうこともあって…。ちょっと動くと座席っていうか、車体が結構揺れるので、その振動でカメラも揺れちゃうし、下手したら倒れちゃうし、みたいな感じの状態だったので、動けませんでした。
ーーそれがプラスに作用していたと思います。
minan:ならば良かったです。
ーー例えばMCの時の喋り方も、声が張れない分なんというか妖艶さが漂っていて、良かったです。
minan:ありがとうございます。たしかにライブハウスでは自然と声を張っちゃいますし、あれは状況が生んだものっていう感じではありましたね。あのリモートライブでしかなし得ないっていうか、観れないみたいな。
ーー少し確認させていただきたいんですが、これはそれぞれのスマホで撮られたわけですよね? 音声と映像を一緒に撮ってるっていうことですよね?
キム:はい。
ーーそれをミックスする際に、音量の調節とか、そういう部分での苦労はありましたか?
キム:どうですかね。歌ってるときは絶対にバストショットっていうルールは決めてたんですよ。単純にマイクと口との距離の話で、別に座ってでも立ってでも寝転がっていてもいいから、自分の歌ってる時だけはバストショットにしてくれっていう縛りを作ったんですよね。メンバーもわからないことが多々ある中、どうやってそれを少ないシンプルなルールの中でディレクションするか、といった工夫はしていたので、ミックスのタイミングではそれほど苦労しなかったですかね。
ーー自分の声が入るパートではバストショットっていう距離感で音量を固定してもらう、と。
キム:そうですね。あと、それぞれのロケーションがバラバラじゃないですか。部屋とかも。その部屋のリバーブみたいなのは敢えて残したいなと思ったんですよね。それはどちらかというとドラマとか映画での音響の考え方みたいな。“その空間”で鳴ってる音を大事にするというか。なので、そのまま音を使うのがいいかなって。もちろんスピード感重視でそうしたっていう部分もありましたけど。
ーーなるほど。アンビエンスっていう点でもそれぞれ違ったわけですね。
キム:そうですね。そういう意味では、例えばminanからは「車の中で撮ります」と事前に相談を受けてたりとか、部屋の中で撮る子もいれば、実家にいたりとか、1人暮らしの家だったりとか、響き方がそれぞれ変わるだろうなっていうのはイメージしてたんですが、そこはある程度曲と混ぜた時に成立するだろうと思って、やってみたら上手くハマりました。一度リバーブとかノイズとかも全部消してく方向でミックスしてみたんですが、やはり画と合わない感じがしてすぐやめました。
ーーじゃあ、より一層それぞれの部屋からのプライベート感が出ていたわけですね。絵面やアンビエンスには多様性がありながら、パフォーマンスという点では見事に調和する、と。その落差のようなものを強調する工夫がされていたわけですね。
キム:そうですね。そんな感じですね。
lyrical school 商品情報
『OK!!!!!』
〈収録曲〉
1. OK! 作詞:ALI-KICK・大久保潤也(アナ) 作曲:上田修平・大久保潤也(アナ)編曲:上田修平
2. HOMETENOBIRU 作詞:Valknee、作曲/編曲:ANTIC
3.Last Summer 作詞:木村好郎(Byebee) 作編曲:高橋コースケ
4.Dance The Night Away feat. Kick a Show 作詞:Kick a Show 作曲/編曲:Sam is Ohm
5.Bring the noise 作詞:MC モニカ(Byebee)・泉水マサチェリー(Byebee) 作曲/編曲:泉水マサチェリー(Byebee)
品番:VICL-65367
発売日:2020年4月22日(水)
価格:2,000円(税込)