FEATURE
つむぎしゃち(ボーカル)、舞氏(バイオリン)、久下真音(サウンドクリエイター)の 3名からなる音楽ユニット・キミのね。1stワンマンのライブレポートが到着!

音楽ユニット・キミのね、待望の 1st ワンマンをレポート。
「みんなと一緒に“根っこ”を強く育てていきたい」
秋の気配を感じさせない、気温 30°Cに迫る好天の土曜日。東京・南青山のライブハウス「月見ル君想フ」の前には、開場を待つ人たちの長い行列ができていた。
その日、9 月 27 日は、『キミのね 1st One man live 〜キミとね。〜』の開催日。2023 年から活動する音楽ユニット・キミのねが満を持して開催した、記念すべき初ワンマンライブである。
キミのね Official X では、開催 10 日前から毎日カウントダウン投稿がポストされ、3 日前にはチケット完売の報告も。開催を待ちわびるファンとともに期待感を最高潮まで高め、天気をも味方につけて遂に迎えた当日のステージをレポートする。
何もかも初めてのワンマンライブ。「この景色、忘れたくない」
「みなさん、楽しみに待ってくれていましたか!」
キミのねのサウンドプロデュースを担う久下真音(くした・まいん)の声がフロアに響き、大きな拍手が沸き起こる。まずはサポートギター&ピアノのぜっきーがステージに現れ、姿を見せる代わりにイラストとなった久下のパネルがステージ後方のイーゼルに置かれる。久下の「全力で楽しむ準備できてますか!」という影アナに割れんばかりの歓声が上がり、SE とともに浮かび上がってきたのは「月見ル君想フ」のシンボルである満月スクリーン。
いよいよ、特別なステージの幕開けだ。
つむぎしゃち(ボーカル/ストーリーテラー)と舞氏(バイオリン)が袖から登場し、フロアの拍手が息の合ったクラップに変わると、つむぎが〈とまれとまれ指とまれ〉と歌い出す。初ワンマンの 1 曲目にこの上なくふさわしい、キミのねデビュー曲「あいまいハロー」だ。青の衣装で指を高く掲げるつむぎと、赤の衣装で踊るようにバイオリンを奏でる舞氏に、熱を帯びた掛け声が飛ぶ。続いて照明が赤に変わり、シームレスに始まったのは「ハルカナアルカナ」。間奏では舞氏が華麗なソロを披露し、フロアからは高揚感たっぷりの歓声が沸いた。

「みなさん、こんにちは! 私たちがキミのねです!」と、つむぎの第一声が響き渡る。続いて「ボーカルのキミのね、つむぎしゃちです!」と告げるつむぎに、舞氏がすかさず「ボーカルのキミのね?」とツッコミ。フロアからは笑いが起こり、先ほどまでの緊迫感すら孕んだエネルギッシュな空気が一瞬で和らいだ。
この日、オーディエンスの多くは、舞氏がデザイン原案を担当した新グッズ『キミのね〜〜〜〜ロングタオル』を首もとに巻いて参戦。それを見た舞氏は「長い根っこをみなさんの手の中に収めていただいていることが本当に嬉しいです」と喜びを露わに。つむぎはソールドアウトへの感謝を口にし、「待ちに待ったファーストライブ、楽しんでいく準備 OK ですか」とヘッドドレスの下から笑顔を覗かせた。
3 曲目は、ちょっぴり重めの愛を歌ったクセになる楽曲「恋愛パクチー」。緑の照明がフロアを包み込み、パクチーの海に溺れながらもみんな幸せそうだ。次の「カンフーハロウィン」では、サビの〈Kung-fu!〉〈1234(イー・アル・サン・スー!)〉の掛け声が息ぴったり。壁際でライブを観ていた子どもたちも元気よく叫び、会場全体がひとつになっていた。
「自分たちだけのステージでやるのが本当に初めてで、お客さんもどういう感じで来てくれるんだろうとか、すべてが“初めて味わうこと”。この景色、忘れたくないね」と感慨深い様子で語る舞氏。「“我こそは今日いちばん遠いところから来ている”と思う方!」とつむぎが問いかけると、「秋田」「青森」「品川」などと地名が飛び交うシーンも。キミのねのライブを初めて観たという人も半数ほどを占めており、ここにいる全員がそれぞれの想いを胸に抱きながら今日を待ち望んでいたと思うと、胸が熱くなった。
「3 人でしかできない特別なことを用意しました」。つむぎのその言葉から始まったのは、アコースティックバージョン初披露となる「あいくらふと」。TV アニメ『アラフォー男の異世界通販』エンディングテーマであり、海外リスナーからの反響も大きかった曲だ。3 人の音だけで紡がれる愛の歌に、控えめなステージライトがそっと寄り添う。つむぎのヘッドドレスが光を受けてキラキラと輝く様は、この温かいラブソングをさらに純度高く美しいものにしていた。
アコースティック 2 曲目「アソベンチャー」では、「みんなの“手の打楽器”で一緒につくっていく曲です」とクラップをリクエスト。ゲーム『魔導物語 フィアと不思議な学校』のオープニングテーマとして生まれた心弾む楽曲で、3 人は笑顔で目配せしながら〈魔法みたいな旅〉を盛り上げていく。最後はつむぎの「センキュー!」とピースサインでキュートに締めくくられた。
前編ラストはそのムードから一転。舞氏のどこか不穏なバイオリンの音色に、つむぎがポエトリーリーディングを重ねる。バイオリンは詩が進むにつれて切迫感を増していき、途中、不意にぜっきーがギターの弦を 1 音ずつ弾く場面では、張り詰めた空気が鋭く切り裂かれて畏怖すら感じた。あと 1 時間もしないうちに私たちはこの詩の意味を知ることになるのだが、詩が終わりメンバーが捌けたあとの会場は呆然としたように静まり返っていた。

「みんなが毎日絶やさず水をあげてくれて、今回ソールドできた」
幕間では、キミのねの 3 人と焚き火のイラストが満月スクリーンに映し出され、“異世界”にいる設定の 3 人が別録り音声でトークを繰り広げた。「まさか、つむしゃがオープニングで客席にダイブするとは」(久下)、「『恋愛パクチー』で舞氏がパクチーをみんなに配ったのはビックリ」(つむぎ)などとジョークを飛ばしまくり、シリアスな余韻の残っていたフロアは一瞬で笑いに包まれた。
“異世界”にいる 3 人とオーディエンスのカウントダウンで再登場したつむぎと舞氏。先ほどの衣装におそろいのジレを重ねたアップデートスタイルでまず披露したのは、TV アニメ『ゆるキャン△ SEASON3』のオープニングテーマ「レイドバックジャーニー」。主人公のひとり・志摩リンが SEASON2 で訪れた浜名湖弁天島近辺を舞台に、アイドルグループの CANDY TUNE が出演した MV も話題となった楽曲だ。この日、山梨では志摩リンの誕生日会キャンプが催されており、キミのね初ワンマンと同じ日であることに沸いた『ゆるキャン△』ファンも多いだろう。
サビでは、MV で CANDY TUNE が踊るダンスをフロア中が再現。なかでも完璧に踊っていたのは子どもたちだ。
つむぎはもちろん、舞氏もバイオリンを弾きながらステップを踏み、この場にいる全員が年齢も性別もバックボーンも関係なく笑顔でつながっている――そう思わせてくれたひとときだった。
ここからは怒涛のアッパーソング。「怪盗ダンサー」では、つむぎが生み出す架空の物語『怪盗-アイ-』の主人公・アイが三日月に座るシルエットをバックに、ダーク&キュートな世界観でフロアを魅了する。続く「ウォン・テッド」も『怪盗-アイ-』の架空タイアップ曲。オーディエンスはタオルを勢いよく振りまわし、サビ前の〈それなーんだ!〉のコールも今日イチの声量。その熱量に呼応するように、舞氏も弓をブンブンと振りまわす。
本編最後の MC では、舞氏が感動的な話をするかと思いきや、ゴミ捨て場で“G”が腕に飛び乗ってきたという“人生初”エピソードを披露。すかさずぜっきーがピアノで G の音を弾くというアドリブも飛び出し、フロアはまたまた笑いの渦に。つむぎは「キミと一緒に音の根っこを育てていきたい」というユニット名の由来に触れ、「最初は小さい芽を 3 人で眺めているだけだったけど、みんなが毎日絶やさず水をあげて、日光に当てて、雨が降ったらお部屋にしまって...ということをやってくれて、今回ソールドができたと思っています。花をポンと咲かせることよりも、根っこを強くつくることがすごく大変だと思いますが、みんなとメンバーとスタッフと一緒にもっといい音楽をつくっていけるようにがんばるので、これからのキミのねを応援してください!」と力強く告げた。
「ライブで絶対最後にやりたいねと言っていた曲」と前置きし、ラストは『魔導物語 フィアと不思議な学校』エンディングテーマの「纏うものがたり」。ピアノとバイオリンから始まり、途中でフロアのクラップも混じり合いながら壮大に展開していく。ラスサビではつむぎが歌いながら固く拳を握り、この先もキミのねの未来を切り開いていくという強い意志を表明して本編は終了した。

アッパーな新曲「Wanderlust」を初披露
止まないアンコールのなか、再びステージに登場した 3 人は、ミディアムバラード「フユノハナビ。」を披露。3人の織りなすハーモニーに静かに聴き入るオーディエンス。つむぎは〈キミのね〉の一節をより愛おしそうに歌い、最後に舞氏が弓を高く掲げた際のシルエットはあまりにも美しく凛としていた。
グッズ紹介を挟み、「お月さまにご注目ください!」という舞氏の合図で満月スクリーンに映し出されたのは、新曲「Wanderlust」がライブ後の 9 月 28 日(日) 0 時にリリースされるというニュース。この曲を今日の締めくくりにいち早く披露すると告げられ、大きな歓声と拍手が沸き起こった。
「実はみなさん、この曲の 8 割はもう知ってるんですよ」との意味深な一言から、タオルをまわす練習を経て、初披露の「Wanderlust」へ。そう、先ほど本編ラストでフロア中を惹きつけたポエトリーリーディングの詩は、この曲の歌詞をアレンジしたものだったのだ。先ほどとは打って変わって、タオルまわしあり掛け声ありの会場参加型アッパーチューン。ジャケットのアートワークにもなっている、飛行機の軌道が地球を描いていくアニメーションを背景に、会場全員がひとつとなって最高のグルーヴを生んだ。
「今日は本当にありがとうございました! まだまだがんばっていくので、応援よろしくお願いします!」。ステージ上手から下手へと順にお辞儀をしていく 2 人の顔は実に晴れやかで、それを破顔しながら見守るファンたちもまた、「一緒に初ワンマンをやり遂げた」という清々しさに満ちていた。終演後にはグッズ購入特典のハイタッチ会が実施され、互いに交流を楽しむ様子も。活動 3 年目にして待望の開催となった今回のワンマンは、キミのねとファンの絆をよりいっそう強固なものにしたに違いない。伸び始めた“音の根っこ”の存在をともに確かめ、さらに強く育てていくとともに誓った特別な日として、キミのねの歴史に刻まれることになるだろう。
(取材・文 三橋温子)
<セットリスト>
- M1_あいまいハロー
- M2_ハルカナアルカナ
- M3_恋愛パクチー
- M4_カンフーハロウィン
- M5_あいくらふと
- M6_アソベンチャー
- M7_レイドバックジャーニー
- M8_怪盗ダンサー
- M9_ウォン・テッド
- M10_纏うものがたり
- M11_フユノハナビ。
- M12_Wanderlust
《プレイリスト》
Apple Music
∟https://music.apple.com/jp/playlist/キミのね-1st-one-man-live-キミとね/pl.u-11zBv1yIN345Y1E
<キミのね - プロフィール>
物語を紡ぎ出していたつむぎしゃちがサウンドクリエイターの久下真音と出会った事から活動開始した音楽ユニット。キミのね”というユニット名には「キミと一緒に音の根っこを育てていきたい」という意味が込めらている。2023 年春「あいまいハロー」でデビュー。
YouTube:https://www.youtube.com/@kiminone
X(旧Twitter):https://x.com/_kiminone
